日本大学 理工学部 交通システム工学科 峯岸 邦夫 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

地盤の力で守る、道路と鉄道の安全

日本大学 理工学部 交通システム工学科 教授
峯岸 邦夫 先生


サラサラの砂山にトンネルは掘れない

私の専門は、「交通地盤工学」という分野です。あまり聞き慣れないかもしれませんが、これは「地盤工学」の一部です。この「地盤工学」を簡単に説明すると、みなさんが小さいときに砂浜や砂場で、山を作ったり、トンネルを掘ったりして遊んだ経験に似ています。乾いたサラサラの砂を使うと、山はできますが、トンネルのような穴を掘ろうとするとすぐに崩れてしまいます。しかし、波打ち際の砂や少し水を混ぜて湿らした砂を使って、手のひらでたたきながら山を作ると大きなものが作れて、トンネルのような穴を掘っても崩れません。これは、砂に水分を適度に混ぜて手でたたくことによって砂の粒子同士の結束力が高まり、力を加えても崩れにくくなるからです。このような現象を工学的に考えるのが「地盤工学」であり、その中でも、交通施設(道路、鉄道、空港、港湾等)に関する地盤の力学特性(強度や変形)、新工法や新材料について研究するのが「交通地盤工学」です。

土の強さを高める2つの工法

現在は、「補強土工法」や「軽量土工法」に関する研究を行っています。道路や鉄道施設を建設する際に、盛土(土を盛って人工的に地盤を建設すること)をすることがよくありますが、土を安定して高く盛り立てるために、土の中に「ジオシンセティックス(合成樹脂でできた地盤安定材)」を混ぜたり敷いたりして強くするのが「補強土工法」です。また、従来の重くて硬い土の代わりに、発泡スチロールのブロックやビーズを混ぜた軽い土を使うのが「軽量土工法」です。両工法とも、国土面積が狭く、周辺が海で囲まれ、人々が安心して暮らせる良好な地盤が少ない我が国では、非常に有効な対策工法になっています。

扱いにくい材料だからこそ面白い

実は、私はもともと「地盤力学」が苦手でした。3年生のゼミナールで研究室を選択するとき、当時一番興味のあった研究室には入ることができなかったため、逆に一番苦手な地盤工学の研究室を選び、苦手を克服しようと必死に勉強しました。卒業研究も同じ研究室を選んで進めていくうちに、地盤の魅力にとりつかれたのです。地盤(材料)は、鋼材やコンクリート等の工場製品とは異なり、天然材料で構成されているため、不均質で扱いにくいところがあります。しかし、実験を重ねるとそれなりに傾向が見えてきます。その瞬間がたまらず、地盤工学の面白さを実感しました。実験を行う前に、自分なりに得られる結果を予想しますが、1回で予想通りの結果が得られるときもあれば、全く違う結果が得られるときもあります。しかし、条件を工夫したり、回数を重ねたりすることで、傾向が見えてくる瞬間があります。その瞬間は最高にワクワクします。また、得られた結果を積み重ねて、学会や論文で成果を発表することにより社会に貢献できるところも、この研究の大きな魅力です。

峯岸先生からのメッセージ

受験勉強は、大学入学後も基礎科目や専門科目を学ぶ上で役に立ちます。工学系の学部・学科では、数学(特に微分・積分)や物理の知識が、学びを支える土台となります。また、文理を問わず英語の学習はとても重要です。卒業研究では英語の論文に触れる機会が多く、受験勉強で培った英語の基礎知識が活きてきます。さらに大学院や院修了後には、英語で論文を執筆し、海外の学会で研究発表することもあります。私自身、もう少し英語をしっかり勉強しておけば良かったなと思うこともありました。受験勉強は、合格するためだけのものではなく、これからの学びや将来につながるものです。

(取材日:2025年10月)

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