Interview
“聖なる箱”神道の価値に迫る――なぜ神社は必要なのか
國學院大学 神道文化学部 教授
藤本 頼生 先生
人と現代社会をつなぐ場所
神社をめぐる課題とは?
私は、全国各地に点在する神社と人々との関係、またその社会的な活動に関心を持ちながら、「神道の宗教的・社会的な役割とは何か」というテーマで研究を行っています。なかでも、都市およびその近郊における神社と人々との関わりに注目しています。
研究では、近代を基点・起点ととらえ、神社や神職が担ってきた公共性や公益性、社会的な貢献に着目し、「場」としての神社の役割について、神道研究の歴史的な視点と都市社会学的な観点の両面から考察してきました。こうした検討を通して、神道が日本の伝統文化を支えてきたヒト・モノ・コトとの関わりやその重要性を探っています。
あわせて、現代社会における神社や神道の課題についても研究を行っています。近代以降に制定された神社制度や、戦後のGHQ/SCAP(連合国軍最高司令官総司令部)による占領政策の影響により、神社を取り巻く社会的環境は大きく変化しました。このような社会的変容を重要な手掛かりの1つとして、皇室と神宮・神社との関連性や、毎年夏になると話題にのぼる靖國神社と政教分離の問題など、現代社会においても関心の高い神社をめぐる様々な課題の解明にも取り組んでいます。
神社に伝わる史料が導いた研究への道
研究を始めたきっかけは、大学3年生の後期、出身高校の先生の紹介で出会った2つの史料群でした。1つは、岡山県の中山神社で代々神職を務めてきた家に伝わる「美土路家文書」(津山市立郷土博物館所蔵)で、江戸末期から明治中期にかけての記録が含まれます。もう1つは、江戸時代から明治維新にかけての備前岡山藩の文書「池田家文書」(岡山大学図書館所蔵)です。両史料を調査・分析するなかで、明治初期に政府が何度も実施した全国的な神社調査や、明治末期の神社整理施策に関する研究へと進んでいきました。両史料の研究を通じて生涯の恩師に巡り合うこととなり、やがて近代から現代に至る神社や神道を対象とする研究につながりました。
曖昧でわかりにくいからこそ面白い
神道や神社に関する事柄は、本当に多様で多面的です。答えが1つに定まる場合もありますが、そうではなく曖昧なことも多いです。その曖昧さや多様さは、神道や神社そのものの理解を難しくする一方で、研究を進める上での面白さでもあります。だからこそ、各地の祭礼や史料、調査やフィールドワークを通じて、その姿を少しでもわかりやすく伝えていくことも、私の使命だと考えています。
藤本先生からのメッセージ
より一層進むグローバル化の大きな波の中で、様々な価値観が混在し、共存しているのが、現代の日本社会です。それゆえに、様々な多様性を包み込む「聖なる箱」のような存在としての神道の理念やあり方、そしてそれに根差した伝統文化は、これからの社会のあり方を考えるうえでも、ますます注目されていくことでしょう。全国津々浦々で行われている神祭りの姿や、それを支える組織・ネットワークの奥底にある人々の信仰のあり方に目を向けながら、神道・神社のもつ多面的な価値を、ぜひ一緒に探っていきましょう。
國學院大学 神道文化学部
https://www.kokugakuin.ac.jp/education/fd/shinto
國學院大学メディア_藤本 頼生先生
https://www.kokugakuin.ac.jp/article/290715
國學院大学_藤本 頼生先生
https://k-read2.kokugakuin.ac.jp/profile/ja.b8e49678386cdd95.html?mode=pc










