立命館大学 理工学部 数理学科 大坂 博幸 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

見えないものを理解するための武器
それが数学のもつ可能性

立命館大学 理工学部 数理学科 教授
大坂 博幸 先生


物理分野の「量子力学」を
数学的アプローチで考える

「普段我々は数学B(新課程では数学C)で習う3次元空間の中で生活をしていると認識し、距離、運動(変換)、エネルギーなど様々な量を定義し利用しているが、実はアインシュタインの相対性理論が示しているように歪んでおり、場所によっては3次元以上の場が存在するかもしれない。それ故、空間を4次元、5次元、…、n次元と一般化し、その中で様々な距離を定義し、その空間が持つ性質を調べ、その空間上での様々な変換を明らかにするように試みる。」
このような分野を関数解析といい、その中でも個々の変換を調べる作用素論や変換の集まりが持つ普遍的性質を調べる作用素環論といわれる分野が私の研究対象です。

例えば、区間[0, 1]上の関数f(x) = xは小学校から触れてきた関数ですが、この関数の和、積から生成される多項式から導かれる集合Xがどのような性質を持つかを調べることによって、直線上の運動を近似的に理解できるようになります。数学IIで学ぶ三角関数や指数関数も多項式で近似できることが知られています。
一方、電子や光子のように目に見えない物質の運動を理解しようとするとXの集合だけでは不十分で、数学Cで触れる行列のように交換不可能な関係を持つ作用素が必要になります。このような分野を物理では量子力学といいますが、私は昨年度ノーベル物理学賞の対象となった量子情報理論を数学的なアプローチで研究しております。
残念ながら私の取り組んでいる問題は数学的には特殊で、しかも手ごろな問題でないため、現在日本における数学者で取り組んでいるのは私のみになっているようです。そのため最近は海外の数理物理学者と一緒に仕事をしております。

数学の先生の説明をきっかけに
数に魅了された学生時代

小さいときから数数えが好きで、一人でよく数を数えた記憶があります。中学二年生のとき担任の数学の先生が、線分の長さが違ってもそれに存在する点の数は等しいことを説明され、非常に衝撃を受けました。それから数の魅力に憑かれ、中学時代にたくさんの幾何の問題を解き、高校時代は試験に関係ないモノグラフなどの数学のちょっとした専門書を読んでいました。数数えの不思議さは、一生かけても数えることができない数を我々は書いたり、認識したりできることです。同じように、ユークリッドの原論(古代ギリシア時代にまとめられた本)における点、線、面は実世界には存在しないのに我々はなんとなく理解するのも不思議です。

宇宙のあらゆる現象までも
きっと「数式」で表現できる

数学は、見えないものを理解するときに役立ちます。
点はひとつずつ積み上げていくだけでは、長さも面積も持ちませんが、べったりと積み重ねていくといくらでも長さを持つようにでき、線分となり、それがまた重なり面ができ、さらに面を重ねるに従って立体ができる。無であることと有であることは同じであると述べている般若心経のようです。
一見すると式で表すことができない海岸線や木の葉っぱなどを簡単な式の繰り返しによって書き表すことも可能です(フラクタル幾何といいます)。
ガリレオが述べたようにあらゆる物理現象は数式で書き表すことができるような気がします。目に見えない粒子のレベルも量子力学のように数式で表現でき、それが我々の住んでいる世界を記述しているように見えます。このように宇宙のあらゆることが数式で表現できるのではないかと魅力を感じてしまいます。

大坂先生からのメッセージ

今はとにかく大学に進学したいという意識が強く、問題を速く正確に解き、点数を取ることに重点を置いているかもしれません。しかし、教科書をゆっくりと眺めれば不思議なことだらけで、「+1 = 1の理由は何?」「0x = 0はどうして?」などなど、たくさんのことが理由もなく書かれていることに気が付くと思います。「何故、数学的帰納法は正しいのか?」など単に問題を解くだけでなく、その背景にある意味に触れることで、数学の魅力がわかります。大学で学ぶ数学で多くの疑問は氷解しますので、数理科学科に進学して、数学の深さを学ぶことを是非ともお勧めします。

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