千葉大学 デザイン・リサーチ・インスティテュート 桐谷 佳惠先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

LINEの使い方に性格や年齢での変化はあるのか?
デザイン×心理学の視点で考える

千葉大学 デザイン・リサーチ・インスティテュート 准教授
桐谷 佳惠 先生


デザインを学ぶ人の参考になる
「心理学」の研究

私はデザイン分野に籍を置きつつ、デザインを学ぶ人が参考にできる心理学研究を行っています。もともとは、「見る」という非常にシンプルな人の行動の研究が専門です。たとえば、錯視やだまし絵のように、私たちは実際のものとは異なるかたちを認識することがあります。人が見ている世界をあるがままに捉え、それがどのような条件でもたらされるのかを明らかにする「実験現象学」の考え方を、学生時代から重視しています。
ここ数年では、お化粧や被服の錯視効果を実験で明らかにするほか、シネマグラフ(動く写真)の面白さも説明しました。どのようなものを作れば、人はどのように見て、どのような反応をするのかを実験的に明らかにしています。これらは、デザインを学ぶ人にも役立つデータとして提供できていると思います。
最近は、若い人のLINEなどの使い方が性格と関係するのか、年を経て変化するのか、という社会心理学的な研究も始めたところです。

「おじさん・おばさん構文」の由来は
若い頃に使っていたポケベル?

LINEなどのインスタント・メッセージ・サービスは、現在では世代を問わず広く利用されています。一方、「おじさん・おばさん構文」と揶揄(やゆ)されるように、同じツールでも使う人の年齢や世代によって使い方に違いがあると世間では言われています。では、若い人たちに特有の使い方があったとして、それはどれくらい維持されるのか、疑問に思い研究を始めました。
たとえば、「おじさん・おばさん構文」とは、絵文字が多用されているものを指すようです。これらの構文を使う世代は、若い頃にポケベルでハートの絵文字に気持ちを込めていた世代と考えられます。当時は今のように様々な絵文字を入力できる環境ではなかったため、ハートの絵文字が貴重な非言語情報だったのです。彼らが絵文字を自由に使える状態になった現在、それを謳歌(?)し、そしてその行動を何十年も変えずに、LINEでも絵文字を多用し続けるというのは、不思議なことではありません。
では、現在の中学生、高校生、大学生のような若い人たちは、どのように行動を維持、あるいは変化させていくのでしょうか?現在の中学生や高校生が成長したとき、LINEの使い方は変わるのでしょうか?変わらない部分はあるのでしょうか?5年後の中学生は、今の中学生とは違うやり方でLINEのやり取りをしているかもしれないですし、あるいはもうLINEが主流ではないかもしれません。
この手の内容を調べるには時間もお金もかかるため、学術的な先行研究が少ないのが現状です。現在は、5年スパンの研究に取り組んでいます。単に毎年サービスやツールの使い方を調べても面白くないので、例えば共感性や同調性など性格特性との間に関連はあるのか、うっかりミスをしやすいなどの行動特性との間に関連はあるのかなども探っていく予定です。

見た目を整えるだけではない
「デザイン」の奥深さ

人は、一人でいるときと他者といるときとで行動が変化します。LINEなどのインスタント・メッセージ・サービスの使い方は、現代の対人行動を映し出す鏡の一つだと思います。こうしたサービスの使い方と性格・行動との関係は、モデルとして数学的に記述できるのがこの研究の面白いところですし、ここから説明モデルが得られれば、新たなサービス提案の参考にもなります。
デザインとは、ものの見た目を整える作業だけでなく、人々の生活に関わるあらゆる場面での「creation」です。人々のさまざまな行動に関するデータが、デザインをする上で役立ちます。わたしの研究は基礎心理学から応用心理学まで範囲が広いですが、そのぶん、人のあらゆる行動を考えることができ、とても面白く感じています。

桐谷先生からのメッセージ

受験勉強が辛く感じるときもあるかもしれませんが、今みなさんが勉強していることは、ちゃんと将来役に立ちます。英語の長文読解にしっかり取り組んでおくと、大学生になって苦なく英語の研究論文が読めます。英単語の暗記は単調でつらい作業かもしれませんが、しっかりみなさんの語彙を増やしてくれます。数学も、例えば線形代数は大学で心理学を勉強するときに役立ちます。受験勉強は大学に受かるためにするのではなく、その後の勉学を支えるためのものと考えてください。
私の場合、世界史もとても役に立ちました。20代後半に研究のためイタリア留学をした際に、街中にある遺跡の話を振られても「あのことかな」と理解することができました。
受験勉強、侮れませんよ。勉強したことは、ちゃんとみなさんの身になります。しっかり勉強して、大学に来てください。一緒に面白い研究をしましょう。

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