京都大学大学院 理学研究科 橋本 幸士 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

たった一人のアイディアが、
宇宙の理解を変える

京都大学大学院 理学研究科 教授
橋本 幸士 先生


結局私たちは何からできているのか?

私の研究は素粒子物理学というもので、宇宙や物質そして私たちの体までも、小さく小さく見ていくと、 結局は何からできているのかということを研究している学問です。 宇宙は、現在は加速膨張していますが、時間をさかのぼると非常に小さな宇宙から出発したことになります。したがって宇宙のような大きなものを取り扱う際にも、ミクロの物理学が非常に重要になります。現在人類は、宇宙において見えている部分のおよそ全てが17種類の素粒子から成り立っていることを知っています。素粒子とは、現在の人類の技術ではそれ以上分割できない最小の物質単位のことをいいます。たった17種類の素粒子で我々の身の回りから宇宙の奥深くまで、ほとんど全ての現象が記述できることが知られています。この学問体系を素粒子物理学と呼んでいるのです。

宇宙の存在をかけた謎に
世界中の研究者が独自のアイディアで挑む

現在の残された大きな謎は、「なぜ素粒子は17種類なのか?それ以上の素粒子は無いのか?」「宇宙の始まりはどうであったのか?なぜ宇宙は1つしかないのか?」「空間はなぜ縦・横・高さの三次元なのか?」などなど、研究者の頭の中にあります。これらの問題に対して研究者がそれぞれ独自のオリジナルなアイディアで挑む――これが素粒子物理学の醍醐味です。
素粒子物理学の中に「超ひも理論」と呼ばれる面白い仮説があります。この仮説においては、すべての素粒子は小さな「ひも」であると考えられ、そのひもから全ての素粒子の種類が生まれます。例えば重力や電磁気力を媒介する素粒子も、ひもから自動的に誕生するわけです。ミクロの素粒子とマクロの宇宙をつなぐ超ひも理論――これが完成すれば宇宙の始まりも理論的に解明されると期待されています。我々の住む空間が3次元空間であるという事実も、物理学として解明されるかもしれません。

「宇宙は壮大なパズル」
この言葉が物理学に進むきっかけ

高校生の私は数学が好きでした。与えられた難しい問題を自分なりの着想を持って解く、そしてその解き方を友達の解き方や、教科書に載っている解き方と比べて、エレガントさを競う。こうしたパズルを解くような楽しさが、私の数学好きにつながっていたのだと思います。小さい頃はレゴが好きで、レゴブロックから大きなそして機能的な形を作り上げていくのが何より楽しかったのを覚えています。
数学の研究がしたくて大学に入学した私は、実際に学んでみると、自分の考えていた数学と少し違うなと思い始めました。大学での数学は、与えられた問題のようなパズルを少しずつ自分の発想で解いていくものではなく、むしろ、数学で用いられる概念を発案するような学問でした。例えると自分の使う言葉を自分で考え出すようなものです。高校生の時に想像していた学問とはかなり異なっていたため、私は途方にくれました。
大学2年生の頃、進むべき道について悩んでいた矢先に、ある大学の先生と話す機会がありました。この先生は「実は宇宙自体が壮大なパズルになっており、それを解くのは若い君たち学生である」とおっしゃったのです。それが物理学という名前の学問でした。私はこの言葉に非常に感化され、「そうか、私の進むべき道は数学ではなく物理学だったのだ」と知るところとなりました。

世界のメカニズムを解き明かす、
それが素粒子物理学

私の研究分野では、アインシュタインや湯川秀樹のように、1人の人間のアイディアが世界における宇宙の理解を変えてしまう可能性を持っています。これは、何ものにも変えがたい魅力です。だって、私の考えが世界の根本的なメカニズムなのかもしれないのですから。こういったチャレンジができるのは大変幸せなことです。研究の面白さややりがいは、まさにそこにあります。それに加えて、私の研究分野では、若者が活躍できる土壌があることも魅力です。素粒子物理学の教員は「先生」とは呼ばれません。2008年にノーベル賞を受賞した益川敏英さんもそのようにおっしゃっていました。なぜならば、若い人こそが新しく素晴らしいアイディアを出す人たちだからです。既存の考え方にとらわれず、宇宙を支配する新しい考え方を提案することができる若い人たちが望まれているのです。
研究を進めると他の国の研究者とも知り合うことがあります。国籍や文化そして考え方もまるで違う研究者たちと全く同じ問題に取り組み、アイディアを出し合うのは、大変楽しいものです。私は何度もこのような瞬間に出会い、世界中に友達がいます。こういったことが可能なのも、素粒子物理学の非常に面白いところだと思います。

橋本先生からのメッセージ

高校生のときには、自分のやりたいことや興味のあることと、実際に学問分野で起こっていることに乖離があると気づかないことが多いかもしれません。私の場合は大変ラッキーで、大学に入る際には勘違いしていたものの、大学生活を終える前に、本当に興味があるのは物理学だと気づくことができました。ですので、自分のやりたいことを頭の中に思い浮かべている高校生の皆さんは、大学の一般講座を聞いてみたり、インターネットで様々な情報を集めてみたり、大学の見学に行ってみたりといったアクティビティを通じて、納得の行く大学・学科選びをしてほしいと思います。

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