豊かな社会に、なぜ貧困は存在するのか?
――「最低限度の生活」を保障する方法を考える
日本女子大学 人間社会学部 社会福祉学科 教授
岩永 理恵 先生
学びがもたらした視点の変化
日常の風景に「貧困」を見た日
私は、日本の貧困問題とその対策について、現状と歴史の両面から研究しています。きっかけは大学2年生の頃、社会福祉学科で貧困問題に出会ったことでした。当時、私が通学で通過する新宿駅の西口には、多くのホームレス状態の方が段ボールで寝泊りしていました。日常の光景として目にしていたはずなのに、本当の意味での「貧困」が見えていなかった自分にハッとし、愕然としました。
社会福祉において貧困は、古代からある「古くて新しい問題」と言われます。これほど豊かな社会になったのに、なぜ貧困問題は解消されないのか。学生時代に感じたその素朴な疑問を出発点に、生活保護制度をはじめとする対策がどのようにつくられ運用されているかを検証し、人々の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する方法を考え続けています。
社会を根底から見つめ直し、問題を解決する
貧困問題は、自分たちが生きる社会の「闇」や「病気」を見せつけられる側面があり、知らなければ気楽に生きられたのにと思う人もいるでしょう。私自身、そう思うこともあります。
一方で、誰もが気楽に生きられているわけではなく、私たちが普段感じている「気楽に生きられない感覚」も、実は貧困問題とつながっている部分があるのです。
社会福祉の研究は、個々人が日常で覚える違和感と結びつけて理解を深めることができます。私たちが生きている社会を根底から見つめ直し、単に分析するだけでなく「問題を解決しよう」という意思を持つところに、この学問の大きなやりがいと魅力を感じています。
日常の「違和感」を言語化し、社会を生き抜く力へ
社会福祉は幅広い社会問題に向き合う学問です。だからこそ、個人的なことから社会的なことまで、自分の身の回りの些細なことに対して「違和感」を覚える人たちにぜひ来てほしいと思います。とくに日本女子大学では、女性としてのアイデンティティに関わる違和感を言語化する力を養い、卒業後の人生を力強く生き抜く糧にしてほしいと考えています。
また高校時代には、自分と異なる年齢や世代の人たちと触れ合う機会を持つことをおすすめします。社会福祉は多様な人生の段階や生活状況にある人たちと関わるため、そうした経験が大学での学びを助けてくれるはずです。
広く基礎的な知識が学びの土台になる
大学受験での学習内容は、大学で深く学ぶための重要な基礎・土台になります。私自身の反省として、受験では日本史を選択し、世界史は深く学びませんでした。しかし、今になって世界史の知識の必要性を強く感じています。最近『福祉の世界史』という書籍の中で、現代の日本史パートの執筆に携わったり、発刊後に他の方の論考を読んだりする中で、改めて世界史の魅力を感じました。日本のことを本当に理解するためにも、世界史の幅広い知識が不可欠だと痛感しています。
自分が受験科目に特化しすぎた学習をしたことを少し後悔しているからこそ、皆さんには、目先の受験にとらわれすぎず、高校での学びを通じて広く基礎的な知識を身につけてほしいと思います。
岩永先生からのメッセージ
私は高校生、とりわけ受験生の頃は無気力でした。それだけ辛く、負荷の大きい時期だったのだと思います。当時を振り返って「やっておけば良かった」と思うのは、身体を動かしてリフレッシュすることです。頭を使いすぎると身体だけでなく心まで疲れてしまうので、意識して身体を使う時間を作れば良かったな、と今になって思います。ちなみに、現在はピラティスをやっていて、すごくおすすめです。
大学は、皆さんが想像しているよりずっと楽しいところです。どうか受験で力尽きてしまわずに、元気に入学してきてくださることを心から願っています。









