麻布大学 獣医学部獣医学科 齋藤 弥代子 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

人間の当たり前を動物にも。
動物のための最善を探す

麻布大学 獣医学部獣医学科 准教授
齋藤 弥代子 先生


丸い頭の犬は神経疾患になりやすい?

獣医学の中でも神経疾患に関係する研究を行っています。動物の神経疾患には様々なものがありますが、例えば「てんかん」や「椎間板ヘルニア」などがこれにあたります。
今、日本をはじめ世界各国では、頭の形が丸い犬が可愛いとされる傾向があり、丸い頭の犬同士を交配させて丸い頭の犬を増やすということが行われています。しかし、本来犬の頭は丸くないのが自然な状態ですので、頭蓋骨が丸くなることで脳がその中にうまく収まりきらず、折りたたまったり、一部はみ出したりしています。そのために、脳や脊髄の中や周りに存在する脳脊髄液という液体の流れまでもが悪くなっています。それらが、さまざまな神経疾患の原因になっていると考えられます。しかし、脳脊髄液の流れや病態との関係については、まだまだわかっていないことが多く、それらを見つけ出し新しい治療の開発に役立てるための研究を行っています。
また、人間の病気においては脳波検査も一般的な手段ですが、動物についてはMRIやCTなどの画像検査が主流で、脳波検査を臨床にてコンスタントにやっている施設は世界でも数少ないです。脳波検査はリアルタイムに脳の機能を見ることができるので、動物でも気軽に脳波検査ができるような手技の確立を目指して研究をしています。
その他、てんかんの外科治療の研究や、動物にてんかん発作が起こるとアラートが来るような特許取得済のモニタリングシステムの臨床現場導入のための研究や、動物のQOL(生活の質)の評価法の研究、どういった食べ物が不足すると認知機能が低下しやすいかなど、世界の神経疾患の動物を、予防も含めて救ってあげたいという思いで、幅広い研究を行っています。

わからないことが多いからこそ自分で知りたいと思った

獣医師を意識し始めたのはもともと飼っていた動物を病院で診てもらった時です。医学に興味があったのと、動物が好きだったことから、病気について自分ももっと知りたいという気持ちがすごく強くなりました。また、病気についてはわかっていないことも多いのだなということを実感して、獣医の道に進んでみたいと思うようになりました。神経分野を選んだのは、神経機能は病気と密接に関係しているので学問として興味深いと思ったのと、外科、内科にきっぱり分けられないところが自分の考えとすごくあっていると思ったからでした。その後、恩師の勧めもあり、神経分野の最先端の臨床を行っていたアメリカに留学をしたのですが、そこでは臨床と研究を両立している先生やスタッフが多く、それに感化され、私も臨床だけではなく、新しい治療法を切り開くための研究も行いたいと思うようになりました。現在は、大学での授業を担当しつつ、獣医の神経科医として現場で働きながら研究にも取り組んでいます。

病気の状態を利用した小型化

先ほど、丸い頭の犬同士を交配させて丸い頭の犬を増やす話をしましたが、現在ではマンション飼育や、乗車規制(キャリーケースを含めた重さが10kg以内でないと電車に乗せられない)、あるいは単に一見扱いやすそうに見えるといった理由などのため、より小さな犬が人気を集める傾向があり、小さな犬同士を繁殖させてさらに小さな犬を増やすということも行われています。例えば、チワワやヨーキーなどの超小型犬も、生まれ故郷の国では元々はるかに大きい犬でした。柴犬のオスの適性体重は9〜11kgとされていますが、ここ数年で、5〜6kgほどの個体も珍しくなくなりました。これは、成人男性の平均身長が数年のうちに170cmから120cm程度まで減少するようなもので、そうなったとしたら健常とは言い難いことが容易に想像できます。犬は病気を利用して人間が体型を変えてきた歴史があり、それが今日まだ続いている現状があります。そして同じ犬種であれば小さい方が価格が高いという矛盾が存在しています。獣医師としては、人間にとっての普通を動物にもちゃんと当てはめられるような社会になってほしいという思いがあります。

研究結果が役立ったことを学生と一緒にスピーディーに実感できる

私が行っている研究は、今現場で不足していることや、「これがあったら動物たちがもっと救われるのに」という課題を発見して解決することです。私は大学の附属動物病院でも勤務をしているので、自分の研究が直接動物たちの役に立つことをスピーディーに実感できるという点に面白さとやりがいを感じます。また、学生たちと一緒に卒業研究等に取り組んで、その成果が動物たちに貢献できた様子を学生たちが病院で実感することで、同じ喜びを共有できます。それも、私自身の大きなやりがいとなっています。

齋藤先生からのメッセージ

大学に入ると国家試験に受かるための勉強の日々になります。カリキュラムも決まっており、それだけで結構朝から夕方までみっちりです。動物が好きで、獣医学の分野や勉強が好きな人はとっても楽しいと思います。また、獣医が行うのは、医療の一種ですので単なる暗記に頼った勉強だけではなく、考える力や社会知識だとか一般常識や経験など、幅広い要素が求められます。そのために今のうちに様々なことに挑戦して経験を積むことが将来の役に立つと私は思っています。

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