弘前大学 理工学研究科 梶田 展人 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

化石の分析を通して
46億年に及ぶ地球の履歴書を書く

弘前大学 理工学研究科 助教
梶田 展人 先生


地層に保存された化石を用いて
地球環境変動を復元する

「地球の履歴書を書くこと」が、私の仕事です。地球環境が激変しつつある現在、正確な将来予測を行うために、気候や生態系が変化するメカニズムを解明することが求められています。しかし、46億年に及ぶ地球の歴史に対して、人類が持つ文字記録は古くても過去数千年、正確な海水温や気温といったデータ記録になるとわずか数百年~数十年分しかありません。この手持ちのデータだけでは、複雑かつ長周期なコントロールファクターによって駆動されている環境変動のメカニズムを正確に検証することができません。そこで私は、地層に保存されている様々な化石を用いて、過去数千年~数百万年にわたる地球環境変動を復元する研究を行っています。化石といっても、多くの方が想像されるような動物の骨や貝殻ではなく、顕微鏡でしか見られない小さなプランクトンや、生物に含まれる有機化合物、さらにはDNAなどを分析しています。これらの情報を上手く組み合わせると、観測記録の無い大昔の気温や水温を正確に知ることができ、さらにその環境下でどのような生物が暮らせていたのかも明らかになります。これにより、地球上における気候変動や生態系変動の“本質”を見出すことができます。

自然界には単一解を導くことが難しい課題がたくさんある

私は幼少期より、野外で遊ぶのが好きだったので、漠然と自然を相手にした仕事がしたいと思っていました。また、たまたま学校の勉強も得意だったことや、体が小さかったこともあり、力仕事というよりかは、頭も使える仕事が良いな、とも考えていました。転機は、中学3年生の時に沖縄で参加した「アジア青年の家」という内閣府の事業でした。アジア各国から集まった若者たちと1週間ほど沖縄で合宿し、自然や文化のサステナビリティに関して意見を交わしました。その中で、沖縄の美しい自然に触れ、この自然がどのようなメカニズムで駆動されているのか、将来にわたって環境を維持するにはどうすれば良いのか、真剣に考えました。中学生の知識では、もちろん太刀打ちできるような課題ではなかったですが(研究者になった今でも簡単ではない)、テスト勉強とはまた質の異なる、単一解を導くことが難しい課題が自然界にはたくさんあることに強い興味を持ちました。
大学入学後は、ダイビングのライセンスを取得したり、登山部に入ったりして、さらに自然現象への好奇心が強くなるとともに、体力もついてきました。将来の進路を考えた時、都会のオフィスでお金のために働くのではなくて、自然を相手に自分が不思議だと思ったことを追究したいと考え、地球科学の研究者を志すことにしました。

見つけた化石の分析結果は常に世界初

私のような、生物・化学的手法を使って地質試料を分析する研究分野では、これまでに誰も知らないデータを自分の手で生み出せる点が魅力です。自分で探してきた試料から化石を見つけて分析すれば、それは常に世界初なのです。これを手にするときは、いつもとても興奮します。既存データを解析することによって、新規的な知見をもたらすことができる数学・物理学系の研究とはこの点が大きく異なります。
また、大学教員は独立すると、自身の研究テーマについて指示を受けることは殆ど無く、利益を追求することも求められません。自分の解き明かしたい課題を自ら選んで、自分で仲間を集めて、取り組むことができます。国立大学の所属であれば、公務員に近い身分でありながら、大きな裁量を持って仕事を行うことができます。

梶田先生からのメッセージ

「頑固者は苦労するが、最後に勝つのは頑固者」
私は高校3年生の時、第一志望の大学の模試判定は常にA判定でした。しかし、合格することができませんでした。受験は、油断せず、最後まで気を抜かずにやり抜くことが大切です。もちろん、志望大学には合格したほうが良いですが、合格しなくても卑屈にならず努力すれば、次の新しい道が拓けます。そうすれば、過去の失敗も人生の糧とすることができます。大切なことは、今この瞬間を大切に、将来に希望を持って、何事も一生懸命やることです。
以下は、研究者を目指す方へのメッセージです。研究は総合力が必要ですから、できるだけ苦手科目を作らず、多くの分野を勉強してください。研究者になるには理数系科目のどれかが突出していれば良いように思われるかもしれませんが、私は国語と英語が極めて重要だと感じています。研究の基礎になる情報が記載されている先行研究のほとんどは英語で書かれていますから、英語にアレルギーがあると、とても苦労します。また、自分の研究を人に分かりやすく伝える国語力も、論文を書いたり研究費を獲得するためには、必須の能力になります。ぜひ、文系科目にも精力的に取り組むようにしてください。

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