北九州市立大学 法学部 水野 陽一 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

「公正な裁判とは何か?」と
「AIの法的コントロール」に共通すること
―人権保障の正しいあり方を考える

北九州市立大学 法学部 法律学科 准教授
水野 陽一 先生


冤罪を生み出さないための
公正な裁判とは何か?

「公正な裁判とは何か?」というテーマで研究を続けています。研究分野を選ぶきっかけは、ドイツ留学でした。ドイツでも当然に犯罪捜査・訴追の重要性は認識されていますが、それによって対象者の人権保障が損なわれてはいけないということが徹底されており、人として生まれながらに認められる人権を大切にするという考えが、ドイツ一国にとどまらずヨーロッパ全体の問題として普遍的なものとなっていることに感心したことを思い出します。 このように、ヨーロッパでは、いかなる場合でも全ての者の人権保障が徹底して実践されなければならないと考えられており、刑事裁判でもそれは同様です。裁判で有罪が確定されるまで無罪推定が働くという前提のもと、被疑者・被告人の権利保障の拡大が行われてきました。日本の警察や検察は優秀ですが、それでも冤罪が起こることはあります。真実の発見も重要ですが、それに増して重要なのは刑事裁判で冤罪を生み出さないことであると考え、公正な裁判の意味を考え続けています。

AIの問題も人権保障に
深く関わっている

最近は人工知能(AI)の法的なコントロールについても研究しています。AIは人の暮らしを豊かにしますが、その一方で人の仕事を奪う可能性などデメリットが存在することが指摘されてきました。人間中心のAI原則は、AIシステムの利用の際に世界中で重要であると考えられていますが、“人間のためのAI”の実現にとって法的なコントロールは有効な手段です。例えば、EU委員会がAI規制法を世界に先駆けて採択しました。その中心にあるのは、個人の尊重、尊厳保障であり、日本国憲法でも個人の尊重原理は最も重要な原則であると考えられています。このように、AIの問題も人権保障に深い関わりを持っているのです。ここ数年、AI開発を行う企業と共同研究を行ってきました。例えば、スマートフォンを通じて人の位置情報が取得され、人々は地図アプリなど便利なサービスを享受しています。ところが位置情報を継続して取得しAIによる分析を行うことで、対象者の趣味嗜好はもちろん、性別、年齢、職業などを高確率で予想することなども可能となっています。この手法を警察が用いると、捜査の効率は飛躍的に高まると思われますが、対象者への影響はより大きなものとなることが考えられるわけで、過度な侵害を個人に与えないように法的なコントロールが必要となるわけです。

「机上の空論」が
問題を解決することもある

「机上の空論」という言葉もあるように、現実の社会で役に立たない理想ばかりをいうことはあまり良いことではないかもしれません。ただし、現実社会で起こっていることだけを重視し、理論的に正しいことを軽んじて現実に起こっている問題を放置することが許されてはいけません。法理論的に正しいこととは何かを追求することで、現実社会の問題を顕在化させ、現実で起こっている問題を解決できる可能性に魅力を感じています。

水野先生からのメッセージ

大学での学びや生活はとても楽しいものです。大学の場所、立地、施設なども大学選びの重要なところであるとは思いますが、大学で教える先生がどんなことに関心を持っているのか、そこから皆さんが何を学ぶことができるのかということは、将来皆さんがする仕事内容や生活にも関わってくる重要なことだと思います。良い仲間、良い先生と出会えるように、後悔の少ない大学選びをしていただければと思います。

関連情報

学部から探す

大学の学問系統別にご紹介しています。さっそく興味のある学問から読んでみましょう。

四谷学院の「ダブル教育」
四谷学院について詳しくはこちら
個別相談会はこちら
資料請求はこちら

ダブル教育とは?

予約コード17GJWAZ

『学部学科がわかる本』冊子版をプレゼント

予約コード17GJWAZ

ページトップへ戻る