横浜国立大学 大学院環境情報研究院 村井 基彦 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

海にモノを浮かせる技術で
海の有効活用に貢献する

横浜国立大学大学院 環境情報研究院 人工環境と情報部門 教授
村井 基彦 先生


海の可能性を引き出すために
不可欠な技術を研究する

私の研究分野は「海洋工学」、海を使うことやその技術について考える学問です。なかでも「海に浮かぶものの波の中での運動に関する研究」を主に専門にしています。扱う対象は、どちらかといえば“船じゃない浮いているもの”で、浮体とか、浮体式○○―例えば、浮体式海上空港、浮体式洋上風車、波浪発電システムなどが該当します。浮体が浮くことの何が大変なんだと思う人もいるでしょう。実は浮かせるだけでも案外大変なのですが、安全に浮く、快適に浮く、確実に浮く、などの「○○に」の部分が課題になります。浮体によって求められる役割は異なり、浮体式風車などでは「できるだけ揺れにくくなるように」浮くこと、波浪発電の場合は「できるだけ揺れてかつ安全で安定してできるだけ発電できるように」浮くことが求められます。原理的には計算できるのですが、何せ対象となるものがでかい。例えば最新の浮体式の洋上風力発電システムでは、水面上でも250mを超える高さがあり、水面下でそれを安定して浮かせる浮体は、水面上のモノよりも規模が大きくなる。氷山の一角という言葉がありますが、文字通り、水面上の一角を支える水面下の部分の最適化や効率化のようなことが私の主な研究対象です。海の可能性を引き出すためには不可欠な技術に関する研究です。

「空港を浮体式にできるか?」
という大学院生時の研究課題が
今の研究テーマへとつながっている

自分が高校生だった昭和末期は、横浜のみなとみらい地区やお台場の埋め立てが非常に盛んでした。海や港での釣りが好きだったこともあり、「人が便利に暮らすために、海を埋め立ててばかりで良いのか?」という漠然とした不満を当時から少し持っていたと思います。
今の研究テーマを扱うことになったのは、大学院生の時に、「関西空港を浮体式にすることは可能か?」という大きな研究課題に携われたことがきっかけです。kmを超えるサイズの浮体が海に浮かんで滑走路として機能するかという視点から、その浮いている滑走路が波の中でどのように揺れ曲がるのかを計算する手法を考え、研究成果として発表した経験が大きく影響しています。大きなものを海に浮かべるということは、海の環境を考える必要性に加え、海を別の形で使っている多くの人や社会と理解し合うことが大事で、それらを肌感覚として認識できたことが、今でも自分の研究視点の強みになっているんじゃないかと思います。

「見る海」から「使える海」に
どうすれば海を大衆化できるか?

日本は国土の10倍以上の海の広さを持っているにもかかわらず、海洋工学を専門とする研究者は多くない。レアなことは、モチベーションにもつながります。それで、何故レアかというと、見方によるかもしれませんが、海を使う技術は宇宙に行くための技術よりも乗り越えなくてはならない課題が多いゆえに、技術のハードルが上がるからなんです。
でも日本のEEZ(排他的経済水域)はみんなの財産なはずで、一人当たりの海の広さを考えると、200m×200mぐらい持っていることになります。家族3人なら、野球場でいえば10面ぐらいの広さです。このことに多くの人が気づいて、海をどう使おうか、もっとこうしようよ、って自分事としての意見・提案がたくさん出てくるようになってほしい。
「どうすればどんな人でもできるだけ簡単にかつ安全に使えるようにできるか」=大衆化できるか。多くの人の目線が“見る海”から“使える海”に変化すれば、もっともっと社会として必要なアイデアが沸いてくると思います。私の研究でその一端に貢献できる気がする。それが大きなやりがいです。

村井先生からのメッセージ

自分で「なんでだろう?」、「こうすればいいんじゃないか」と考える習慣がついていれば、どこに行ってもどんな時代でも通用します。逆に「とりあえず公式を覚える」とか、「周りやネットが正しいというのでこれにする」という考えない習慣が身についてしまうと、なかなか時代についていけなくなります。「とりあえず覚える」は一見効率がいいように見えて、理解せずに暗記したことはあっという間に忘れてしまいます。「中学高校で学んでいる知識って、将来何の役に立つの?」という質問がよくありますが、高校までに学んだ知識の多くは、時代を超えて通用する知識です。ですので、役に立たないはずがない。ただ、学んだ知識を忘れてしまったら「役に立たない」という答えになってしまいます。知識をいつでも使える状態にしておけば、そこを出発点にして考えられるので効率が上がり、できる大人になれます。
そのために、学んだ知識や論理の引き出しを、将来いつでもスムーズに開けられるような勉強の仕方を模索してください。テストが終わってもちゃんと覚えているか、通学時間などに時々引き出しを開けられるか確認する習慣をつけると良いと思います。そのうちに、簡単に忘れない、将来も役に立つような勉強の仕方が見えてきます。皆さんの得意技にカスタマイズされた勉強の方法や工夫は、生涯の大きな財産になります。受験勉強は、その構築のチャンスだと思って、大きく構えてチャレンジしてください。

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