桜美林大学 航空学群 伊藤 貢司 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

元パイロットによる次世代の操縦教育
――データとAIで挑む、安全で快適な空の旅

桜美林大学 航空学群 フライト・オペレーションコース 教授
伊藤 貢司 先生


空のリアルを“仮想の空”に映し出す

私の研究は大きく3つの柱に分かれています。1つ目は、「飛行機の操縦教育を、VR(仮想現実)やデータサイエンスで革新する」研究です。これまでの座学やシミュレーター訓練だけではわかりにくかった操縦技術や判断力を、データ分析やAIを活用して「見える化」し、より効果的に学べる環境をつくろうとしています。
2つ目は、「飛行機の運航をリアルタイムに可視化・解析する」研究です。飛行機の位置情報や気象データ(雨雲・風・乱気流など)を三次元空間上に時々刻々と描き出し、安全で効率的な運航を支援する仕組みを構築しています。いわば“空のデジタルツイン”を作る研究です。
3つ目は、「乱気流や操縦技術を新しい視点で解析し、実際の運航や安全対策に役立てる」研究です。飛行中の揺れや風の変化をデータとして数理的に分析し、パイロットがどのように対応すれば安全で快適な飛行ができるのかを解き明かしています。

研究の原点は、パイロット時代の「なぜ?」

すべての出発点は、私が現役の旅客機パイロットだった頃に感じた「なぜこうなるのだろう?」「もっと良い方法はないのだろうか?」という疑問です。操縦の現場で直面した課題を、科学と技術の力で解決したいという思いが研究の原動力になっています。高校時代に学んだプログラミングの基礎や、趣味のアウトドアで培った感覚も、今の研究に役立っています。さらに大きな転機となったのが、生成AIの登場です。これまで1つのバグで丸一日悩んでいたようなプログラムの問題が、AIの助けを借りて数分で解決できるようになり、研究のスピードと深さが格段に向上しました。

真っ白なキャンパスに“理想の絵”をどう描くか

私の研究の一番の魅力は、「社会に直結して役立つ」という点です。旅客機の運航経験を持つ研究者は多くないため、現場のリアルな課題を理解したうえで科学的にアプローチできることに大きな意義を感じています。研究はよく「真っ白なキャンバスに絵を描く作業」に例えられます。誰も描いたことのない絵を描くのは大変ですが、その分だけ自由で創造的です。頭の中にある“理想の絵”をどう形にしていくか、それを日々考えるのが研究の醍醐味です。特に操縦教育の研究は、講義や実習にすぐ応用できるのが面白いところです。学生の理解が深まったり、操縦が上達していく姿を目にすると、「研究が人を育てている」という実感が得られ、何よりのやりがいになります。

伊藤先生からのメッセージ

高校で学ぶ内容は、将来の学問や仕事の“基礎体力”です。たとえば数学の論理的思考力や、英語の読解力、物理の現象理解は、どんな分野に進んでも活きてきます。最近の大学入試では、単なる暗記ではなく「考える力」や「自分で問題を見つけて解く力」が問われます。これはまさに研究の第一歩であり、社会に出てからも非常に重要なスキルです。
大学は「教えてもらう場所」ではなく、「自分で学び、問いを立てる場所」です。自分の興味をとことん追いかけることができるのが大学の魅力です。どんなに小さな疑問でも構いません。「なぜ?」と思ったことを放っておかず、自分の手で確かめてみることが、将来の研究や仕事につながります。そして、失敗を恐れずに挑戦してください。挑戦の数だけ新しい発見があります。私もたくさん挑戦し、発見しました。このプロセスは楽しいですよ。

(取材日:2025年10月)

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