
こんにちは。四谷学院の奥野です。
近年、少子化の進行によって18歳の人口が減り、大学受験倍率が急速に低下しています。
定員割れを起こしている私立大学もあり、「大学全入時代」と呼ばれることもしばしば。
本人さえよければ、ほとんど誰でもどこかの大学には入れる状態といえます。
しかし、もちろんですが、すべての大学において簡単に入れるわけではありません。
一部の難関大学に人気が集中し、倍率が上昇しつつあります。
特に、不況に強いとされる資格・技能を習得できる大学・学部は人気です。
今回は、その中の頂点である医学部入試の現状や、合格のための勉強法についてお話ししていきます。



目次
医学部の志願者数は増えている

文部科学省「学校基本調査」によると、2000年度に約4万7,600人だった私立大学医学部の入学志願者数は、2024年度には11万人を超えています。
つまり、2倍以上に増えているということです。
「医師が足りない!」というニュースを目にする機会が多い近年において、志願者が倍以上増えていることは、とてもよいことのように思う人もいるでしょう。
しかし、志願者数が増えただけでは医師不足は解決しません。
これは、倍増している志願者数を受け入れる医学部が、ほとんど増えていないためです(定員は増えています)。
医学部を新設するためには、医師免許を持った教員を数多く確保しなければなりません。
しかし、医療現場で活躍している医師を教員にすると、ただでさえ不足している医師の数がさらに減ってしまいます。
ほかにも、医学部を新設するまでには、施設や設備の整備に多額の費用がかかることや、文部科学省の審査、医師会による反発など、さまざまなハードルがあります。
このような背景もあり、医学部の新設は近年少なくなっています。
特例で、2016年に東北医科薬科大学、2017年に国際医療福祉大学に医学部が新設されましたが、その後は現在(2025年7月)まで医学部は増えていません。
つまり現状は、定員は増えているものの増加には限界があり、それ以上に志願者が増えているということです。
こうして、倍率が10倍・20倍にまで上がってしまいます。
医学部入試が最難関だといわれている理由

医学部が最難関だといわれる理由には、偏差値や合格ライン、競争率の高さが関係しているといえるでしょう。
医学部は全学部の中でも圧倒的に偏差値が高く、最低でも60以上、難易度が高い大学だと75を超えます。
さらに、医学部に合格するには、大学入学共通テストで80~90%近くの得点率が必要です。
医学部を持つ大学の中には、合否判定における大学入学共通テストの割合が高いところも少なくありません。
したがって、そういった大学への合格を目指す場合は、大学共通テストの重要度が高まります。
また、医学部入試では二次試験も高難易度です。
総合大学では多くの場合、個別試験でほかの理工系学部と共通の問題が出されますが、合格ラインがぐっと上がるため、ミスなく時間内に解き切り、多く得点しなければなりません。
学科試験に加えて小論文や面接が課されることも多く、学科試験対策を受験対策のメインとしつつ、並行して小論文や面接の対策も必要です。
先ほどお伝えしたように、医学部が新設されることはほとんどない一方で、志願者数は大きく増えており、現役・浪人問わず日本全国の医学部を目指す人々がライバルになります。
その結果、帝京大学や聖マリアンナ医科大学、金沢医科大学など、多数の大学が倍率30倍を超える状況になっています。
医学部に入るための勉強法

難易度の高い医学部に合格するためには、どのように勉強を進めるべきでしょうか?
学年別にご紹介します。
高校1年生
医学部入試に向けての対策は、高校1年生から始めることをおすすめします。
医学部を目指す人の中には、中高一貫校に通っている人が多数います。
中高一貫校は授業の進みが早く、中学3年生の時点で、すでに高校教科書の内容を学んでいることも珍しくありません。
教科書で学ぶ内容を早めに終わらせておけば、医学部入試の対策に時間をかけることができて有利でしょう。
そのような中高一貫校のライバルに負けないためにも、少なくとも高校1年生から受験勉強をスタートしたいところです。
高校1年生の間は特に基礎学習が重要になります。国語・数学・英語の基礎知識の理解や暗記を行い、入試問題を解くための土台となる知識をしっかり身につけましょう。
高校で学ぶ基礎的な内容は、1年生のうちにすべて身につけるつもりで取り組むことが大切です。
高校2年生
高校2年生では、1年生のうちに学びきれなかった内容を終わらせ、苦手科目の克服に力を入れましょう。
苦手分野の克服には時間がかかるものです。
高校2年生のうちにしっかり取り組み、苦手をつぶしておくことで、問題演習もスムーズに進みます。
また、医学部入試では、面接や小論文を通して「その人物が医師にふさわしいかどうか」を判断されます。
机に向かう勉強だけではなく、医療問題に対する考えを自分の中でまとめたり、さまざまな人と交流してコミュニケーション力を高めたりすることも大切です。
高校3年生
高校3年生では、志望大学に向けて実戦的な演習を繰り返し行います。
なるべく早いうちに過去問を解き、出題傾向や合格に必要なレベルを把握したうえで、志望校に合わせた演習を行いましょう。
問題演習をしていて隠れた苦手に気付いたら、基礎に立ち返って復習も行います。
中には、試験本番が近づいてくるにつれて不安を感じ、無理に長時間勉強して心身に負担をかけすぎてしまう人もいるでしょう。
試験本番では積み上げてきたもので勝負をすることになるので、心身に支障をきたすことがないよう、体調を整えることやメンタルの管理も行ってください。
【二次試験対策】差がつく面接・小論文の対策

お伝えしたように、医学部入試では学科試験に加えて、面接や小論文の二次試験が行われることが一般的です。
しかし、面接や小論文の対策がわからず、不安に思う人も多いでしょう。
ここからは、医学部の面接や小論文の特徴、対策をご紹介します。
面接で聞かれること
医学部の面接でよく聞かれる質問には、以下のようなものがあります。
- 「なぜ医師になりたいのか?」
- 「なぜ本学を選んだのか?」
- 「理想の医師像は?」
- 「最近気になった医療ニュースは?」
医学部の面接では、これらの質問を通して、生徒の倫理観や人間性をチェックします。
一次試験の点数がどれほど高くても、面接で適性がないと判断されれば不合格になることもあるので、早いうちからしっかりと面接対策に取り組みましょう。
1対1の面接だけでなく、集団面接を実施したり、複数のブースを回って医療に関するテーマについて話す「MMI(Multiple Mini Interview)」を実施したりする大学もあります。
小論文対策
医学部入試の小論文では、患者とのコミュニケーションの取り方や、最新の医療ニュースに関する自分の考えを述べるなどのテーマが出されます。
医療に関するニュースをチェックして、自分なりに考えたり調べたりする習慣をつけておくとよいでしょう。
また、過去問を利用して、PREP法(結論→理由→具体例→再結論)を意識した文章を書けるように練習してみてください。
医学部を目指す際のよくある質問(Q&A)
医学部を目指す人が気になる疑問と回答をまとめました。
親が医者じゃないけど医学部に受かりますか?
親が医者でなくても医学部に合格することは可能です。
実際に、国公立大学医学部生の約7割、私立大学医学部生の約5割が、親が医者ではない学生といわれています。
医学部に入るには1日何時間勉強すればよいですか?
医学部に合格するために必要とされている1日の勉強時間は、以下のとおりです。
- 高校1年生:3時間
- 高校2年生:平日3時間、休日8時間
- 高校3年生:平日5~6時間、休日8~12時間
なお、これはあくまで目安です。人によってはさらに多くの時間が必要な場合もあります。
医学部と東大、どちらが難しいですか?
医学部と東京大学では入試問題の点数配分や出題傾向が異なるため、どちらが難しいか一概にはいえません。
例として、国公立大学の医学部と東京大学の入試について、比較してみましょう。
国公立大学の医学部は大学入学共通テストの点数比重が高く、35~50%程度が一般的です。
一方、東京大学の入試における大学入学共通テストの点数比率は20%程度です。
また、国公立医学部の二次試験は標準的な難易度であるのに対し、東京大学の試験では高い応用力が試される難問が出される傾向にあります。
これらのことから、医学部入試ではすべての科目をバランスよく学び、標準的な問題を正確に素早く解く力が必要で、東京大学入試では難問を突き詰めて思考する力が必要だといえるでしょう。
まとめ:国公立医学部に受かるためには

医学部を受験するうえで知っておきたいことや勉強の仕方をご紹介しました。
医学部入試は非常に難易度が高く、合格するためにはすべての科目で標準的な問題を取りこぼさず、高得点を狙う必要があります。
人間には誰しも得意・不得意と好き・嫌いがありますが、それは勉強の科目においても同じことです。
しかし、医学部に受かるためには、得意・不得意や好き・嫌いはいっていられません。
どのような科目であっても、求められるのは高得点です。
医学部入試では、苦手科目を避けずにコツコツ取り組める忍耐力が必要といえるでしょう。
失敗しない予備校選びは説明会・相談会参加が重要!
医学部に合格するためには、いかに自分に合った予備校を選ぶかが重要になります。
そのため、予備校を選ぶ際には、口コミや公式ホームページの情報だけでなく、実際に予備校を訪れることをおすすめします。
説明会・相談会に参加して、学習環境や指導方針、サポート体制を確認しましょう。
できれば、複数の予備校を訪れて比較検討してみてください。
以下の記事では、予備校の説明会・相談会に参加する前に確認しておきたいポイントを解説しています。こちらも、ぜひご覧ください。




