自然の仕組みを解き明かし
豊かな水環境を未来へ引き継ぐ

北里大学 獣医学部 グリーン環境創成科学科 教授
眞家 永光 先生


自然界の物質循環を支える有機物「腐植」

私の研究は、大きく2つに分けられます。1つは、環境中の有機物、特に「腐植(ふしょく)」の動きを探る研究。もう1つは、湖や沼の豊かな水環境を未来につなぐための研究です。 「腐植」とは、枯れ葉などの植物が微生物によって分解され、二酸化炭素へと変化していく過程で生まれる有機物のことです。腐植は、土の粒をまとめて水はけの良いフカフカな土を作ったり、土や水の中でミネラルなどの栄養分を生き物が吸収しやすい形にして運んだり、微生物のエネルギー源になったりするなど、自然界の「物質循環」に深く関わっています。
このような腐植の働きは、「量」だけでなく「質」によって大きく左右され、その質は材料や生成される環境によって変化します。そこで私は、腐植の「質」に着目することで、人間の活動や気候変動が、有機物の物質循環や生態系にどのような影響を及ぼすのかを明らかにしています。

湖沼の泥を資源として活用し、水質も改善

もう1つの研究では、湖沼の水環境の保全に取り組んでいます。
私が環境問題に関心を持った原点は、高校時代に「砂漠化を防ぎたい」と考えたことでした。その後、アメリカでの研究生活でエバーグレーズという大湿原の環境修復プロジェクトに関わり、水環境を守ることの重要性を痛感しました。近年、湖沼では「富栄養化(水中の栄養分が増えすぎること)」が進み、水底の酸素不足や、栄養分の多い泥の堆積が深刻な問題になっています。どうすればこの環境を修復できるか。そう考えていたとき、水中に極めて微細な泡を送り込む「ナノバブル」装置や、泥をひとまとめにする「凝集剤」を開発している企業の方々との出会いがありました。この出会いが大きな転機となり、現在は、ナノバブル技術で酸素不足の水域を改善するとともに、凝集剤を使って水を汚す原因である湖底の泥を集め、資源として利活用する「水質改善」と「資源循環」を両立させる研究を進めています。
これらの研究を通じて、陸・川・湖をつなぐ物質循環の仕組みを理解し、豊かな水環境を未来に引き継ぐための具体的な方法を探っています。

仲間とともに、自然を相手に世界の課題解決に貢献

この研究の魅力の1つは、フィールド調査を通じて、普段の生活ではなかなか見ることのできない自然に触れられることです。湖や湿地などの現場に足を運び、水や泥、生き物、そして季節の変化を肌で感じながら研究できる点に大きな面白さを感じています。
また、自然環境の中で起きている現象はとても複雑で、簡単には答えが見つかりません。しかし、調査や分析を積み重ねる中で、これまで知られていなかった自然の仕組みを見出した時には、何事にも代えがたい喜びがあります。自然を相手にする研究は、決して1人ではできません。同じ目的を持つ研究者や学生、企業の方など、多くの方々と知恵を出し合いながら1つの課題に向かって取り組めることも、この分野ならではの魅力です。
自分たちの研究成果が、将来の水環境の修復や保全、資源循環の新しい方法へと繋がり、地域や世界の課題解決に貢献できることが、この分野に取り組む意義であり、大きなやりがいになっています。

豊かな人生の土台となる夢という「羅針盤」

複雑な課題に挑み、夢を実現するためには、家を建てるときの基礎工事のように「基礎学力」が重要です。受験で学ぶ内容は、大学での専門的な学びの土台となり、物事を考えるための「言葉」となって思考を深めてくれます。言葉が増えるほど世界が広がり、簡単には答えが出ない問題にも根気強く向き合う力が養われます。そして深く考える力がつくほど、自分の進む道を納得して選び取れるようになります。学問に向き合うときは、新しいことを知る楽しさや深く考える面白さをぜひ大切にしてください。
北里大学には「開拓」「報恩」「叡智と実践」「不撓不屈」という建学の精神があります。支えてくれる人への感謝を忘れず、知識を実践につなげ、困難に負けず努力する。これは私も大切にしている心構えであり、こうした向上心を持つ皆さんと共に学びたいと願っています。夢は前に進む力であり、道を示す羅針盤です。その夢を育てるために、高校時代は静かに本を読み、自分と向き合う時間も大事にしてください。「素晴らしき友」である本との出会いで世界を広げ、自分が大切だと思えるもの、美しいと感じるものに真っ直ぐに向かい、様々なことに挑戦してほしいと思います。その経験の日々が、豊かな人生と未来の夢を形作る大切な土台になるはずです。

眞家先生からのメッセージ

「がんばって」という言葉は、無理をしてほしいのではなく、「自分をもっと好きになるために」という想いが込められていると考えてみてください。どうしようもなく疲れたときには、休むことも「がんばる」のうちです。泣きたくなったときには、泣くことも「がんばる」のうちです。大好きな友達を応援するように、自分自身のことも応援してあげてください。
受験勉強も「我慢してやっている」のではなく「自分が選んで取り組んでいる」と捉えてみてください。一歩一歩、山を登るように毎日を積み重ねていけば、ふと振り返ったときに今まで見たことのない景色が広がっているはずです。皆さんの挑戦を心から応援しています。

(取材日:2026年6月)

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