同志社大学 理工学部 遠藤 太佳嗣 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

潜在能力が高い「イオン液体」の本質を
研究により明らかにしていく楽しさ

同志社大学 理工学部 機能分子・生命化学科 准教授
遠藤 太佳嗣 先生


イオン液体が、なぜセルロースを溶かすのか

私は「イオン液体」と呼ばれる物質の研究をしています。正イオンと負イオンからなる塩(えん)は、例えば食塩に代表されるように、一般的に非常に高い融点を持ちます。しかし塩(えん)の中に、何故か融点が著しく低く、室温で液体状態のものが発見されました。それをイオン液体と呼びます。このイオン液体に関する研究テーマとしては、例えば、「塩(えん)のくせに、どうして融点が異常に低いのか」といったイオン液体の根本に関わるものがあります。あるいは、イオン液体とセルロースの研究も進めています。セルロースは、植物の主成分で、難溶性の物質なのですが、イオン液体のいくつかは、何故かセルロースをかなり溶かすことが出来ます。セルロースを溶かすことが出来ると、プラスチック製品や燃料に変換することが出来るため、いつかは枯渇するであろう石油の代替資源になることが期待されています。私の研究室では、なぜセルロースを溶かすのか、セルロースはイオン液体中でどうなっているのか、についての研究も進めています。

約20年研究しても飽きない「イオン液体」

私は元々工学部に所属しており、修士課程までは光で反応する材料の開発をしていました。しかし、もっと良い性能の材料を作ることよりも、たとえ性能が悪くても、その材料で一体何が起きているのかが知りたくなり、博士課程から理学部に移りました。博士課程でも初めは超臨界流体と呼ばれる物質の研究をしていたのですが、当時の指導教員から、「イオン液体の研究もやってみない?」と言われ、始めたことがきっかけです。ですから、簡単に言えば、「言われたからやった」ことになります。セルロースも同じで、博士課程を修了後、研究員として所属した研究室での研究プロジェクトとの関わりで始めなければいけないことになりました。このように、始めた理由は全くの受動的なものでしたが、論文を調べていく中で、分かっていなことがたくさんあることに気づき、実験を進めていく中で、「これは世界初の面白い研究成果だ」と思えるような研究をいくつかすることが出来ました。と同時に、次々と新しい疑問が生まれ、気づけば20年近くイオン液体に携わっています。

100年以上前に発見された物質の
未知の部分を解明する楽しさ

イオン液体の面白さの一つは、まだ分かっていなことがかなりあることだと思います。イオン液体の最初の発見は、実は100年以上前のことなのですが、イオン液体の研究が世界的に進められ始めたのは2000年前後のことです。つまり、水や有機溶媒などの他の液体と比べれば、かなり歴史は浅く、未知の部分がまだまだあります。とは言っても、この20年くらいで分かったこともたくさんあり、それらがイオン液体の2つ目の面白い点だと思います。セルロースを溶かす以外でも、例えば、イオン液体は蒸気圧がほとんどないので、宇宙のような真空下でも使える液体だということが分かっています。また、大気の中には、地球温暖化の原因と言われる二酸化炭素がごくわずかに含まれていますが、イオン液体の多くは、大気の中から何故かこの二酸化炭素を選択的に吸収します。さらに、生体とも相性が良く、薬やタンパク質の保存剤としても使えることが報告されています。このように、「潜在能力は高いけれども、分かっていないことが多い物質」を、根本的に理解することが、私の研究の面白さでしょうか。

遠藤先生からのメッセージ

私自身は受験期に後悔があります。勉強よりも休憩時間の方が長く、ベストを尽くしたと思えるほどの努力が出来なかったからです。結果、第一志望の大学には落ちてしまいました。ただ、第二志望で入った大学では、人生を変える素晴らしい出会いがいくつかあり、幸運にも、第二志望の大学で良かったと思える人生になっています。しかしそれでも、受験期にサボってしまったこと、知識や力を十分に付けられなかったことへの後悔は消えません。受験勉強は難行苦行だと思います。しかしだからこそ、結果はどうであっても、やり切った後には残るものがあると思います。どうぞ、後悔のない受験期を過ごしてください。

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