埼玉大学大学院 人文社会科学研究科 西山 尚志 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

『論語』が伝える孔子の言葉は本物か?
――新たな出土文献から探る、諸子百家の思想と文献形成の歴史

埼玉大学 大学院人文社会科学研究科 文学研究領域 教授
西山 尚志 先生


竹簡や木簡に書かれた戦国文字を読み解く

私は、主に中国の春秋・戦国時代から秦・前漢時代にかけての思想や文献形成の歴史について研究しています。近年、中国では、この時代に書かれた竹簡や木簡(竹や木を使った書写材料)が大量に発見されています。それらの中には、『周易』・『尚書』・『詩経』・『老子』といった、後世に伝わる文献と内容がかなり一致するものの他、これまで伝えられてこなかった文献も多く含まれており、当時の思想を知るための貴重な手がかりとなっています。私の研究は、このような新たに出土した文献を用いて、当時の思想や、文献が形成されていった過程を明らかにしようとするものです。もっとも、秦の始皇帝が文字を統一する前の戦国時代では、文字の形や使い方が地域ごとに異なっていたため、出土文献を読み解くには専門的な知識や訓練が求められます。私はまず、そのような文字を読み解くことから始め、そこに記された思想などを研究しています。

書道から広がった中国文化・歴史への興味

私の父は書家で、その影響もあって私は幼少期から書道に親しみ、漢字・漢文ひいては中国文化全般に自然と関心を持つようになりました。そして、進学先も書道や漢文を学べる大学を選びました。入学した翌年の1998年、中国から『郭店楚墓竹簡』という出土文献の写真図版と釈文が出版され、大きな話題となります(竹簡が出土したのは1993年)。これは、戦国時代中期の楚国の墓から出土した竹簡で、『老子』や『礼記』の一部と比較できる内容が含まれていたため、戦国時代の文字の解読を大きく前進させるとともに、当時の思想や文献形成の過程を見直す上でも、画期的な資料とされました。
書道を通じてこの時代の文字に関心を持っていた私は、どうしてもこれが読めるようになりたくて、当時、唯一の専門書であった何琳儀著『戦国文字通論』を手に取りましたが、中国語や漢文の読解力も中国文化・歴史に関する知識も圧倒的に足りていないことを痛感します。そこから中国語や漢文の学習に本格的に取り組むようになり、徐々に出土文献・中国古代思想史・文献形成史を研究する道へと進むようになりました。

二千年以上前の思想に、直に触れられる魅力

中国の春秋・戦国・秦・漢時代には、孔子・墨子・老子・孟子・荘子・荀子・孫子・韓非子など「諸子百家」と呼ばれる思想家たちが活躍し、『論語』・『老子』・『孝経』といった重要な典籍も編纂・形成されました。この時期に形づくられた思想の基盤は、後に中国思想の核となっただけでなく、アジア諸国や世界に巨大な影響を与えることになります。しかし、現在広く読まれている諸子百家の文献が、当時の内容をそのまま伝えているわけではありません。実際には、秦の焚書坑儒による思想弾圧を経て、さらに漢代以降にもたびたび整理・編集が加えられながら、後世に伝えられてきたのです。その過程で、文字の異同が生じたり、文献の改編や偽作が行われたりしたことは想像に難くありません。これに対し、近年発見されている出土文献は、まさに諸子百家が活躍していた同時代に読まれていた資料です。こうした資料を手がかりに、これまで不明な点も多かった思想の流れや文献の形成過程が、徐々に輪郭をもって明らかになりつつあります。二千年以上も前の人々が実際に手に取って読んでいた文献を読み解くことは、非常に刺激的で意義深いものだと思っています。

西山先生からのメッセージ

私はテスト勉強が本当に苦手で成績も良くありませんでした。ですので、受験勉強について具体的なアドバイスをお伝えすることはできません。ですが、どうか皆さんにはテストの点数や偏差値・内申点といった「他人が作った基準」で、自分自身の価値を測らないで欲しいと思っています。成績・学歴・収入・地位・名声などが気になるかもしれませんが、そうした他人の基準に合わせて勉強するのではなく、自分が本当に好きなこと・面白いと思えることに、思い切り取り組んでください。そして、受験が終わっても、どうかずっと学び続けていて欲しいと願っています。

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