道徳の授業は「善か悪か」を教えるものではない

大阪教育大学 総合教育系 教授
金光 靖樹 先生


道徳は答えが分かっているから授業がしにくい?

学校での道徳教育に関連することを広く研究しています。授業展開から教材の研究、子どもの発達論や道徳教育制度の変遷や国際比較など、なんでも一通り研究を行っています。
みなさんが学校で習う科目や内容というのは学習指導要領で決められていますが、2017年の学習指導要領改訂で、道徳は「特別の教科」として扱われるようになりました。道徳の教科化は、道徳教育の充実を目指すために行われたのですが、教育の現場では教科としての「評価」をどうするのかが困り感のようで、当時、私のところに来る講演依頼の内容も「評価」に関するものばかりでした。とはいえ、授業のねらいやそれを達成するための授業展開あっての「評価」ですので、そういった捉え方を広めていく必要があると感じます。
そもそも「道徳」という言葉自体が学術用語ではなく日常用語であり、雑多な要素の寄せ集めです。したがって「道徳教育」と言っても必然的に一元的なものではなく、心理学、哲学、倫理学、社会学、生物学などの学際的な研究が本来は必要な領域で、考える余地はまだいくらでもあります。よく、道徳は答えが分かっているから授業がしにくい、という現場の先生からの声を耳にするのですが、道徳の授業の「答え」が「善か悪か」だとは誰も言っていません。むしろ、「正しい」と分かっていることが「なぜできないのか」また「なぜできるようになったりするのか」ということが本来は問われているはずです。だから、「道徳教育」は色々な学問からの幅広いアプローチが必要となります。

「国際理解」をテーマとした道徳授業づくりの指導も行う

私は元々道徳教育の研究を専門にやっていたのではなく、教育哲学の中でも知識論、想像力論を専門に研究をしていました。大学院卒業後、「道徳教育の研究」という教職科目を担当したことから現在の研究が本業となりました。大学の学部では臨床心理学と教育人間学と別れているものが、大学院で合流して臨床教育学専攻となったのですが、専門ではないにしろ心理学を多少なりともかじったことがあるのは現在の研究に役立っていると思います。
私が勤めている大阪教育大学は、「教員養成フラッグシップ大学」というものに認定されています。これは日本には4校しかないのですが、令和の日本型学校教育を担う教師の養成を目指すために文部科学省が創設した仕組みです。この「教員養成フラッグシップ大学」の関連で大学院の「グローバルスタディーズ」関係の科目のカリキュラム作りに直接関わっていました。協力先の海外の日本人学校の先生向けの教材作り、「国際理解」をテーマにした道徳授業作りの指導や「異文化理解」、「そもそも『文化とは何か』」の解説などにも関与していました。

幼稚園での道徳教育

私は大学の附属幼稚園で園長もしておりました。想像力とは「異なるものの間に共通の構造を見出す力」ですが、幼児期は想像力の源になりうる身体的な経験を積む時期であり、失敗が許される遊びの中で「結びつき」を試したり、発想の転換を楽しんだりする時期だと思っています。幼児期は発達的に動機の部分を反省することが難しいので、小・中学校の道徳授業の方法論を活用することはできませんが、幼児期は道徳教育を行うのに非常に重要な時期と考え研究を行っています。

金光先生からのメッセージ

みなさんがチャレンジする大学受験では、志望校に合格するに越したことはありません。しかし、仮に希望が叶わなかったとしても、身につけた「教養」は残ります。また、学んだことが必ずしも将来の「仕事」に直結するとは限りませんが、それによってものの見方が変わったり、場合によっては楽しさを感じたりすることができます。
例えば私の場合ですと、共通一次テスト(今の共通テスト)で地学を選択したおかげで、街歩き番組を見て楽しいと思うのです。それって、つまらないことのように思えるかもしれませんが、日々積み重なると意外と大きい。そして、受験という機会がなければ身につけようとは思わなかった気がします。

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