Interview
X(旧Twitter)で外交!?
――政府と人々をつなぐ新しいコミュニケーションのかたち
桜美林大学 グローバル・コミュニケーション学群 准教授
西川 順子 先生
外交は「遠い世界」の話ではない
私は、広報、社会情報学、行政学、国際政治にまたがる学際的な研究を行っています。現在取り組んでいるのは、「駐日大使によるSNS広報」に関する研究です。これは、以前行った「諸外国の駐日大使館のSNS運用」の研究とつながっています。大使館という組織のアカウントと、大使個人のアカウントでは、伝える内容や伝え方が異なります。SNSはもともと個人の発信に適した媒体だと言えるでしょう。限られた人しか発信できないマスメディアとは違い、SNSなら誰もが手元の携帯端末から自由に情報をやり取りできます。大使は国を代表する「公的な個人」という性格を持ち、SNSによる広報との相性も良いと考えています。授業でも大使のSNSを分析しますが、自分たちに馴染み深いSNS上で行われるコミュニケーションを、学生たちは興味深く感じるようです。外交は遠い世界の話のように思われがちですが、実はすぐそばで様々な国が一般の人々に向けて働きかけています。それは、国家にとって人々の理解や共感を得ることが重要になっていることの表れでもあります。今日は、情報が大量に生産・流通・消費される「情報化社会」です。さらに、情報もモノや人と同じように国境をまたいで広がっていきます。そのような、情報化、グローバル化が進む社会で、政府と人々の民主的なコミュニケーションとはどうあるべきか、今後も考えていきたいと思っています。
実務から研究へ――「デジタル外交」との出会い
こうした研究のベースになっているのが、広報実務の経験です。ロンドン大学London School of Economics and Political Science (LSE)の大学院を修了後、帰国して外資系の広告代理店で広告戦略の企画を担当しました。市場の動向調査に基づいて、緻密なコミュニケーション戦略で広告を世の中に出していく仕事は、非常に刺激的で勉強になりました。その後は、イギリスの国際文化交流機関「ブリティッシュ・カウンシル」の日本オフィスで広報官として、「クール・ブリタニア」と呼ばれた新しいイギリスのイメージを日本の若者に伝えるため、アートや音楽、科学技術などを、メディアやイベントを通して紹介しました。この経験は、後に国連大学本部で広報担当として勤務したときにも役立ちました。さらに2018~2019年頃、日本政府の国際広報プロジェクトに関わったとき、「デジタル外交」という言葉に出会います。ソーシャルメディアをはじめとするデジタル技術が、国家の対外的なコミュニケーションのあり方に大きな影響を与えるというのは、現代的で重要なテーマだと考え、そのような分野の学術的議論に加わりたいと思ったことが、実務から研究へ主軸を移す直接のきっかけとなりました。
広報研究で見えてくる行政の姿
この研究には、いくつもの魅力があります。大使館や大使の広報には、それぞれの国の方針や事情、環境の違いが表れますが、どの国にも共通する基本的な趣旨は「自国を知ってもらうこと」です。その発信を観察していると、世界の様々な動きを知ることができます。個人で気軽に始められるSNSは、大きな投資を必要としません。だからこそ、精力的に活用すれば、国力に左右されず効果的な広報活動ができます。例えば、日本語で積極的に投稿しているジョージア駐日大使のXを見て、ジョージアに行きたくなる人も多いでしょう。そうした事例に出会うと、政府の国際広報の「今のあり方」を考える良いきっかけになります。
また、政府広報の組織を研究していると「なぜこうなっているのだろう?」と疑問が生まれることがあります。行政組織は税金を使う以上、すべての活動に明確な根拠があり、その多くは、法令や行政文書に明文化されています。例えば、広報担当の人事が、特定のタイミングで大きく変わった場合、その理由を過去の行政文書や関係者へのインタビューから発見できることがあります。その瞬間は、まるでパズルのピースがぴったりはまったような感覚です。これまで説明できなかったことも根拠をもって明らかにしたり、新しい視点で説明できたりすることが、研究の醍醐味です。この分野の国内研究は限られるため、海外の学会で意見を交換し、新しい知見を得ることがとても重要です。広報外交の研究者には多文化的な背景をもつ人も多く、グローバルな同僚たちとの文化的で知的な交流は刺激的で、研究へのモチベーションにもつながっています。
西川先生からのメッセージ
自分で目標を定め、それを達成するには何が必要かを見極めることは、決して簡単ではありません。しかし、限られた時間の中で計画を立て、試行錯誤しながら前に進む経験は貴重です。ぜひ、自分なりの勉強法を見つけてみてください。受験勉強を通して主体的に学ぶ姿勢が身につけば、それは大学や社会での学びの土台となります。大学では、正しい答えを探すことよりも、答えのない問題に挑むことが多くなるでしょう。自ら課題を見つけ、それに対する自分なりの考えを他者にわかりやすく伝える力を養うことができます。また、より自由に学べて、世界が大きく広がっていくでしょう。その基盤となるのが高校までのあらゆる経験です。高校生活を大切にしながら、目標に向かって一歩ずつ進んでいってください。
桜美林大学 グローバル・コミュニケーション学群
https://www.obirin.ac.jp/academics/global_communication/
桜美林大学_西川 順子先生
https://www.obirin.ac.jp/academics/global_communication/faculty/uu3nks000000pfct.html










