北見工業大学 工学部 地球環境工学科 亀田 貴雄 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

雪と氷に関する研究
~「南極地域観測隊員になりたい」という夢を追いかけて~

北見工業大学 工学部 地球環境工学科 環境防災工学コース 教授
亀田 貴雄 先生


雪と氷について3つの研究を実施しています

私は雪と氷に関して、大きくわけると3つの研究をしています。1つ目は地球温暖化が雪氷圏に与える影響の解明です。1800年代後半より気温が世界的に上昇しています。これを地球温暖化といいます。気象庁によると、日本では1898年から2020年までの間に年平均気温が1.26℃/100年上昇したと報告されています。この気温上昇により、北極海の海氷面積や世界中の氷河面積が減少し、国内ではオホーツク海の年最大流氷域面積の減少、日本海側地域での年最大積雪深の減少が報告されています。ただし、地球温暖化に対して、日本の多様な雪氷圏(積雪深、湖の結氷、山岳域の多年性雪渓)の変質は必ずしも充分には解明されていません。このようなことを背景として日本の多様な雪氷圏の変動を解明する研究を実施しています。
2つ目はカーリングのストーンが曲がるメカニズムの研究です。カーリング競技では選手はストーンを回転させながら投げます。この時にストーンを時計回りに回転させるとストーンは右に曲がります。ストーンを反時計回りに回転させると左に曲がります。ストーンを無回転で投げると、ストーンの軌跡は不安定になります。カーリング競技ではストーンが曲がることを利用して、選手はストーンを投げています。ただし、ストーンが曲がる理由についてはこれまでにも多くの学術論文が出版されてきましたが、未だ完全には解明されていません。また、カーリング競技で選手がブラシを使って氷面をこすっている動作(スウィーピング)を見たことがある人も多いと思います。スウィーピングはストーンの軌跡を微修正することを目的としています。ただし、スウィーピングによりなぜストーンの軌跡が変化するのかについても完全には解明されていません。このため、これらの課題の解明を目指して、研究を進めています。
3つ目は百畳敷洞窟の氷筍の研究です。北海道南部、洞爺湖近くの伊達市大滝地区に位置する百畳敷洞窟では冬期に天井から滴り落ちる水により氷筍(ひょうじゅん)が生成しています。2018年の調査では洞窟内に2315本の氷筍が存在していたことが知られています。これは国内の洞窟で生成される氷筍の本数としてはかなり多い方です。私たちの研究室では、洞窟内の気温測定、氷筍のインターバル写真撮影などを実施しています。また、洞窟内での氷筍を大学に持ち帰り、低温室にて氷筍の結晶構造を調べています。現在、これらの観測データを用いて洞窟内での氷筍の成長過程の解明を進めています。

あみだくじで「氷」の研究をすることに!?

雪と氷の研究に興味をもった最初のきっかけは、私が中3の時に南極昭和基地からの生中継を含むNHK番組「こちら昭和基地」を見て、南極に関心をもったことです。この番組を見て、将来南極地域観測隊員になりたいと思いました。次のきっかけは高1の時に新聞で南極観測隊員紹介の小さな記事を見つけたことです。その記事では10名程度の南極観測隊員の中で2名が北海道大学の方でした。そのため、北海道大学に進学すれば南極地域観測隊員になれるかもしれないと思い、受験して合格しました。
北海道大学では将来の南極観測を考えて、第1希望は理学部地球物理学科としましたが、結局第3希望の応用物理学科に進学し、4年生の時に氷物性が専門の物性第一研究室の配属になりました。実はこの研究室の配属は、あみだくじで希望順が決まりました。物性第一講座は定員が6人でしたが、4人しか希望者がいなかったので第一希望の研究室に入ることができ、私の専門は氷になりました。今考えると、当時北海道大学で南極観測に最も近かったのは私が所属した研究室であったことがわかりますが、当時は偶然に近い感じで決まりました。
その後、博士後期課程3年の時に北見工業大学の先生に声を掛けていただき、北見工業大学の助手となりました。北見工業大学に勤めてからは、もともとの夢だった南極地域観測隊に参加し、南極の内陸に建設したドームふじ基地で2回の越冬観測を担当しました。私が経験した南極観測について関心がある方は『亀田貴雄(2015):南極ドームふじ基地での掘削、観測、生活.水環境学会誌、38(A)、142-148.』をご覧ください。

世界で初めての発見者になり、
研究結果が論文として後世に残る喜び

研究とは世界で誰も知らないことを観測や実験、理論などで明らかにすることです。私の場合は、観測と実験で雪と氷の世界で未解明なことを明らかにしてきました。研究の魅力、醍醐味は、実際に観測や実験を実施して、世界で初めての事実を明らかにすることだと思います。
研究した成果は科学論文として出版しますが、論文が出版されたときにはいつも「ヤッター」という感じを持ちます。科学の世界では多くのことが科学論文として明らかにされていますが、科学者としてその列に加わることができるのも大きなやりがいです。

学校での勉強をサボるのは「もったいないこと」

高校までの学習内容は、これまでに人類が明らかにしたことをわかりやすく整理整頓したものです。例えば、太陽が東から西へ動くのを見ると、ほとんどの人は太陽が動いていると考えます。私たちが「地球が回転するので、太陽が動いているように見える」と思うのは、そのことを学習したからです。科学技術が発達した現在、このような知識が膨大にあります。あまりにも膨大なため、一人ではどのような知識があるのかさえわからないと思います。
新しい内容を学習する場合、深く理解するためには自分一人で学習することが重要です。ただし、最も効率良く新しい内容を学習するには、その内容をよく理解している人に直接教えてもらうことです。そして、わからないことは質問することです。 高校までの学校教育での学習方法はこのような考えに基づいており、最も効率が良い方法です。
従って、多くの基礎的な知識を高校までに学習することは、科学技術が発展した現在に生きる君たちにとって必須なことです。勉強を充分にしないことは「もったいないこと」だと思います。

亀田先生からのメッセージ

日本には多くの大学、学部、学科があります。そのため、大学進学を目指す場合、自分が何に関心があるのかを明確にすることが重要です。大学では4年間もしくは大学院博士後期課程も含めると9年間学習するので、大学や学部を選ぶ際には、少しでも自分の関心がある分野を選んだほうが良いです。「好きこそ物の上手なれ」です。
私の場合、中学から高校時代に関心があったのは南極観測でした。そのため、その方向で大学や学科を選びました。ぜひ、自分が何を勉強したいのかを深く考えてみてください。「大学で何を勉強したら良いかわからない」という人は、両親や学校の先生、友人に相談してみましょう。人生を変える答えが得られるかもしれません。
私の場合は、第一希望の大学に入りましたが、進学した学科は第三希望でした。このように希望が叶わなかった時にも腐らずに、進学した大学や学科で一生懸命勉強することを薦めます。「人間万事塞翁が馬」という言葉があります。これは人生で起こる幸運や不運は予測できないものであり、一喜一憂すべきではないという意味のことわざです。人生はどのようにつながっていくのかはわかりませんし、一度きりの人生です。常に自分の人生に対して、一生懸命に生きることが重要です。それが後悔のない人生を過ごす秘訣だと思います。

(取材日:2025年9月)

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