大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 竹田 潔先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

まだ誰も知らない「答え」を探して 難病の原因を解き明かす

大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 教授
医学系研究科 教授

竹田 潔 先生


「腸内細菌」と「免疫」の関係から
まだ治すことのできない病気の原因を探る

この世界には、現在の医療技術ではまだ治すことのできない病気や原因のわからない病気が、数多く存在しています。たとえば、安倍元首相が患っていた炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎)もその一つです。この病気は、腹痛、下痢などに悩まされる病気で、大腸で免疫が暴走して発症するものと考えられています。
大腸には、多数の腸内細菌が生息しています。「腸内細菌」は皆さんもお聞きになったことがあるかと思いますが、私たちの健康に多大なる貢献をしてくれているため、よく知られるようになりました。一方、「免疫」は、私たちの身体に侵入してくる感染症を引き起こす病原微生物(ウイルスや細菌)を異物として認識して排除し、我々の健康維持に貢献する重要なシステムです。この免疫を担う細胞が大腸には多く存在していて、下痢などを引き起こす消化管感染症を防いでくれています。この免疫は、ウイルスや細菌などの異物を認識するのですが、私たちの大腸に存在する腸内細菌も、言ってしまえば異物そのものです。炎症性腸疾患では、免疫が腸内細菌を認識して反応するために、炎症が起こります。しかし、免疫の立場からすると、異物である腸内細菌を認識して反応することは、至極当然の役割を果たしていることになります。すなわち、炎症性腸疾患の病気では、免疫は本来の機能を発揮しているわけです。逆に健康な人で、どうして免疫が腸内細菌を認識して反応しないのか、という疑問を明らかにすることができると、「大腸をはじめとした消化管の恒常性がどのように維持されているのか」、「その恒常性がいかに破綻して炎症性腸疾患が発症するのか」を明らかにすることができると考えています。
私たちの研究室では、この疑問を解き明かすための研究を行っています。具体的には、
・消化管に存在する免疫細胞は、他の組織に存在する免疫細胞と異なる機能(腸内細菌と病原性細菌を識別するなど)を有しているのか
・腸内細菌がどのように変化すると炎症性腸疾患が発症するのか
・免疫細胞と腸内細菌を分け隔てる機構がどうなっているのか
についての研究を行っています。

臨床研修での歯がゆい経験から
現在の研究へ

私は医学部を卒業して内科で2年の臨床研修を行った後、免疫学の基礎研究を始めました。私が免疫学研究を始めた1990年代の前半は、特定の遺伝子を発現させなくするマウス(遺伝子欠損マウス)の技術が普及し、このマウスを用いて遺伝子の個体レベルでの機能を次々と解き明かすことができた時代でした。
この遺伝子欠損マウスを用いてある遺伝子の欠損マウスを作成すると、炎症性腸疾患が発症しました。これは全く予想外の結果で「どうしてこの遺伝子欠損マウスで炎症性腸疾患が発症するのだろう?」と大変興味を持ちました。また、2年の臨床研修を行っているときに、2名の炎症性腸疾患の患者を受け持ったのですが、その当時の内科でできる治療は、栄養補給のための点滴をする程度で、大変歯がゆい思いをしていました。このようなことから、炎症性腸疾患の原因を明らかにして、今治すことのできない難病の治療を実現するような基礎研究を行いたいと思うようになりました。

研究は人生そのもの
仮説の立証が大きな喜びに

皆さんは今、答えがある問題を解く勉強をしています。しかし、研究というものは、今誰も答えを知らない課題を対象としています。私の場合は、炎症性腸疾患の原因です。この課題に対して、こういうことが考えられるのではないか、ああいうことが考えられるのではないか、という仮説をいくつも考えて、それを実証する実験を繰り返します。この仮説は、なかなか当たりません。しかし、一度でもこの仮説が真実であることを実証できた場合、これを明らかにしたのは世界で自分が初めてであること、その証明が将来ひょっとすると病気の克服に役立つのではないか、と考えると、もう楽しくて仕方がありません。日々、課題に対する仮説を考えることが、何の苦痛でもなく、充実した時間となります。研究という仕事は、業務として収入のために行うものではなく、研究という仕事そのものが人生そのものであるように感じています。

竹田先生からのメッセージ

志望校を目指して頑張ってください。そして大学に入学することがゴールではありません。大学に入ると、上述のように誰も知らない答えを明らかにする学問が始まります。そのようなことに挑戦できるようになることを楽しみにして頑張ってください。

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