スポーツ科学 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本

スポーツ科学

どんな学問?

「スポーツ」を軸に幅広いテーマを探る

スポーツ科学のイメージ画像!「スポーツ」は「する」だけでなく、「観る」「教える」「学ぶ」「運営する」など様々な面があります。そのため、「スポーツ」を科学的に研究する「スポーツ科学」も様々な学問要素から構成されます。例えば、「スポーツの政治的・経済的効果」というテーマは「政治学」や「経済学」の要素を、イメージトレーニングなど「競技成績と心理状態の関係性」であれば「心理学」の要素を、「スポーツとメディアの相互作用」であれば「社会学」の要素を含みます。これらは文系要素の強い分野と言えます。一方、「トレーニングの原理」というテーマは「医学」や「生理学」の要素を、「スポーツ選手の栄養管理」であれば「栄養学」の要素を含んでいます。これらは理系要素の強い分野ということです。
つまり、「スポーツ」を軸に幅広いテーマについて研究する。それがスポーツ科学なのです。ここでは主要分野について、それぞれの特徴を見ていきましょう。

1.生涯スポーツ学・健康福祉学

人間の健康維持をテーマに研究を行います。子ども・高齢者・障害者の健康維持や体力の向上、一人ひとりのライフステージに合った活動の提案、地域社会とスポーツとの関わりなども考えていきます。必要単位を修得することで、社会福祉士(資格一覧参照)の受験資格を得られる大学もあります。

2.体育学・スポーツトレーナー学

自分自身が競技選手として活動していきたい人、保健体育教師やトレーナーを目指す人のための学問です。後者の場合は、教育学の要素も含みます。スポーツの理論と競技の両方を重視します。

3.スポーツ経営学

スポーツ団体やスポーツ関連企業の運営・経営方法、余暇をよりよく過ごし健康を維持するためにスポーツを役立たせる方法を学びます。スポーツ産業の収益だけでなく、人とスポーツとのよりよい関係について考えていきます。

4.スポーツ心理学

競技選手がよりよい成績を出すための心理状態、スポーツを趣味として行うときや観戦するときの心理効果などを研究する学問です。さらに、そういったメンタル面を強化する方法も科学的に学びます。

5.スポーツ医科学

「医学」だけではなく、「栄養学」や「生理学」などスポーツと関係があるすべての学問を活用しながら研究していきます。また、急な怪我や病気にも対応できるように救急処置や救急医療についても学ぶため、救急救命士の国家試験受験資格を取得できる大学もあります。

6.スポーツ栄養学

スポーツに適した身体を維持するために必要な栄養、効率のよい摂取方法、栄養指導の方法を学びます。対象はスポーツ選手だけに限らず、一般の人々の栄養指導も行います。

Q&Aこんな疑問に答えます

Q.

どのような人がスポーツ科学に向いていますか?

A.

スポーツが好きであることが第一ですが、すべての学科で競技者レベルの人材が求められるわけではありません。スポーツに関わるイベントを企画したい人やスポーツを教えることが好きな人、自分の健康維持に興味がある人、スポーツ産業に興味がある人など、スポーツと関わりたい人なら誰でも、自分に合った分野を見つけることができるでしょう。

Q.

プロのスポーツ選手を目指す人は、大学へは行かないのですか?

A.

そんなことはありません。大学を卒業してからプロのスポーツ選手として活躍している人もたくさんいます。高校卒業後すぐにプロ選手となることで、より早く経験を積める、実力の高い選手の中で成長できるなどのメリットはありますが、大学に進学するメリットもたくさんあります。例えば、試合に出られる機会が多い、大学で実績を残すことでプロデビューへのチャンスになるなど。また、プロ選手と違う道に進むことになったとしても、進路の選択肢が広がります。大学でスポーツトレーナーの勉強をする、または教員免許を取得することで、引退してからコーチや体育教師として活躍することもできます。大学に進学することでそのスポーツ以外のことも学べ、視野を広げられるという見方もあるでしょう。プロ選手を目指すことは価値のある素晴らしいことです。しかし、よい結果が残せないことや怪我をしてしまうこともあります。そういったときのことも考えて、周りの人のアドバイスも聞きながら、広い視野で進路を考えてみてください。

こんな研究もあるよ

生活習慣病を食い止めろ!

近年、生活習慣病が社会問題になっています。この生活習慣病とは、不健康な生活習慣が主な原因となり発症する心筋梗塞・脳卒中・糖尿病などの病気のことです。それらを予防・改善する方法の1つが「運動」。そのためスポーツ科学では、体力測定方法の開発、各運動が生活習慣病防止に及ぼす効果の測定、適度な運動量の定義など、人々を生活習慣病から救うための研究に力が注がれるようになりました。
現代社会に生きる人々にとって、ひいては急激な高齢化を迎えている日本人にとって、今後も必要とされる研究分野の1つです。

卒業後の主な進路

選手・指導者・スポーツ施設の運営の他、幅広い進路

プロのスポーツ選手を目指す人は、各協会・チームのプロテストに挑戦します。プロ選手になる人は一握りですが、それ以外にもスポーツに関わる仕事で活躍する人はたくさんいます。具体的には、スポーツ施設を運営する企業、スポーツ用品メーカー、保健体育の教員など。スポーツを指導するためのトレーニング指導士という資格もあります。医療・福祉や消防・警察、警備保障会社なども大学で学んだことを活かせる分野でしょう。一方で、スポーツとは関係ない業界へ就職する人も多くいます。例えば、建設業や運輸業、製造業など。また、少数ではありますが、大学院に進学してより専門的な研究を行う人もいます。

専門用語を知ってるかな?

コーチング

相手の目的が達成できるように、相手のもっている能力を引き出していくこと。指導者が一方的に教えてそれを実行させるのではなく、相手の自発的な活動を促す指導方法です。「人を育てる方法」として、スポーツ分野だけでなく、ビジネスや教育の場にも取り入れられています。

ストレングス&コンディショニング

ストレングスは筋力をつけることです。しかしそれだけではなく、筋力を使うための神経を発達させ、筋力を使うべきときに脳からの命令をスムーズに伝達させるためのトレーニングも含まれます。コンディショニングは筋力・瞬発力・持久力といった様々な体力要素を目標の日程に最適の状態へともっていくことです。

ニュースポーツ

老若男女を問わず、幅広い年齢層の人が手軽に楽しめるスポーツのこと。勝敗よりも楽しむことに重点が置かれているため、競技スポーツよりも運動量が少なめで、ルールがわかりやすいというのが特徴です。「スポーツチャンバラ」や「トランポビクス」といったものがあります。

ヘルスプロモーション

自分の健康を自分でコントロールし、改善できるようにする過程のことです。健康は生きるうえでの目的ではなく、よりよい生活を送るための条件・手段であると考えられています。公共政策、健康を育むような環境づくり、地域活動など、健康をテーマとした社会的な動きもヘルスプロモーションの一環です。

Interview

子どもの身体を通して人生の健康を考える

早稲田大学 スポーツ科学部 スポーツ医科学科 鳥居 俊 先生

早稲田大学
スポーツ科学学術院 スポーツ科学部
鳥居 俊先生

子どもの身体から見えてくること

最近は、発育途上にある子どもの身体の変化について研究しています。子どもの体力低下、子どもの怪我(けが)の発生率の上昇が目立っている状況を受けて、子どもの身体の状態、特に成長途中での身体の変化を調べる必要が出てきました。具体的には骨や筋肉や脂肪の量を調べ、身体の組成が成長と共にどのように変わっていくのか、さらにそこに運動が加わったときにどのような効果が出てくるのかということを定期的に調査しています。こうした調査から得られたデータは一時的なものでなく、長い目で見て人の健康維持に役立てることができます。
「メタボ」という言葉が有名になりましたね。その予防策があちこちで話題になりましたが、成人の肥満に子どもの頃の肥満が関わっているという考えは昔からあります。同じように年をとってから現れる、歩けなくなる、転びやすくなるといった症状にも子どもの頃の身体の状態が関係している可能性があります。そのため、子どもの身体と大人の身体が具体的にどのようにつながってくるかがわかれば効果的な予防策を立てられます。しかし、子どもの頃の予防策がどの程度効果があるのかを証明するには、今調査をしている子どもたちが高齢になるまで追わなければなりません。この研究を始めてもうすぐ10年になりますが、私の世代だけではなく、次の世代に引き継いでいかなくてはならない研究でもあるのです。

研究の成果をスポーツの現場に活かす

大学に来る前に、医師の立場として、スポーツのしすぎで自分のしたいスポーツができなくなってしまった選手をたくさん診てきました。それをなんとかして防止してあげないと、選手がかわいそうです。過剰な運動による弊害をなくすためには、スポーツ医学の立場で解明していくとともに、現場に伝えるということが必要です。研究者が1人で研究して喜んでいてもしかたがありません。
この学部では、卒業生で指導者や教員になる人がいるので、研究した成果がすぐに現場に活きてくるルートが太いと思います。だから、ここで私が教えることはとても有意義だと思っています。医学部のなかではこんなにスポーツに偏って研究することは難しいですね。整形外科研究のなかの1つがスポーツに関することですが、医学部としてのスポーツ整形外科を指導・研究するのに精一杯で、これからスポーツの指導者になっていこうとする人たちを教育するということは難しいですね。スポーツの指導を受ける子どもたちがスポーツの悪い面を被ることなく続けていければ、こんなよいことはないと思いますね。

鳥居先生からのメッセージ

スポーツ科学はスポーツ選手のためだけの学問や研究ではありません。多くの人がスポーツを通してどのくらい健康になれるかということを研究し、実践させていくための学問です。自分自身の身体を一生、健康な状態に保つためにも、親になって子どもを育てるときにも役立つ知識を得ることができるのです。スポーツ指導者を目指す人だけでなく、多くの人に興味をもってもらいたいですね。

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