大阪大学大学院 人文学研究科 筒井 佐代 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

日本語のコミュニケーションの分析研究で
異文化間のコミュニケーションにおける課題を解決する

大阪大学大学院 人文学研究科 教授
筒井 佐代 先生


日本語で話す雑談ってどんなもの?

私の専門は日本語教育学で、日本語の会話、特に雑談を研究対象としています。日本語母語話者の雑談を録音、録画して文字化したものをデータとして、日本語母語話者がどのように雑談のやりとりを進めていくのか、そこには何かパターンがあるのか、ということを、会話分析(Conversation Analysis)という研究手法を使って分析し、その結果を日本語教育にどのように応用できるかということを考えています。

会話分析を通じて
日本語教育をより良くする

会話は一つ一つの発話の連なりですが、会話分析ではそれを一つ一つの行為の連なり、すなわち相互行為と見なし、どのような行為の後にどのような行為がなされるのかを、発話の言語表現や音声的特徴、場合によっては視線や体の動きなども含めて分析します。
単純な例を挙げると、
太郎「合気道やってるの?」
花子「うん」
太郎「えー、すごいなあ」
という会話は、太郎の「質問」、花子の「答」、太郎の「感嘆の反応」という行為のやりとりと見ることができます。このようなやりとりの流れは日本語ではよく見られる形ですが、言語によっては「質問」と「答」の後の「感嘆の反応」が日本語ほど頻繁に現れない言語もあります。このような分析結果を日本語教育に応用すれば、日本語の会話では質問した人が相手の答を受けて反応をすることで会話をスムーズに進められるということを、学習者に説明することができます。日本語の会話教育については、まだまだ改良していく余地があると思っているので、今後も分析を進め、日本語教育への応用の道を模索していきたいと思います。

「日本人の友達が欲しい…」
留学生の悩みが研究を始めたきっかけ

私がこの研究を始めたのは、日本語を学んでいる留学生が日本人の友達ができないと悩んでいるのを聞き、どうしたら日本語母語話者の会話に入れるようになるのだろうと思ったことがきっかけです。言語によって雑談の仕方が異なるということについては、それまであまり考えたことがなかったのですが、日本語には日本語特有の話の進め方があるのかもしれないと思い、雑談の研究を始めました。
この研究では、日常的に母語話者が無意識に行っていることを意識化できるところ、それによって日本語のコミュニケーションの特徴が見えてくるところがおもしろいです。また、留学生にそれぞれの母語について教えてもらうことで、日本語と何が違うのかが見えてくることも、とても興味深いです。結局、言語の背景にある文化や社会、ものの見方や価値観などがコミュニケーションに反映されているのだということがよくわかります。このような研究を通じて、異文化間コミュニケーションにおける摩擦や齟齬を少しでも解決していけたらと思っています。

筒井先生からのメッセージ

受験勉強は本当に大変だと思いますが、大学は人生の中での一つの通過点でしかないとも言えます。長い人生の中で、自分が心底興味を持って続けていけることにいつどこで出会えるのかはわかりませんが、少なくとも現時点で自分が強く興味を惹かれることについては、それが勉強であっても趣味であっても大事にしていくといいと思います。そこにこそ他でもない自分という人を形作る重要な鍵が隠されているのではないかと思うからです。もちろん、興味を失ったら固執する必要はないので、あっさり離れていけばいいし、何十年後かにまたそこに戻ってくることもあるかもしれません。いずれにしても、自分が本当に何を欲しているのか、自分によく聞きながら生きていってもらえたらと思います。

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