静岡大学 教育学部 発達教育学専攻 村越 真 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

高リスクな場所で活動する人から得た知見で
日常生活における人の命を守る

静岡大学 教育学部 発達教育学専攻 教授
村越 真 先生


リスク認知の研究を安全教育に活かす

私の研究は専門用語で言うと「リスク認知」です。「リスク」とは、けがをするような可能性のある状態、簡単に言えば「危ない」ということです。また、「認知」とは、人がどのように物事を見たり判断したりしているのか、行動しているのかというメカニズムです。つまり、リスクに対して人がどのように考え、対応行動を採っているかを研究しています。
現在の私の主たる研究対象は、世界的にも有名な登山家や日本の南極地域観測隊という、リスクが高く、しかもそのリスクが場所によって大きく変動し、一歩間違えれば死の危険がある領域で活動する人たちです。彼らの領域は危険性の高さ故に、一般の人が身につけていない危険の見極め方や対応方法を持っていると考えられます。それを面接や行動観察といった研究手法によって洗い出し、明らかにします。そしてそれを元に安全教育に応用することが研究の大きな柱です。
一見すると、私の研究対象は非常に特殊に見えるかもしれません。しかし、私たちが生活する日常でも、災害時やシステムの不具合、人為的なミスで予想もつかないリスクに突然晒される可能性があります。私の研究は、そのような場面でどのように行動したら良いかについてもヒントを与えてくれると考えています。実際に、研究の知見を応用して、教員志望の学生に児童生徒の命を守るためのリスクマネジメントのポイントを指導したり、一般登山者のリスクマネジメント研修なども行ったりしています。

痛ましい水難事故をきっかけに
リスクに対して関心を持つ

元々大学院生の頃から、人がなぜ間違いを犯し、それによって失敗するのかに興味を持っていました。きっかけとなったのは、1999年の夏に起きた、神奈川県丹沢山地での水難事故です。川の中州でキャンプをしていた家族が集中豪雨の増水で流されて13人が亡くなるという事故で、多くの子どもも巻き添えになりました。
この事故をきっかけに、人はなぜリスクに対して不十分な対応しか取れないのだろうか、その背後にはどのようなリスクへの見方があるのだろうかという点に興味を持ち、研究テーマになりました。

リスクの概念化や事故における関係性の新たな発見が研究の醍醐味

主たる私の研究方法は、面接で語られた言葉をカテゴリー化したり、再構築したりする質的研究法というものです。例えば登山家などの、その分野に長けた熟練者の言葉は聞いているだけでも面白い。また、そこから彼ら自身も十分には言語化できていなかったリスクの見方、考え方を概念化できることが面白さの中心にあります。
質的研究法以外に、事故の統計分析も研究していますが、多くの人が目にしているはずのデータの中から、誰もが気づいていなかった関係性を発見できることも、この研究でやりがいを感じられます。自分でも興奮できるような発見はごくまれではありますが。
さらに、研究対象がリスクのため、私の研究がいつか人の命を救うことになるかもしれない、と現実的に考えられることも研究のやりがいの一つです。

村越先生からのメッセージ

私たち研究者も、いつも勤勉に研究ばかりをしているのではありません。しかし、「このテーマだ」「このチャンスでいいデータが取れる」という時には集中して臨みます。時にはきついと思う時や、思った成果が出ずに焦りや落胆を感じる時もありますが、その経験をするからこそ、研究者として成長できました。受験も同じだと思います。高い山に登ろうとするからこそ、実力を高めることができる。そのいいチャンスが与えられたと考えると、受験で辛いと思うことがあっても乗り越えられるのではないでしょうか。
なお、私は大学学部までは工学部で都市工学を専攻していました。一般的に見れば、専攻した学問と全く違った分野で大学教員になった訳ですが、受験勉強も工学部での勉強も現在の研究者としての幅の広さや深さに生きています。「この進路でいいのか?」と悩んでいる人は、「とりあえず頑張ってみる」というのもありだと思います。

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