北海道大学 低温科学研究所 青木 茂 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

地球温暖化と南極の氷の流れ出しの関係は?
未知の領域を解き明かすべく船で現場を実際に訪れる

北海道大学 低温科学研究所 准教授
青木 茂 先生


南極はまだまだ未知の領域
南極海と海水位の上昇の関係を解き明かしたい

私は、南大洋(南極海)の構造とその時間的な変化を、特に船を使って現場で観測することで明らかにする研究をしています。私たちの住む地域からは遠く離れた南極まわりの海ですが、地球の気候には大きな役割を果たしています。南極まわりの海は世界の大洋の底を占める水である南極底層水というものを産み出します。南極まわりのこの4,000メートルを超えるような深さの海の底を観測してみると、ここ数十年で水温が温かくなったり、塩分濃度が低くなったり(真水の成分が増えている)と変化していることが分かったのです。しかし、この原因はまだ分かっておらず、将来の予測もできないのが現状です。
また、南極の氷床が海に流れ出すと、地球の平均海水位があがります。最近では、人工衛星をつかった観測で氷の流れ出しが加速している場所がみつかっています。海が氷を融かすことが一因なのではないかと言われていますが、実際にはどう関わっているのか、そもそも海の底がどのようになっているのか、いわゆる地球温暖化とこれらの変化がどのように関係しているのかはまだよく分からないことが多いのです。
こうした事柄を調べるために、船をつかって氷床と海が接する現場の海で得られる証拠を探す研究をしています。

未知の世界に面白さを感じて南極観測をする研究所に

学生のときには太平洋の研究をしていました。研究者の仕事を探しているうちに、国立極地研究所という南極観測を運営している研究所で働くことになりました。その当時、南大洋のことは自分が知らないだけではなく、世界でもまだよく分かっていなかったので、面白いことがたくさんありそうだ、と興味を惹かれました。
過去に何十年と南極観測で地道に取りためてきたデータを調べているうちに、限られた場所ですが、海洋の中に温まっている部分があることを発見して非常に驚きました。
それ以来は海の中の変化を研究するようになりました。

南極の自然の美しさ、壮大さは素晴らしい
しかし一筋縄ではいかないところが魅力

この研究の魅力は①対象としているもののスケールが大きく、また美しいこと、その一方で人間の社会生活とも関わり合いをもつこと。②大規模な現象が比較的単純なメカニズムで起こっていること。ただ、因果をつきつめようとするとどんどん奥が深くなり、それほど簡単ではないこと。③一緒に研究する仲間やライバルから学ぶことが多いところ。の3つだと思っています。
①について、南極の自然の壮大さや美しさを言葉にするのは簡単ではありません。これは是非、多くの皆さんに実際に感じてもらいたいところです。皆さんにとって南極は「非日常」かもしれませんが、今の人間の社会規模からすると、もはや聖域とは言えません。少し長い眼でみたときに、南極の環境が持つ地球規模の影響力にはとてつもなく大きなものがあり、そうしたものの解明に取り組むことは非常にやりがいがあると感じます。
②について、風が海流を起こしたり、暖かい水が氷を融かしたりといったことは基礎的な物理法則に従っておきる現象ですが、それらが組み合わさって生じる現象を自分でみつけたときの感激はひとしおです。一方で、大気は海の影響をうけていたり、氷床の融け水は海水の密度をかえたりと色々な現象が相互にかかわりあって起きますし、南極で起きている現象は、南極以外の遠いところからの作用の影響を受けていたり、逆に南極から遠くまで影響が伝播したりといった複雑な影響があります。応答の時間スケールも一様ではなく、因果を完全に解きほぐせた、とはなかなかいかない奥深さも魅力なのかもしれません。
③については、現場に実際に足を運ぶと、思いがけないピンチに見舞われることもあります。ところが面白いことに人間には色々な特技があるもので、ありあわせの材料で機械の故障を直したり、ありあまる腕力で解決したり、と不思議と何とかしてしまう人が誰かしら周りにいるものです。そのようなことを幾度か経験するうちに、自分の未熟さを知るとともに、他人をリスペクトする姿勢が身につきます。

青木先生からのメッセージ

地球は、私たち個人が感じるには非常に大きなものですが、社会全体として捉えると大きすぎる訳ではありません。様々な事柄や問題が地球規模で結びついているのです。小さくまとまらずに、ぜひ広い視野を持って、色んな角度から物事を考えて、自分が納得のいく答えを出してください。
未来はあなた方のものです。ぜひ自分のやり方や得意なことを見つけ出してください。

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