同志社大学 理工学部 化学システム創成工学科 塚越 一彦 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

ミクロ世界で起こる現象を体系化し
新たな技術に展開する

同志社大学 理工学部 化学システム創成工学科 教授
塚越 一彦 先生


微小空間でしか起こらない
流れる溶液の二相分離

微小(ミクロ)空間の世界では、常識では考えられないような出来事が起こります。私たちが発見した「相分離混相流」も、その1つです。直径50~100ミクロン(0.05~0.1mm)程度(髪の毛程度)の細い管を流れる溶液に、一定の圧力をかけたり温度を変化させたりすると、溶液が管内の中心部とその外側に同心円上に分離し、2つの流れに分かれます。その結果、内側の流れと外側の流れの間には、水と油の間で生じるような界面が生じます。圧力や温度を変えるだけで流れる溶液が二相に分離するこの「相分離混相流」は、同じ溶液をより太い管に流しても起こりません。あくまでミクロな流れの中でだけ起こる現象なのです。このミクロな流れを使って分離や抽出、混合、化学反応を行うと、芋づる式に不思議な現象が見えてきます。

歴史が浅い研究領域だからこそ
無限の可能性を秘めている

ミクロな流れを身近なところで考えると、動物の血液の流れや植物の道管・師管の中の水分、養分の流れをあげることができます。このような生体中の流れは、生命を維持するため極めて優れた輸送や循環の機能を持っています。生命体は驚くほど太古の昔からミクロな流れを制御し、それを改良、発展させることで、進化の過程を歩んできたといえます。
一方、工学的な立場から見ると、ミクロな流れの研究は歴史的に浅く、19世紀まで待つことになります。自然界に存在する生体中の流れが洗練されかつ高度化された機能を持っていることと比較すると、人工的に取り扱うことのできるミクロな流れに関する知識や技術は未だ貧弱さの域を逃れられません。しかし、見方を変えれば将来の研究課題として魅力的であり、無限の可能性を秘めた研究領域と捉えることもできます。

シンプルな現象の発見ほど
裾野が広がる面白さ

私は長らく微小(ミクロ)空間の流れに興味を持っており、1995年、同志社大学へ着任した際、それを扱う研究を立ち上げて関連する技術や知識を培ってきました。そして2009年、偶然「相分離混相流」の発見につながる現象に出会います。興味を持ち続けるということは大切なことです。「相分離混相流」の発見は、文字通り0から1の発見でした。この新たな現象を学術的な視点から体系化していくことで、その中から、また新しい発想が芽生えます。その1つがクロマトグラフィーと呼ばれる分離分析手法への展開です。
クロマトグラフィーは世界で最も広く使用されている汎用分析機器の1つで、1903年にロシア人のツヴェットにより、その原理が発明されました。その分離手法は、順相モードと逆相モードの2つあり、それぞれがノーベル化学賞を授与されていますが、私たちはこれに「相分離混相流」を導入し、新たに「相分離モード」を提案しました。「相分離混相流」の発見、その学術的体系化、さらには市販汎用機器への応用に進めていく。このように、シンプルな現象の発見ほど裾野が広がる、それが研究の面白さであり、やりがいです。

塚越先生からのメッセージ

日頃から「疑問のポケット」を準備しておきましょう。その場で理解できないこと、何か疑問に思うこと、少しでも不思議だと感じることがあれば、すべてそのポケットに入れておくのです。そして、時々ポケットから出して考えてみましょう。それでも答えが出なければ、再びポケットにしまっておきましょう。このように、考える練習を繰り返していれば、自然に思考力が身につきます。また思考力を養うには、棒暗記しないことも大切です。むやみに覚えるのではなく、考えて理解したことを頭の中に残すようにしましょう。「疑問のポケット」を使って繰り返し考えた結果、自然に記憶に残るかたちがいいと思います。私も「疑問のポケット」を愛用しながら、学生さんとともに、明るく、楽しく、世界を意識して、教育・研究に取り組んでいきたいと思っています。

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