2022年度から新学習指導要領がスタート!新課程による変更点と共通テストへの影響を解説

最終更新日:2023/01/04

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2022年4月から新学習指導要領がスタートしました。新課程では教科・科目が再編され、高校で学習する内容も大きく変わっています。

もちろん、新学習指導要領が共通テストに与える影響も無視できません。特に、2025年1月に予定されている大学入学共通テストは新学習指導要領で初の試験となるため、変更点が気になるところです。

そこで今回は、新課程で各教科・科目がどのように変わったのか、そしてそれが大学入学共通テストへどのような影響をおよぼすのかを詳しく解説します。

新学習指導要領の基礎知識

最初に、新学習指導要領の概要を知っておきましょう。

新学習指導要領が始まる理由・背景

学習指導要領は文部科学省が定める教育課程の基準で、約10年に1度改定されています。定期的に改定されるのは、社会の急激な変化に対応し、子どもたちが生きていくために必要な資質や能力を見直すためです。

そして新学習指導要領では、「学びに向かう力、人間性など」「知識および技能」「思考力、判断力、表現力など」の3つをバランスよく育むことを目指しています。

いつから?新学習指導要領の実施スケジュール

新学習指導要領の実施スケジュールは、以下のとおりです。

2021年度 2022年度 2023年度 2024年度 2025年1月
中学校全学年で実施 高1生で実施 高1生・高2生で実施 高校全学年で実施 新学習指導要領で初の大学入学共通テスト実施

新学習指導要領は、すでに2021年度から中学校の全学年で実施されています。高校では、2022年度4月の高1生から実施。2023年度には高1生と高2生、2024年度には全学年で実施され、2025年1月には新学習指導要領で初の大学入学共通テストが実施される予定です。

何がどう変わる?新学習指導要領における教科・科目の再編ポイント

それでは、新学習指導要領で教科・科目はどのように変わるのでしょうか。再編のポイントを見ていきましょう。

国語

国語は科目が一新され、「現代の国語」「言語文化」が必履修科目になりました。「言語文化」は、日本の言語文化に対する理解を深める科目です。

大学入学共通テストでは、現代文・古典ともに、新学習指導要領を意識した大きな変化はないとする見解が多いです。ただし、例えば、「現代の国語」では、実社会や実生活のなかで生きて働く国語力の育成を目指しています。そのため、以下のような実用文に読み慣れるとともに、そこから総合的な思考・判断・理解する学習は大切になるでしょう。

  •  法令文
  • 企画書
  •  報告書
  • 報道の文章 など

一方で、これまで重視されていた文芸作品などの学習機会は、実用文を取り扱う授業の増加によって、相対的に減る可能性があります。しかし、文芸作品は、2025年度以降もこれまでどおり出題される可能性の高い分野です。そのため、学校で文芸作品に触れる機会が少なくなったとしても、受験対策は従来どおり行なう必要があるでしょう。

また、文脈のなかにおける単語や文法知識の応用や、複数の文章から主題などを想像する実践的な学習も求められます。

地理歴史

地理歴史も科目が一新され、新設の「地理総合」「歴史総合」が必履修科目になっています。そのため、「地理を学ばない」という選択肢がなくなりました。

地理歴史の大学入学共通テスト対策では、「総合」と「探究」を学ぶ主旨を理解しておくことが大切です。新学習指導要領における「探究」は、必履修科目の「歴史総合」で身に付けた知識・資質・能力を土台とする科目になります。

新学習指導要領の主旨に合った対応をするためには、歴史総合で重要事項を覚えるだけでなく、アクティブラーニングのような能動的な学習を通して「どうしてそうなるのか?」という探究の姿勢や興味から、理解を深めていくことも大切です。

また、国語の新学習指導要領と同様に、複数の事象への比較・相互関係の着目・関連付けの考察・構想などを通して、「社会的な見方・考え方」を培うことも重要ポイントとなります。

公民

公民は「現代社会」がなくなり、「公共」が必履修科目として新設されました。「公共」では、社会に参画する主体として自立すること・他者と協働してよりよい社会を形成することなどの重要性を学びます。

大学入試センターでは、2025年(令和7年度)の共通テストから、出題科目数や組み合わせに関する「スリム化」を行なうとしています。このことから、従来の公民(公共と倫理、政治・経済など)の変更点や出題傾向には、さまざまな見解があります。

例えば、公共が以下3科目との共通設問になった場合、公共のボリュームがかなり大きくなるとも考えられています。

a. 公共+倫理
b. 公共+政治・経済
c. 地理総合+歴史総合+公共

また、先述の国語と同様に、公共においても、ある種の実用文ともいえる資料活用や、思考力や判断力に重点を置いた対策が必要になる可能性も高いでしょう。

数学

数学は、「数学活用」が廃止され「数学C」が設けられました。「数学C」の内容は、「ベクトル」「平面上の曲線と複素数平面」「数学的な表現の工夫(工夫された統計グラフや離散グラフ、行列など)」です。

数学の共通テスト対策で注意すべきなのは、大きく分けて以下の2点です。

  • 各大学が選択する数学科目や、数学の試験範囲が変更になる可能性
  • 他分野との融合かつ横断的な知識が求められる問題が、従来以上に増える可能性

例えば、共通テストで「数学II、数学B、数学C」を受験する学生の場合、文系学部でも、従来の数学C範囲となる「ベクトル」の2次試験対策が求められる可能性があります。そうすると、文系学生の負担は、かなり増えるでしょう。

また、近年、ビッグデータ・機械学習・統計学の活用などがビジネスに欠かせない現状を踏まえて、統計やデータ分析も重視されるようになりました。このことから、例えば、一見すると確率のような数学A問題を解くうえでも、準必須のようなイメージで数学Bの統計的な推測などの視点が必要になる可能性があるかもしれません。

英語

英語も科目が一新され、4技能を総合的にあつかう「英語コミュニケーションI」が必履修科目になっています。新設の「論理・表現」は、「書くこと」「話すこと」の育成・強化が目的です。

この4技能のうち、共通テストで問われるのは、従来どおりリーディング(読むこと)と、リスニング(聞くこと)の2つです。出題内容に大きな変更点はありません。

ただし、全体的な傾向としていえるのは、先述の国語と同様に、以下のような実用文を含めた多様な素材に応じて、読む・聞くスキルを問う内容が出題される点になります。

  • 論説文
  • 伝記
  • 広告
  • ブログ
  • 複数人の議論
  • 日常会話 など

こうした方針から、読むこと・聞くことを通して、必要や情報や要点を読み取る学習や、図やグラフなどの他の情報と組み合わせて解釈する対策などが必要となるでしょう。

なお、高校生が学ぶ単語数は、最大で700語も増加します。また、近年の大学入学共通テストでは、英文量の増加傾向が高いです。このことから考えても、単純に単語を覚えて語彙力を高めるだけでなく、練習問題や模擬試験を通して、英語の総合力や応用力を培うことが重要となるでしょう。

情報

情報は、「情報I」と「情報II」に再編されます。「情報I」は必履修科目です。「情報I」では、プログラミングの基礎のほか情報モラルなども学びます。そして、この再編に伴い、大学入学共通テストでも、2025年度(令和7年度)より「情報」の教科が追加されることになりました。

なお、新学習指導要領の「情報Ⅰ」と、現行教育課程における「社会と情報」「情報の科学」の目標・内容には、大きく異なっています。そのため、大学入試センターでは、2025年の大学入学共通テストにおいて、既卒者と卒業見込みの学生の両方に配慮する目的で、選択可能な経過措置問題が出題されることをアナウンスしています。

情報科目の場合、2025年度(令和7年度)から新たに追加されるため、ほかの科目のように実績もないことから、現状では不透明な部分が多いです。情報科目における具体的な出題範囲や内容は、大学入試センターによる今後の発表に注視しましょう。

その他

「総合的な学習の時間」に代わり、「総合的な探求の時間」が必履修科目になりました。また、創造性豊かな人材を育むことを目的とした「理数」が新設されたのも、新学習指導要領の特徴といえるでしょう。

なお、理科は「理科課題研究」が廃止されたことを除き、科目の変更はありません。ただし、新学習指導要領と現行の教育課程の間で扱いが異なる内容もあることから、必要に応じて既卒者が選択可能な問題を出題することがアナウンスされています。

大学入学共通テストへの影響は?

新学習指導要領のスタートにともない、2025年1月実施の大学入学共通テストから出題科目や内容が大きく変わります。

おもな変更点は以下のとおりです。

新設

「情報」の試験が新設されます。出題科目は「情報I」、試験時間は60分です。

科目の変更

「地理歴史」「公民」は、必履修科目を含む6つの出題科目から最大2科目を選択することになります。

「数学」は、「数学②」の出題範囲が「数学II・数学B・数学C」に変更です。現行では「数学II(単独科目)」での受験が可能ですが、2025年の共通テストからは選択できません。

試験時間の変更

「国語」は、試験時間が10分増えて90分になります。

「数学」は、「数学②」の試験時間が10分増えて70分になりますが、これは「選択解答する項目数が2から3へ増加するため」です。

出典:「令和7年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施大綱の予告(補遺)」について(通知)

なお、より詳しい情報は以下の記事をご覧ください。

2025年度共通テストはこう変わる!各教科の変更点・注意点をまとめて解説

まとめ:文部科学省や志望校の最新情報を引き続きチェックしよう!

新学習指導要領は2021年から中学校全学年で実施されており、2022年4月からは高1生、2023年には高1生・高2生、2024年には高校の全学年で実施されます。そして、2025年1月には新課程で初の大学入学共通テストが行なわれる予定です。

共通テストについてはいまだ不明点も多くありますが、2022年度中には各大学の2025年度入試の方向性が明らかになると思われます。出題方法や科目選択方法の最新情報を逃さないために、今後も文部科学省や大学から発信される情報をこまめにチェックしましょう。

大学受験合格ブログ編集部

このブログは、大学受験予備校の四谷学院の「受験コンサルタントチーム」「講師チーム」「受験指導部チーム」が担当しています。 大学受験合格ブログでは、勉強方法や学習アドバイスから、保護者の方に向けた「受験生サポート」の仕方まで幅広く、皆様のお悩みに役立つ情報を発信しています。

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