大阪大学 大学院 人文学研究科 中村 征樹先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

科学者が社会に対して持つ責任とは?

大阪大学 大学院人文学研究科 教授
中村 征樹 先生


科学技術の発展がもたらしたのは恩恵だけではない

科学技術が発展することによって、かつては治らなかった病気が治るようになったり、生活が便利になったりと、私たちは科学技術に多くの恩恵をうけています。しかしもう一方で、科学技術の発展によって、考えるべきさまざまな問題が発生しているのも事実です。たとえば日本でも、原子力発電所の事故によって、多くの人々の生活に甚大な影響がもたらされています。海外では、病気の子供を救うため、免疫型の適合する弟や妹を産んで移植を行うという治療法が登場し、賛否両論の議論が巻き起こっています。中国ではゲノム編集を行った赤ん坊が誕生しました。科学研究を進めるだけではなく、理系の分野と考えられている科学技術をより望ましい形で発展させていくためにはどうすればよいのか、という問題を社会とのかかわりや、倫理、文化の観点から考えていくことが重要なのです。
私自身は、このような問題に取り組むために、一般の人たちがどのように科学技術と関わることができるのか、関わっていけば良いのかについて研究しています。科学技術は、私たちの社会の命運を大きく左右します。そこに一般の人たちが関わり、研究者と一緒になってこれからの科学技術のあり方、発展の方向性を考えていくためにはどうすれば良いのか。たとえば、カフェのような場所で、科学者と市民が話し合う機会をもつだけでも、両者の関係性は変わるのではないか。そう思って、「サイエンスカフェ」という取り組みを行ってきました。また、一般の人たちが、データ収集などで科学研究の一翼を担う「シチズンサイエンス」という取り組みも広がりつつあります。このような問題について研究したり、実際に取り組んだりしながら、科学技術が望ましい形で発展していくにはどうすれば良いかについて研究を進めています。

物理学の研究者を目指していたが、
科学技術を社会との関わりの中で考えてみたくなった

高校生の頃は物理学の研究者になりたいと思っていました。この複雑な世界や宇宙を、原理にさかのぼってわずかな法則で解き明かそうとする、そういう学問に惹かれて、素粒子論などの純理論的な研究に面白さを感じていました。しかしその一方で、相対性理論をつくり出したアインシュタインが原爆開発の引き金を引いてしまうなど、科学研究が社会に望ましくない影響をもたらすことも気になっていました。科学者は社会に対してどういう責任をもっているんだろうか、研究をしているだけではいけないんじゃないか、ということも関心を持っていたのです。
 大学入学後、哲学や倫理学、社会学などの文系の学問に触れる中で、理科系の学問とは異なる文系の学問の面白さも感じるようになりました。そこから科学という営みを、倫理的な観点や社会との関わりの中で考えてみたいという思いが強くなり、科学技術を社会との関わりで考えようとする現在の研究分野に転身しました。

文理問わず色々な研究者と交流議論ができるのが醍醐味

実社会に関わりながら研究を進めていくところ、研究がより良い社会の実現に寄与しているのかもしれないという実感が持てるところにやりがいを感じています。
また、文系・理系を問わず、色々な研究分野の人たちとの交流や議論ができるところ、大学の研究者だけではなく、社会の色々な立場の人たちと関わることができるところも私の研究の醍醐味です。もちろんそのためには、理系を含めて様々な分野の知識を深めていくことも必要ですし、意見が食い違うことも少なくはありません。このような大変さもありますが、それを超える面白さがあると感じています。

中村先生からのメッセージ

自分は文系だから理系のことは知らなくていいとか、理系だから文系は興味がないとか思わずに、文系・理系を問わず、色々な分野に興味を持ちましょう。受験科目として接すると、どうしても苦手意識を感じたり、興味が沸かなかったりする分野もあると思います。
しかし、受験からちょっと離れて本やYouTubeなどを通して色々な分野の知識や学問に触れてみると、それまで気がつかなかった学問の面白さを感じることができるかもしれません。ちょっと背伸びして、大学レベルの知識に触れるのもおすすめです。理解はできなくても、こんな研究をやっているんだ、なんか面白そう、と感じるだけでも十分です。受験の息抜きにでも良いので、ぜひ色々な分野の知識に触れてみてください。宣伝のようになってしまいますが(笑)、青山学院大の理系の研究者と、いろんな分野の研究者をお呼びして話を伺う「はちげんめっ!」というYouTube配信もやっています。もし興味があればのぞいてみてください。

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