多摩美術大学 美術学部 生産デザイン学科 プロダクトデザイン専攻 尾形 達 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

持続可能な社会の実現に向けて「デザイン」ができること
デザインの力を通じて廃棄物の発生を抑制する

多摩美術大学 美術学部 生産デザイン学科 プロダクトデザイン専攻 准教授
尾形 達 先生


「すてるデザイン」とは?

私の専攻は「プロダクトデザイン」です。プロダクトデザインという言葉には馴染みがないかもしれませんが、端的に言ってしまうと、製品デザインのことです。スマホや文房具、電車や車、テレビやPCなど、みなさんが朝起きて夜寝るまでに使った製品や道具のほとんどがプロダクトデザインと思って良いと思います。これらのモノの色やカタチ、使い方やシーンまでをデザインするのがプロダクトデザインの領域です。その中で、私が特に重点を置いて取り組んでいる研究(プロジェクト)は、これからの循環型社会(サーキュラーエコノミー)に向けた「すてるデザイン」というプロジェクトです。「すてるデザイン」は、多摩美術大学と廃棄物の課題に真摯に向き合っている企業とが連携したプロジェクトです。デザインの力を通じて廃棄物の発生抑制や捨て方自体を根本から変えることを目指しています。循環型社会とは、簡単にいうと、今ある資源を有効活用する取り組みです。石油由来のプラスチックをそのまま焼却処理や埋立て処理するのではなく、リサイクルして再度資源として使用したり、プラスチックの代わりに環境に良い素材を使用したりすることも循環型社会の一例です。身近な事例としてはペットボトルがあります。使用したペットボトルは回収され、洗浄・粉砕・溶解して、もう一度ペットボトルの材料に活用されています。
このような循環の社会に向けて、デザインで出来ることを企業と一緒に見つける活動をしています。そして、何より重要なのは、このプロジェクトの中心に学生を巻き込み、一緒にこれからの社会に向けたデザイン提案を考えることです。

修理可能なスーツケースをデザインする

具体例として、スーツケースのデザイン研究を紹介します。スーツケースは様々な衝撃から中に入れるモノを守ために、非常に頑丈に組み立てられています。この役目はとても大事ですが、実は廃棄した後はほとんどが埋立て処分されてしまっています。様々な素材が壊れないように接着されていたり、強く固定されたりしており、廃棄され回収した後に素材ごとに分別することが難しいのが原因です。このスーツケースに対して学生と一緒に提案したデザイン案は、リペア(修理)可能なスーツケースです。リサーチで、スーツケースを分解した際に、壊れている箇所が限定されている事に気づきました。そのことからリペア(修理)を前提にデザインを考えることで、修理して長く使えて、廃棄後も分解可能なデザインとして提案しました。また、デザインの提案だけでなく、回収と修理が容易な回収のシステムも同時に提案しており、実際に製品化として検討も行なわれています。

社会問題に向き合うことで、学生の考え方が変わっていく
その瞬間に立ち会える喜び

循環型社会での問題解決は、簡単なことではありません。様々な領域の知識や問題を総合的に捉える幅広い視点と、デザインにできることを探す深い考察が必要になってきます。ただ、そのような難問に一緒に向き合う中で、企業の方も学生も意識が変わってくるのを毎年実感しています。参加した学生の視点や思考が向上していくのを感じることが、研究の一番のやりがいです。
学生の意見として、「すてるデザイン」に参加して間もない時に「循環型社会の取り組みには興味がない」「過去に解決していない問題を自分たちの世代に押し付けるのはどうなのか?」という意見も聞かれました。ただ、プロジェクトに参加することで、これからの社会を本気で変えようとしている大人世代がいることや、デザインができる可能性を知り「自分たちにも何かできることがあるかもしれない」と考えが変わってきたと言われた時は、このプロジェクトをやってきて良かったなと思えました。

尾形先生からのメッセージ

受験という大きなイベントの後には、もっと広い世界が待っています。専門的な知識の習得も必要ですが、ぜひ様々な先生の研究や、他学科の知識にも触れていってください。インプットする情報量を目一杯広げてみてください。これからの社会は、今まで以上に様々な分野を横断した連携や取り組みが増えてきます。そこで最も必要になるのは、デザイナーの役割です。複雑で矛盾した事柄、一見すると接点のないような分野に新たな発想や繋がりを見つける。ワクワクする未来をイラストやモノのデザインを通して他者に伝えることができる。言葉以外の手段を持っているのは、デザイナーの特権です。

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