Interview
選挙の投票行動の裏にある「心」を科学する
学習院大学 法学部 政治学科 教授
横山 智哉 先生
同じニュースを見ても、評価は人によって異なる
人々は選挙のとき、どのようにして投票先の政党や候補者を決めているのでしょうか。なぜ同じニュースを見ても、人によって受け止め方が異なるのでしょうか。また、日常生活で交わされる家族や友人との会話、テレビや新聞、SNSで得る情報は、人々の意見や行動にどんな影響を与えるのでしょうか。私は、このような問いを実験や調査を用いて科学的に明らかにしています。「政治」と聞くと、どこか「遠い世界の話」のように感じられるかもしれません。しかし実際には、政治は私たちの日常生活と深く結びついています。私は、こうした日常的な観点から人々の心の働きに着目し、それが政治的な態度や行動にどのような影響を与えているのかを研究しています。これが「政治心理学」という分野です。
目に見えない感覚も、数値化すれば分析できる
私は昔から「人とは何か」「心とは何か」という問いに興味があり、将来は哲学者になりたいと考えていました。転機となったのは、ある大学のオープンキャンパスで、刺激と感覚の関係を調べる「精神物理学」という学問に出会ったことです。例えば、両手にそれぞれ重さの異なるおもりを持ち、どのくらいの差があれば違いを感じるのかを確かめる実験を想像してください。人によって異なり目に見えない「感覚」も、数値として捉えれば分析できることを知り、心理学に興味を持ちました。大学に入り、同じ心理学でも様々な領域があることを知ると、中でも社会や政治といったより大きな場面における人の心の働きに強い関心を持ち、政治心理学を本格的に学ぶことを志しました。
行動を生み出す心のルールを解き明かす
社会や政治における人々の行動は、一見すると複雑で、ランダムに生じているように見えますが、その背後には一定の法則が隠れていることがあります。そうした法則の一端を明らかにし、心の働きを理解していける点に、この研究の魅力があります。例えば「なぜ人々はある行動をとるのか」という問いに仮説を立て、実験や調査データを分析して、仮説が支持されるかを検証します。検証を積み重ねることで、行動を生み出す心理的メカニズムを少しずつ解き明かせることに面白さを感じます。また、日常で目にする社会や政治の現象を主観的な説明にとどめず、データに基づいて客観的に説明できるようになる点も強みです。心の働きを理解することが、社会や政治の現象理解につながります。そこに政治心理学ならではの良さがあると思います。
大切なのは「なぜ」と立ち止まること
政治心理学を学ぶにあたり、最初から学問が好きである必要はありません。ある出来事に触れたときに「なぜだろう」と素直に疑問を持てる方と、大学でお会いできたら嬉しいです。疑問は知識があってこそ深まりますが、日常の中でふと立ち止まれる感覚そのものも大切だと思います。分からないことに出会ったときに考え、自分なりに問いを立て、調べながら理解を深めていく姿勢が重要です。また、こうした姿勢は受験勉強の中でも培われます。受験勉強は、ただ知識を身につけるだけでなく、「なぜ勉強するのか」「大学で何を学び、その先でどんな自分になりたいのか」を自分の言葉で考える機会になると思います。そして、そうした問いの中には、将来や進路につながるものもあるはずです。自分が何に疑問を持ち、何に心を動かされるのかに気づけることも、大学で学ぶうえで大切な資質の1つだと思います。
横山先生からのメッセージ
受験期には目の前の勉強に集中することが大切ですが、成績や判定だけにとらわれすぎないでほしいと思います。人生は大学受験の先の方が長いからこそ、「どの大学に入るか」だけでなく、「その先でどんな自分になりたいのか」も考えてください。オープンキャンパスや学部説明会などにも参加し、パンフレットやウェブサイトだけでは分からない雰囲気を体感しながら、自分に合う環境かどうかを確かめてみてください。
第一志望に合格する人もいれば、そうならない人もいるでしょう。第一志望に入れたからといって、その後、誰もがなりたい自分になれるわけではありません。反対に、思い通りの結果にならなかったとしても、その経験を糧に大きく成長する人もたくさんいます。大事なのは、短期的な結果だけで自分の価値を決めないことです。大学進学はゴールではなく、未来を切り開くための手段です。ぜひ、今の努力を大切にしながら、その先でなりたい姿を見失わずに歩んでいってください。
学習院大学 法学部 政治学科
https://www.univ.gakushuin.ac.jp/academics/law/
学習院大学 横山 智哉先生
https://www.univ.gakushuin.ac.jp/research/staff/tomoya_yokoyama.html












