2026年のノーベル賞全6分野の受賞者が、10月5日から12日にかけて発表されました。
今年は、化学賞で日本の硤合憲三(そあい けんそう)さんが受賞。前年の北川進さんに続き、2年連続で日本人研究者がノーベル化学賞に選ばれました。
物理学や化学、生理学・医学はもちろん、文学賞や平和賞、経済学賞など、今年もさまざまな分野での功績が注目されています。
大学入試の面接では、こんな質問をされることがあるのを知っていますか?
「最近気になったニュースはありますか?」
「今年のノーベル賞について、知っていることはありますか?」
特に、自分が志望する学部に関連する研究や受賞者については、「どのような功績が評価されたのか」「自分の学びたい分野とどう関係しているのか」まで説明できるようにしておきましょう。
今回は、2026年のノーベル賞全6分野の受賞者と、過去の主な日本人受賞者について、わかりやすく紹介していきます。
2025年の受賞者についてはこちらの記事で確認できます!


そもそもノーベル賞とは?
ダイナマイトの発明で知られる、スウェーデンの化学者アルフレッド・ノーベルの遺言から始まった、100年以上の歴史を持つ栄誉ある賞です。
第1回の授賞は1901年で、2026年は125周年にあたる年です。
受賞者にはメダルや賞状、賞金が贈られます。
2026年の賞金は1部門あたり1,200万スウェーデンクローナで、複数人が受賞した場合は分配されます。
かつては故人も表彰の対象でしたが、1974年以降は原則として亡くなった人への授賞は行われなくなりました。
ノーベルは、強力な兵器の存在が戦争の抑止力になると考えていました。
しかし、彼が開発した爆薬は戦争にも利用され、「死の商人」と批判されたという逸話も残っています。
こうした評価を気にして、自分の死後に人類の発展に貢献する賞を残そうとした、という説もあります。
ただし、ノーベル賞を設立した動機については、はっきりとわかっていません。
元々遺言にあったのは、「物理学」「化学」「生理学・医学」「文学」「平和」の5分野です。
現在は「経済学」を含めた6分野で表彰されていますが、経済学賞だけは1968年に新設されたものです。
正式名称は「アルフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立銀行経済学賞」で、厳密にはノーベルの遺言によって設けられた賞ではありません。
面接によく出てくる話題は?
日本人がノーベル賞を受賞した年は、特に注目される話題です。
『○○さんがノーベル賞を受賞しましたが、知っていますか?』といった質問をされることもあるでしょう。
ただし、「知っています」という確認や、「すごいと思います」という単純な感想を求められているのではありません。
よく聞かれる『最近気になったニュースはありますか?』という質問と同様、そのニュースを知って「自分の考え方がどう変わったか」「どんなことに新しく気づいたのか」ということが大切なのです。
さらに、「この研究は将来の社会にどのような影響を与えると思いますか?」など、一歩踏み込んだ質問をされることもあるでしょう。
焦らずに返答するためには、事前にニュースの内容を理解し、自分なりの意見を整理しておく必要があります。
日本人の受賞者はもちろん、自分が進学する分野に関連する内容については、必ず確認しておきましょう。
ノーベル物理学賞
物理学賞は、「天文学(宇宙)」「原子物理学」「素粒子物理学」など、幅広い分野の研究が対象になります。
近年では気候や地球環境に関する研究も受賞しており、物理学が私たちの身の回りのさまざまな現象と関係していることがわかります。
今年の受賞者
2026年 フランシス・ハルツェン(ベルギー/アメリカ)
2026年のノーベル物理学賞は、「IceCubeニュートリノ観測所への貢献と、宇宙物理的起源を持つ高エネルギーニュートリノの発見」が評価され、フランシス・ハルツェンさんが受賞しました。
今回の研究を理解するキーワードは、「ニュートリノ」です。
ニュートリノとは、物質とほとんど反応しない非常に小さな粒子で、私たちの体や地球も大量に通り抜けています。
ところが、物質と反応しにくいということは、観測することも非常に難しいということです。
そこでハルツェンさんらが研究を進めたのが、南極の氷を利用した巨大な観測施設「IceCube(アイスキューブ)」でした。
南極の氷の深い場所に数千個もの光センサーを設置し、ニュートリノがまれに物質と反応した際、発生した粒子が放つ光を捉える仕組みです。

この観測によって、宇宙から地球に飛来する高エネルギーニュートリノの存在が確認され、宇宙を調べる新たな方法が切り開かれました。
ニュートリノは、宇宙の遠く離れた場所から情報を運んでくる存在でもあります。
これまで主に光などを使って観測してきた宇宙を、別の方法から調べられるようになった、重要な研究だといえるでしょう。
直近の日本出身受賞者
2021年 真鍋淑郎(アメリカ) & クラウス・ハッセルマン(ドイツ) & ジョルジョ・パリージ(イタリア)
日本出身の真鍋淑郎(まなべ しゅくろう)さんは、1975年にアメリカ国籍を取得し、長年にわたって気候の研究を続けてきました。
現在では広く知られている「二酸化炭素と地球温暖化の関連性」ですが、真鍋さんは50年以上も前から研究を進めていました。
コンピューターを使ったシミュレーションによって、大気中の二酸化炭素が増えた場合に地球の気温がどう変化するかを調べ、地球温暖化や気候変動の予測につながる研究の基礎を築いたのです。
現在の気候変動に関する研究や議論にも、大きな影響を与えています。
豆知識
2026年の受賞テーマとなったニュートリノは、日本でも長年研究が続けられてきた分野です。
2015年には、東京大学の梶田隆章(かじた たかあき)さんが、「ニュートリノ振動」の発見によってノーベル物理学賞を受賞しています。
これは、ニュートリノに質量があることを示す重要な発見でした。
日本の「スーパーカミオカンデ」と、今回の「IceCube」は、どちらもニュートリノを観測する巨大な施設です。
研究目的や観測対象には違いがありますが、見えない粒子を観測することで、宇宙や物質の謎を解き明かそうとしている点は共通しています。
また、日本出身の物理学賞受賞者には、青色発光ダイオードの研究で2014年に受賞した赤﨑勇さん・天野浩さん・中村修二さんなどもいます。
目に見えない粒子の研究から、私たちの生活に身近な発明まで、物理学の研究分野がいかに幅広いかがわかりますね。
ノーベル化学賞
化学賞は、「有機化学」や「無機化学」をはじめ、非常に幅広い分野から受賞者が選ばれます。
元々化学者であるノーベルが、遺言の中で物理学に続く2番目に挙げている分野でもあります。
伝記でもよく知られる「キュリー夫人」ことマリ・キュリーは、1903年に物理学賞、1911年に化学賞を受賞しました。
そして2026年は、前年の北川進さんに続き、2年連続で日本人研究者が化学賞を受賞しています。
今年の受賞者
2026年 硤合憲三(日本) & アンリ・B・カガン(フランス)
2026年のノーベル化学賞は、「不斉有機合成における非線形効果と自己触媒作用の発見」によって、東京理科大学名誉教授の硤合憲三(そあい けんそう)さんと、フランスのアンリ・B・カガンさんが受賞しました。
難しい言葉が並んでいますが、今回の研究で重要なのは、分子の「右手型」と「左手型」です。
私たちの右手と左手は、鏡に映したような関係にありますよね。
しかし、どのように向きを変えても、完全に重ね合わせることはできません。
実は、分子にも同じような関係を持つものがあります。
これを「鏡像異性体」と呼びます。

そして、私たちの体のタンパク質をつくるアミノ酸は、基本的に右手型と左手型のうち、一方の形に偏っています。
では、なぜ片方の形に偏っているのでしょうか?
カガンさんは、触媒に含まれる右手型と左手型の割合がわずかに偏っているだけでも、生成される分子ではその偏りが大きくなる場合があることを明らかにしました。
一方、硤合さんは、反応によってできた物質自身が触媒となり、同じ形の物質がさらに増えていく「不斉自己触媒反応」を発見しました。
この反応は「硤合反応」と呼ばれています。
2人の研究は、生命を構成する分子がなぜ一方の形に偏っているのかという、長年の謎を解き明かす手がかりとなっているのです。
また、医薬品の開発では、分子の右手型と左手型の違いによって、体内での作用が変わることもあります。
そのため、目的に合った形の分子をつくり分ける技術は、医薬品などの開発でも重要なのです。
直近の日本人受賞者
2025年 北川進(日本) & リチャード・ロブソン(イギリス/オーストラリア) & オマー・ヤギー(ヨルダン/アメリカ/サウジアラビア)
2025年には、京都大学の北川進(きたがわ すすむ)さんら3人が、「金属有機構造体(MOF)」の開発によって受賞しました。
MOFは、金属イオンと有機分子を組み合わせてつくられる、内部に無数の小さな穴を持つ材料です。
この穴に特定の物質を取り込めるという特徴があり、ガスの貯蔵や分離、有害物質の除去など、さまざまな分野での応用が期待されています。
たとえば、空気中の水分を集めたり、二酸化炭素を回収したりする技術への利用も研究されています。
2026年の硤合さんとは研究内容が異なりますが、どちらも長年にわたる基礎研究が世界的に評価された例だといえるでしょう。
豆知識
日本人のノーベル化学賞受賞者には、1981年の福井謙一(ふくい けんいち)さんや、2002年の田中耕一(たなか こういち)さんなどもいます。
また、2019年には吉野彰(よしの あきら)さんが、リチウムイオン電池の開発につながる研究によって受賞しました。
リチウムイオン電池は、スマートフォンやノートパソコンなど、多くの電子機器で使われています。
身近な技術にも、ノーベル賞を受賞した研究が生かされているわけですね。
過去の受賞者を調べてみると、現在も教科書に名前が残っている研究者が少なくありません。
医薬品やエネルギー、環境問題などとも関係するため、化学系の学部以外を志望する人にとっても、興味深い研究が見つかるでしょう。
ノーベル生理学・医学賞
医学部をはじめ、医療系の学部を目指している人は、特に押さえておきたい分野です。
2026年は、カール・ダイセロスさん、ペーター・ヘーゲマンさん、ゲオルク・ナーゲルさんの3人が、「光遺伝学(オプトジェネティクス)」に関する研究で受賞しました。
光を使って特定の神経細胞の活動をコントロールする技術の発展に貢献し、脳の仕組みの解明に新たな道を開いた研究です。
受賞者や研究内容、将来の医療への応用、医学部面接で押さえたいポイントについては、別の記事で詳しく紹介しています。

ノーベル文学賞
文学賞は、その名の通り、文学において顕著な貢献を果たした作家に贈られる賞です。
『老人と海』で知られるアーネスト・ヘミングウェイや、日本人で初めて受賞した川端康成(かわばた やすなり)さんなど、小説家や詩人が多く選ばれています。
しかし、2016年にはアメリカの歌手ボブ・ディランさんが受賞し、大きな話題となりました。
過去には哲学者のバートランド・ラッセルさんや、政治家のウィンストン・チャーチルさんも受賞しており、いわゆる小説や詩だけが対象になるわけではありません。
今年の受賞者
2026年 アン・カーソン(カナダ)
2026年のノーベル文学賞は、カナダ出身の詩人であり、古典文学の研究者・翻訳家でもあるアン・カーソンさんが受賞しました。
古代ギリシャなどの古典文学を取り入れながら、現代文学に新しい表現形式を生み出してきたことが高く評価されています。
代表作の一つが、1998年に発表された『赤の自伝』です。
古代ギリシャ神話に登場する怪物ゲリュオンを題材にした作品ですが、昔の物語をそのまま再現したものではありません。
神話の登場人物を現代的な物語の中に描き直し、詩と小説を組み合わせた独特の形式で表現しています。
カーソンさんは、詩や小説だけでなく、エッセーや古典文学の翻訳など、幅広い分野で創作活動を続けてきました。
文学のジャンルを超えて、新たな表現の可能性を追求してきたことが、今回の受賞につながったといえるでしょう。
直近の日本人受賞者
1994年 大江健三郎(日本)
大江健三郎(おおえ けんざぶろう)さんは、『万延元年のフットボール』などの作品で知られる作家です。
1968年に受賞した川端康成さん以来、26年ぶりとなる日本人の文学賞受賞者でした。
また、2017年には長崎県生まれの作家、カズオ・イシグロさんが受賞しています。
イシグロさんは幼少期にイギリスへ渡り、その後イギリス国籍を取得しました。
代表作『日の名残り』や『わたしを離さないで』などは、日本でも広く知られています。
豆知識
ノーベル文学賞については、日本の作家である村上春樹(むらかみ はるき)さんの名前が、受賞候補としてメディアに取り上げられることがあります。
ただし、ノーベル賞の候補者や選考に関する情報は、原則として50年間公開されません。
そのため、実際に誰が候補者として推薦され、どのような議論が行われたのかは、すぐに確認できるわけではないのです。
文学賞は、作品そのものだけでなく、異なる文化や歴史への理解を深めるきっかけにもなります。
受賞作家の作品に興味を持ったら、ぜひ実際に読んでみてくださいね。
ノーベル平和賞
科学系の賞では、何十年も前の研究成果が評価されることがありますが、平和賞では現在進行形で活動している人物や団体が選ばれることも珍しくありません。
また、「個人だけでなく団体も対象になる」「スウェーデンではなくノルウェーで授賞式が行われる」など、ほかの分野とは異なる特徴があります。
平和賞は国際政治や社会情勢に関係することも多いため、受賞理由と実際の活動内容を分けて理解しておくことが大切です。
今年の受賞者
2026年 ナビ・ピレイ(南アフリカ)
2026年のノーベル平和賞は、南アフリカ出身の法律家であるナビ・ピレイさんが受賞しました。
平和と国際法の推進に長年取り組んできたことが評価されています。
ピレイさんが生まれ育った南アフリカでは、かつて「アパルトヘイト」と呼ばれる人種隔離政策が行われていました。
ピレイさん自身も差別を経験しながら法律家となり、人種差別と闘う人々の権利を守る活動に取り組んできたのです。
その後は、ルワンダ国際戦犯法廷や国際刑事裁判所の裁判官、国連人権高等弁務官などを歴任しています。
特に、戦争犯罪やジェノサイド(集団殺害)などの重大な犯罪について、国際法に基づいて責任を追及する仕組みの発展に貢献してきました。
直近の日本の受賞団体
2024年 日本原水爆被害者団体協議会(日本)
2024年には、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞しました。
日本被団協は、原子爆弾の被害を受けた人々による全国的な団体で、長年にわたって核兵器の廃絶を訴える活動を続けています。
受賞では、核兵器が二度と使用されてはならないことを、被爆者の証言を通じて世界に伝えてきた活動が評価されました。
日本からの平和賞受賞は、1974年の佐藤栄作元首相以来、50年ぶりでした。
ノーベル経済学賞
先述の通り、ノーベルの遺言にはなかった賞ですが、ほかの部門と同じく、世界的に権威のある賞として知られています。
経済学賞では、研究内容がすぐに評価されるとは限らず、後の研究や社会に与えた影響が認められ、数十年経ってから受賞することもあります。
経済成長や金融、市場の仕組みなど、私たちの生活に密接に関わるテーマも研究対象です。
今年の受賞者
2026年 ロバート・E・ホール(アメリカ) & マイケル・ウッドフォード(アメリカ)
2026年のノーベル経済学賞は、アメリカのスタンフォード大学名誉教授であるロバート・E・ホールさんと、コロンビア大学教授のマイケル・ウッドフォードさんが受賞しました。
受賞理由は、「マクロ経済の安定化に関するミクロ経済学的基盤」の研究です。
少し難しい表現ですが、今回の研究を理解するポイントは、「私たち一人ひとりの行動が、景気や物価にどのような影響を与えるのか」ということです。
経済には、景気がよくなる時期もあれば、悪くなる時期もありますよね。
そのため、政府は税金や政府支出、中央銀行は金利などを調整することで、景気の大きな変動を抑えようとしています。
しかし、景気や物価の動きを正確に予測することは簡単ではありません。
そこで2人は、家計や企業がどのように判断し、行動するのかという視点から、経済全体の動きを分析する研究を進めました。
ホールさんは、人々が現在の収入だけでなく、将来の収入などの見通しも考えて、消費や貯蓄を決めることに着目しました。
一方、ウッドフォードさんは、家計や企業の将来への予想を取り入れた経済モデルを発展させ、金利や金融政策が景気や物価に与える影響を研究しました。
たとえば、中央銀行が今後の金利についてどのような方針を示すかによっても、企業や家計の判断が変わり、経済に影響することがあります。
こうした研究成果は、政府や中央銀行が景気の変動に対応するための政策を検討する際に役立つ経済モデルの発展につながりました。
私たちの日々の買い物や貯蓄と、国全体の経済政策が深く関わっていることを示す研究だといえるでしょう。
日本人受賞者
2026年まで日本人受賞者なし
2026年までに、日本人のノーベル経済学賞受賞者はいません。
歴代の受賞者にはアメリカを研究拠点とする経済学者が多く、日本人にとってはまだ受賞実績のない分野となっています。
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