慶應義塾大学 理工学部 応用化学科 奥田 知明 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

人間の早期死亡の要因が
「大気汚染」にならないようにするために

慶應義塾大学 理工学部 応用化学科 教授
奥田 知明 先生


大気中の粒子はなぜ有害なのか
未だ解明されていない謎を独自の手法で解く

私たちの研究使命は「環境媒体(主に大気)と人間の健康を結ぶ事象について、何らかの新たな知見を得て、世界の人々の、より健康的な生活に貢献する」ことです。研究内容は多岐にわたりますが、今回は4つの主な研究内容をご紹介します。
1つ目は、「粒子状物質の有害性評価」です。PM2.5のような、大気中を浮遊する粒子をエアロゾルと呼びますが、それは人が吸い込むと健康に悪影響を及ぼすことが懸念されています。しかし、大気粒子の有害性を決めている要因が何であるのかは、まだ解明されていません。当研究室では、独自性の高い様々な手法を用いて、有害性の謎を解く鍵を探しています。
2つ目は、「粒子状物質の帯電状態」です。大気粒子の有害性を調べる上で、粒子を構成する化学成分を調べることは重要です。一方で、有害な化学成分を含む大気粒子を吸い込んだとしても、それが気道など身体にくっつかなければ人体に有害とはなりません。ここで「電気を持っている粒子は、持っていない粒子に比べて気道へのくっつきやすさが数倍違う」という報告があることから、大気中の粒子の帯電状態を測定する装置を自分達で手作りしながら研究を進めています。

科学的根拠のある
環境対策で世界に貢献

3つ目は、「大気環境研究の世界展開」です。近い将来、人間の早期死亡をもたらす最大の環境要因は大気汚染となり、その中でも特にエアロゾルによるものが最も深刻となることが予測されています。世界では、環境への配慮を欠いた急速な開発などの原因により、大気汚染の問題がますます顕著になってきています。このような状況を鑑みた時、過去半世紀以上にわたる公害の時代を克服して現在の比較的清浄な大気環境を手に入れるに至った日本の大気環境研究者が、世界の国々における大気汚染の克服に対して何らかの積極的な行動を起こすことは、全世界的な人類の生活の質の向上に大きく貢献することになると私は考えています。
4つ目は、「超実践型人間環境化学社会実装プロジェクト」です。環境対策がコストと考えられていた時代は既に過去のものとなっており、現在では国連の提唱する「持続可能な開発目標」(SDGs) を強く意識した社会のあり方が求められています。その一方で、科学的根拠や効果の具体性が不明な「環境対策」も横行しています。当プロジェクトでは、実験的根拠に基づいた環境化学の知見を最大限に活用し、真に豊かな人間社会への実装を志向した様々な産学連携を実践しています。直近では、新型コロナ対策としての換気対策の提言や調査、マスクの効果についての実験などを実施し、メディアを通じた情報発信も積極的に行っています。

世界の様々な分野と共同し
問題解決に向かっていく

産業革命以降の環境問題を考える際には、人間の活動による影響を必ず考慮する必要があります。環境問題は日本だけの問題ではありませんので、世界の多くの人々と交流しながら研究を進められることも魅力です。当研究室でも、世界各国の大学との国際共同研究の実績があり、留学生の出身地も多岐にわたります。環境化学の分野は、純粋な科学とは異なり、科学だけでは決して解決しないところ、多くの人が、それぞれの得意分野を持ち寄って問題解決に向かう、その研究の進め方自体がとても面白いと感じます。一方で、環境問題の解決に科学が必ず必要になることもまた重要なことです。私は小学生くらいの時から漠然と人の役に立ちたいと思っていて、環境問題に興味があったこと、高校時代に化学が好きだったことから、自然に環境化学という分野に進むことになったように思います。自分の研究が身近な環境問題の解決に直接役立つ場面が多いことにも、やりがいを感じています。

奥田先生からのメッセージ

いわゆる「難関大学」を目指す方も多いと思いますが、究極的には「どこで学ぶか」よりも「入学した大学で、何を、どのような姿勢で学ぶか」の方が圧倒的に大切だと思います。私自身、いわゆる旧帝大や早慶といった大学の出身ではありませんが、それでもそれなりに大学教員として、また研究者として頑張れていると思います。大学入試では「ミスをしない」ことが大事になるのかもしれませんが、人生においては「ミスを恐れず新たなことに挑戦する」マインドの方が余程価値あると思います。「新しいことを知ること」「自分で考えたことを試してみること」が何よりも楽しい、そのような気持ちを心のどこかに忘れずにいてください。

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