
2025年10月13日、ノーベル経済学賞の受賞者が発表されました。
これで「物理学」「化学」「生理学・医学」「文学」「平和」「経済学」の6分野すべての発表が終わり、
今年は化学賞と生理学・医学賞の2分野で、日本人の研究者がノーベル賞を受賞しています。
大学入試の面接において、ノーベル賞について質問されることがあるのを知っていますか?
何事も準備が肝心。予想外の質問をされて焦ってしまうことがないよう、自分の進む分野に関係ある賞については、一通り頭に入れておくと安心です。
今回は、各分野の2025年受賞者と、直近の日本人受賞者についてまとめていきます。
2024年の受賞者についてはこちらの記事で確認できます!

目次
そもそもノーベル賞とは?
ダイナマイトの発明で知られる、スウェーデンの化学者アルフレッド・ノーベルの遺言から始まった、100年以上の歴史を持つ栄誉ある賞です。
受賞者にはメダルと1億円ほどの賞金が贈られ、かつては故人も表彰の対象でしたが、1974年以降は存命の人間のみとなっています。
ノーベルは破壊力のあるダイナマイトが戦争の抑止力になると考えていましたが、結果的には戦争の激化を加速させてしまい、「死の商人」と呼ばれることもありました。
意図せぬ形で評価を下げてしまったために死後の評価が気にかかってしまい、遺言という形で未来の発明家や研究者たちのためにノーベル賞を設立した、というわけです。
元々遺言にあるのは「物理学」「化学」「生理学・医学」「文学」「平和」の5分野でしたが、1968年に「経済学」賞が設立されました。
後発の「経済学」については、正式にはノーベル賞としては認められておらず、「アルフレッド・ノーベル記念 スウェーデン国立銀行賞」と称されています。
面接によく出てくる話題は?
日本人が受賞した年は、特によく質問されます。
『○○さんがノーベル賞を受賞しましたが、知っていますか?』という形式が多いでしょう。
ただし、「知っています」という確認や、「すごいと思います」という単純な感想を求められているのではありません。
聞かれることの多い『最近気になったニュースはありますか?』という質問と同様、その事例を知って、「自分の考え方がどう変わったか」「何を初めて認識することができたのか」ということを聞きたいのです。
焦らずに返答するためには、事前に準備して内容を把握しておく必要があります。
日本人の受賞者や、自分が進学する分野に関連する内容については、必ず確認しておきましょう。
ノーベル物理学賞

物理学賞は、「天文学(宇宙)」「原子物理学」「素粒子物理学」などの研究から選ばれ、日本人の受賞者が一番多い分野です。
近年は「気象学」や「地球科学」といった領域からも選出されており、改めて物理学というのは、身の回りのあらゆるものや現象に関連する学問だということがわかります。
今年の受賞者
2025年 ジョン・クラーク(イギリス) & ミシェル・デヴォレ(フランス) & ジョン・M・マーティニス(アメリカ)
3人は、「電気回路における巨視的な量子トンネル効果とエネルギー量子化の発見」という功績が評価され、ノーベル物理学賞を受賞しました。
トンネル効果とは、古典物理学では越えられないエネルギー障壁を、量子力学的には粒子が「一定の確率で通り抜ける」現象のことです。
この現象は、量子力学の理論として古くから予言されてきましたが、1973年のノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈さんは、半導体中でのトンネル電流を実験的に確認する成果を挙げています。
これまで量子力学的効果は主に原子・分子・電子などの非常にミクロなスケールで議論されてきましたが、今回の受賞対象の研究では、手のひらサイズ程度の超伝導回路を用いて、それらの効果を巨視的に実証することに成功したのです。
この発見は、量子コンピュータ、量子暗号、量子センサーなど次世代の量子技術の基盤を築いたと高く評価されています。
1980年代半ばの初期実験を起点に、量子物理学を実用技術へと発展させる道を切り拓きました。
直近の日本人受賞者
2021年 真鍋 淑郎(アメリカ/日本) & クラウス・ハッセルマン(ドイツ) & ジョルジョ・パリージ(イタリア)
日本出身の真鍋 淑郎(まなべ しゅくろう)さんは、1975年にアメリカ国籍を取得し、プリンストン大学で気象学を長年研究してきました。
現在では広く知られている「二酸化炭素と地球温暖化の関連性」ですが、真鍋さんは50年以上も前から研究を始めていました。コンピューターを使ったシミュレーションにより、地球温暖化や気候の変化を予測するための先駆者となったことが評価され、受賞に至ったということです。
気象や気候の研究分野がノーベル物理学賞の対象となったのは、今回が初めてだったこともあり、話題となりました。
また、受賞インタビューにおいて、日本を離れアメリカ国籍を取得して研究を続けていることについて聞かれ、「日本では周りとの調和が求められ、好きな研究ができないこと」「研究に使える予算が少ないこと」を挙げていたのも、日本国内の研究者育成において考えさせられる印象的なシーンでした。
豆知識
物理学賞は、2015年に「ニュートリノ」の研究で受賞した梶田 隆章(かじた たかあき)さんや、2014年に青色発光ダイオードの発明が評価された、赤﨑 勇(あかさき いさむ)さん・天野 浩(あまの ひろし)さん・中村 修二(なかむら しゅうじ)さんなど、12人※の日本人が受賞しています。
日本人のノーベル賞受賞者は全分野合計でも29人※と欧米諸国に含まれない地域では最多であり、その半数ほどが物理学というのを考えると、偉大な物理学者を多数輩出している国と考えられるかもしれません。
※日本出身で外国籍取得者を含む
ただし、真鍋さんのように渡米し、日本ではなくアメリカに活躍の場を移す研究者も少なくありません。
2014年の中村さんや、2008年に「自発的対称性の破れ」で受賞した南部 陽一郎(なんぶ よういちろう)さんは、研究の拠点とするアメリカの国籍を取得し帰化しています。
自分が関心を寄せるものについてとことん追求したい場合は、海外にも目を向ける必要があるのかもしれませんね。
ノーベル化学賞

化学賞は、「有機化学」や「無機化学」をはじめ、非常に幅広い分野から受賞者が選ばれます。
元々化学者であるノーベルが、遺言の中で物理学に続く2番目に挙げている分野であり、化学者にとって非常に栄誉ある賞と言えるでしょう。
「キュリー夫人」として伝記でもよく知られるマリ・キュリーが、1911年ラジウムの発見により受賞した賞でもあります。(1903年には、放射能の研究により物理学賞も受賞しています)
2025年は京都大学・特別教授の北川進さんが、日本人としては6年ぶりの受賞を果たしています。
今年の受賞者
2025年 北川 進(日本) & リチャード・ロブソン(イギリス/オーストラリア) & オマー・ヤギー(ヨルダン/アメリカ/サウジアラビア)
3人は、「金属有機構造体(MOF)」の開発と発展に尽力したことが評価され、受賞となりました。
この発見は、化学・材料技術の新時代を切り拓いた功績として高く評価されています。
金属有機構造体(MOF)は、極めて高い多孔性と設計自在な構造をもち、ガスの捕集・分離、触媒反応、貯蔵といった用途に加え、空気中から水を生成したり、有害物質を除去したりと、さまざまな応用が期待されています。
1980年代後半に始まった初期の合成実験を起点に、多くの構造改良や機能拡張が進められ、MOFは「化学の空間構築」技術として大きく発展してきました。
今回の受賞は、MOFが将来のエネルギー・環境・材料分野の応用を支える基盤となっていることの証明と言えるでしょう。
直近の日本人受賞者
2019年 吉野 彰(日本) & ジョン・グッドイナフ(アメリカ/ドイツ) & スタンリー・ウィッティンガム(イギリス/アメリカ)
名城大学 大学院教授の吉野 彰(よしの あきら)さんが、リチウムイオン電池の発明により受賞しています。
ニッケル電池など従来の電池は、まだ容量が残っている状態での充電をくり返してしまうと、電池自体の容量が減ってしまう現象(メモリー効果)が起こってしまいました。
しかし、リチウムイオン電池はそれがないため、何度もくり返し充電できます。また、時間が経つにつれて自然と消費されてしまう電力も少なく、電池そのものの寿命をのばすことができたのです。
今ではコンセントにつなぐだけですぐに充電できる携帯用ゲーム機も、20年ほど前までは使い捨ての乾電池を毎回交換していました。
パソコンや携帯電話をはじめ、現在も多くの電子機器に搭載されているリチウムイオン電池が、IT機器の普及にどれだけ貢献してきたかがよくわかりますね。
豆知識
日本人のノーベル化学賞受賞者は、1981年にアジアで初めて受賞した福井 謙一(ふくい けんいち)さんを始め、唯一大学院を出ずに受賞したことも話題になった2002年の田中 耕一(たなか こういち)さんなど、物理学賞に次ぐ8人です。
過去の受賞者に目を向けてみると、現在も化学の教科書に名前を残している研究者が少なくありません。「ハーバー・ボッシュ法」を開発した、フリッツ・ハーバーとカール・ボッシュもそれぞれ受賞しています。(ボッシュは、ハーバーの13年後に高圧科学的方法の発明により受賞)
物理学や生物学の研究・開発につながるような発見も多く、化学系統以外に興味がある人も、過去の内容を調べてみると興味深い研究が見つかるかもしれません。
ノーベル生理学・医学賞
面接を必須とすることが多い医療系の学部では、ノーベル賞について聞かれることが少なくありません。
生理学・医学賞のみ、別の記事にまとめているので、ぜひ確認してみてくださいね。

ノーベル文学賞

文学賞は、その名の通り文学において顕著な貢献を果たした作家に送られます。
『老人と海』で知られるアーネスト・ヘミングウェイや、日本人で初めて受賞した川端 康成(かわばた やすなり)など、小説家や詩人が選ばれることが多いですが、2016年にはアメリカの歌手であるボブ・ディランが選ばれ話題となりました。
過去にも哲学者であるバートランド・ラッセルや、政治家のウィンストン・チャーチルが受賞しており、いわゆる文学作品以外が対象になることもあるようです。
今年の受賞者
2025年 クラスナホルカイ・ラースロー(ハンガリー)
2025年のノーベル文学賞は、ハンガリーの小説家クラスナホルカイ・ラースローさんに授与されました。
独特な文体と重厚な世界観を特徴とし、代表作『抵抗の憂鬱』で国際的にも広く知られています。
世界を旅しながら執筆を続けており、京都に滞在していた経験から、日本を舞台にした作品『北は山、南は湖、西は道、東は川』も手がけました。
この作品は、現在のところ彼の著作で唯一の日本語訳であり、この機会に手に取ってみるのも良いでしょう。
彼の作品は、英語ではなくハンガリー語ですべて描かれており、その点も注目されています。
文学を通じた異文化理解や想像力の架け橋としての意義も、この受賞には込められていると考えられます。
直近の日本人受賞者
1994年 大江 健三郎(日本)
大江 健三郎(おおえ けんざぶろう)さんは、『万延元年のフットボール』などの作品で知られる作家で、川端 康成以来26年ぶりに日本人の受賞者となりました。30年近く経つ2023年現在も、日本人受賞者はこの2人だけです。
2017年には、『わたしを離さないで』などで知られる、カズオ・イシグロさんが受賞しました。
イシグロさんは長崎県で日本人の両親のもと生まれましたが、小学生の頃にはイギリスで暮らすようになり、英文学作家として評価されています。
ただし、幼少期に見た日本映画の影響も受けていて、日本を舞台とした作品も存在しており、日本でも人気の作家となっています。
豆知識
歴代の受賞者を見ても欧米の作家が大半を占めており、やはり世界中で読まれている作品が評価される傾向にあります。
川端 康成が受賞したのも、当時「受賞者が西洋の作家に偏りすぎているため、日本の作家に賞を与えるべきだ」という批判を受けていたことが、理由の一つだとされています。
ノーベル賞の選考課程は、発表後50年間公表されないため、実際にどういった作家が当時評価されていたのかはわかりません。ここ十数年の間、受賞するのではないかと期待されている村上 春樹(むらかみ はるき)さんが、どう評価されているのか…が具体的にわかるのは、少なくとも今から30年後になるでしょう。
ノーベル平和賞

残した業績について時間が経ってから評価されることが多い科学系の3分野と比べ、平和賞は現在進行形で活動している人物が評価されることもあり、受賞後の活動で評価を下げてしまうケースも少なくありません。
また、「個人だけでなく団体も対象になる」「スウェーデンではなく隣国のノルウェーで授賞式が行われる」など、ほかの分野とは異なる特徴があります。
平和賞については各国で議論されるデリケートな内容を含むため、今回の記事では筆者の思想を挟まないよう、簡潔にまとめます。
今年の受賞者
2025年 マリア・コリーナ・マチャド(ベネズエラ)
2025年の平和賞は、ベネズエラの政治家であるマリア・コリーナ・マチャドさんが受賞しました。
受賞理由は、「ベネズエラの人々の民主的権利の促進に貢献したこと」だとされています。
ベネズエラ国籍の人物としては、初めてのノーベル賞受賞となりました。
直近の日本人受賞者
2024年 日本原水爆被害者団体協議会(日本)
昨年、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞しました。
日本のノーベル平和賞受賞は、「非核三原則」で有名な1974年の佐藤栄作元首相と合わせて、2度となっています。
ノーベル経済学賞

先述の通り、遺言にはなかったため「厳密にはノーベル賞ではない」とされていますが、賞金額などは変わらず、経済学において最も権威ある賞の一つに数えられています。
研究内容がすぐに評価されるわけではなく、後発の研究に与えた影響が評価されるため、研究発表から数十年経った後に受賞するケースが少なくありません。
今年の受賞者
2025年 ジョエル・モキイア(イスラエル/アメリカ) & フィリップ・アギヨン(フランス) & ピーター・ホーウィット(カナダ)
3人は、「イノベーション(技術革新)主導の経済成長の説明」が評価され、経済学賞を受賞しています。
この発見は、技術革新を原動力とする持続的経済成長という視点を、理論のレベルで確立したものと位置づけられます。
モキイアさんは、技術進歩と制度・知識の相互作用が自己強化される成長メカニズムを明らかにしました。
アギヨンさんとホーウィットさんは、「創造的破壊」を通じて、古い技術や産業が新しいものに置き換わる過程を数理モデルとして示しています。
この発見は、技術革新、競争促進、政策設計などを結びつけ、未来の経済発展を支える基盤を築いたと言えるでしょう。
直近の日本人受賞者
受賞者ナシ
2025年時点で、日本人の経済学賞受賞者はいません。
歴代の受賞者を見ても圧倒的にアメリカの経済学者が多いことがわかります。
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