信州大学 農学部 農学生命科学科 山田 明義 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

高級きのこ、お手頃価格も夢じゃない!?
マツタケ・トリュフの人工栽培に挑戦

信州大学 農学部 農学生命科学科 教授
山田 明義 先生


お手頃きのこと高級きのこは、ここが違う

私は、マツタケやトリュフのような「栽培が難しいきのこ」を、どうすれば人の手で育てられるようになるかを研究しています。シイタケ、エノキタケ、ブナシメジ、マイタケのような「栽培できるきのこ」には、枯れ木や倒木にある木質成分(セルロースなど)を分解して、栄養(炭素源)を得る力があります。そのため、丸太やおがくずなどに、培養したきのこの菌(菌糸体)を植え付けると、そのまま増殖して、いずれきのこ(子実体)が生えてきます。一方で、マツタケやトリュフには、木材を分解する能力がありません。これらのきのこは普通、生きた樹木の根(特に末端の「細根」と呼ばれる部分)に定着して増殖しています。菌糸が根の細胞の隙間まで伸びていき、そこから炭素源をもらい、その代わりに、土壌から吸収した窒素やリン、その他様々なミネラルを樹木の根に供給しています。

栽培化のカギは「菌根共生」の再現

このような菌と植物の複雑な相互関係は「菌根共生」と呼ばれ、そうした生活様式をとるきのこを「菌根菌」または「菌根性きのこ」と呼びます。「菌根菌」は、実験室でコントロールすることが難しく、特に菌糸だけを単独で培養することは困難です。そのため、ほとんど栽培化に至っていませんが、私は、この「菌根共生」を人工的に再現することで、マツタケやトリュフの栽培化を目指しています。
まず、培地上でわずかに増やした菌糸を無菌の植物に定着させ、「菌根共生」を作り出します。その後、苗を大きくしながら、菌根が増える条件を探ります。具体的には、菌糸の遺伝的性質(ゲノム解析)も踏まえながら、苗と菌がうまく成長するための光、温度、水分、土壌成分などの条件を明らかにしていきます。さらに、苗が大きくなったら野外に植えます。マツタケやトリュフでは、まだ子実体を発生させることができていませんが、ヨーロッパで人気の菌根性きのこ「アンズタケ」では、子実体の発生に成功しました。

謎解き×宝探しのような面白さ

私の研究は、ごく簡単そうに見えて実は難しい、という謎解きのような面白さがあります。マツタケなどの「菌根性きのこ」は、昔から多くの人が興味をもってきましたが、自然界での役割や生き方など、基本的な性質が、実はまだはっきりわかっていません。また、菌糸の培養が難しいこともあり、細胞の特性についても、あまり研究されていないのが現状です。未解明な要素が多く、かつ実験操作の難しいきのこを何とかしたい、という思いが研究を続ける動機づけになっています。
もともとは野生のきのこに興味があり、「菌根菌の生態学的研究」で学位を取得しました。その後、林業関係の研究機関でマツタケなど菌根性きのこの栽培化に関する研究を始め、現在は大自然に囲まれた地の利を活かす形で研究を続けています。研究で使うマツタケやトリュフは、すべて山林に出かけて自ら採取し、ゼロから実験をスタートさせています。長野県にはたくさんの山があるため、低地の森や公園・キャンプ場のような生活圏から、本格的な登山が必要な山岳地帯まで、調査の範囲は広大です。どこにどんなきのこが生えているかわからない中での作業は、まるで宝探しのような楽しさがあり、思いがけない発見につながることがあるのも、この研究の魅力です。

山田先生からのメッセージ

大学受験は、将来自分が進みたい方向性を考える第一歩です。長い人生では、方向性が180度変わることもありますが、まずは基礎となる科目をしっかりと身につけておくことが大切です。このとき、得点だけを目標にせず、学ぶこと自体に意欲をもつと、大学でもそのまま学力を伸ばせますし、将来方向性が変わっても自分の強みとして活かすことができるはずです。目標が決まっている人は、とにかくそれに向かって頑張ってください。そうでない人は、自分の好きなことや関心のあること、特技を振り返り、無理なく取り組めそうな分野を探りつつ、マイペースで進めていくのが良いと思います。

関連情報

学部から探す

大学の学問系統別にご紹介しています。さっそく興味のある学問から読んでみましょう。

四谷学院の「ダブル教育」
四谷学院について詳しくはこちら
個別相談会はこちら
資料請求はこちら

ダブル教育とは?

予約コード17GJWAZ

『学部学科がわかる本』冊子版をプレゼント

予約コード17GJWAZ

ページトップへ戻る