Jリーグ試合の「良い日程」を数学で導き出す!
身の回りの問題を解決するアルゴリズムとは?
東京科学大学 工学院 経営工学系 教授
松井 知己 先生
プロスポーツにおいて、
「観客が多くなる日程」とは?
私は「最適化の解法(アルゴリズム)」の構築をテーマとした研究をしています。わかりやすく言うと、身の回りにある様々な問題を取り上げ、その数理的構造を抽出し、問題を解く方法を構築することを目標としています。研究対象は、スポーツの試合日程から楽器の演奏法、輸送ネットワークの設計まで様々です。「オペレーションズ・リサーチ」という分野と深くかかわっています。所属は経営工学ですが、研究には数学(特に離散数学)やプログラミング、情報科学、経済学(特にゲーム理論)の知識が必要です。
例として、スポーツの試合日程の研究についてご紹介しましょう。試合日程における「良さ」の基準は複数ありますが、もしも「アウェイゲームが連続」したら、地元のファンは試合を観戦できず不満に感じますよね。また、「優勝チームが早々と決まってしまう」のも、消化試合が多くなってしまいます。プロスポーツでは、観客数が多くなるような日程を組むことが重要な目標であり、とても難しい問題でもあります。そこで、様々な要求を満たす「良い」試合日程を作成するために、数学的な手法が研究されています。研究成果は実際の試合にも用いられていて、例えばサッカーのJリーグの試合は、研究によって考案された数学的な手法を計算機に実装して、「良い日程」が決められています。
自分の学びは何につながっているのか?
この意識で、勉強が面白くなった
高校生の頃は、機械分野の中で化学プラント設計のようなことがやりたいと考えていましたが、大学進学後、その分野には興味が持てず、また授業についていけず挫折しました。しかし、大学で経営工学科に所属して、「最適化理論」と「オペレーションズ・リサーチ」を専門とする先生に出会い、はじめて勉強が面白いと感じるようになりました。
皆さんはナップサック問題と呼ばれる問題をご存じですか?目の前にある荷物から、重すぎず(ナップサックの重量制限以内で)、できるだけ欲しいものを選んでナップサックに入れる問題です。荷物の数が多くなると、選択肢が大幅に増えるので、難しい問題になることが知られています。授業でこの問題を学んだ時、先生が「ナップサックに入れるのも、ロケットに積むのも同じ問題だね」と言うのを聞いて、とても広い場所に自分が立っているように感じました。そのときから、自分の学んでいることが、何に繋がっているのかを意識するようになり、勉強を面白く感じるようになりました。
経営工学は、高校に対応する科目が無いことから、イメージしにくい学科だと思います。中でも「最適化理論」や「オペレーションズ・リサーチ」は、日本では知名度が低い分野です。しかしアメリカでは、「Operations Research Analyst」は、US News Best Business Jobs(アメリカの時事解説雑誌)で9位にランクされる仕事です。(ちなみに1、2、3位は、それぞれMedical and Health Services Manager、Financial Manager、 Market Research Analystです。)「オペレーションズ・リサーチ」で検索していただけると嬉しいです。
自分が作成した計算式を
世界の人が使ってくれることも
「最適化」の分野は、数学を使って身近な問題を解決できるのが楽しいです。また、そのためのアルゴリズムを構築する作業も気に入っています。
以前私は、「投票力指数」と呼ばれる、各政党の力を計算する方法を研究していたことがあります。この指数を計算するホームページを作った際に、選挙に時期になると多くの人が使ってくださるのを見て、とても嬉しく感じました。さらに英語でのホームページも作成すると、アメリカの大統領選挙といったタイミングでも、(多分アメリカから)多数の方が使ってくださることが分かり、とても嬉しかったです。
数学の定理を証明するだけでなく、それを使ってアルゴリズムを構築して、自分の定理を他人に使ってもらえるのは、とても嬉しく感じます。問題をスピーディに解けるシンプルなアルゴリズムを作ることを心掛け、日々研究に取り組んでいます。
松井先生からのメッセージ
数学が好きだけど、数学者になりたいわけじゃない方。理系だけど、ものづくりは苦手な方。プログラミングは好きだけど、それだけじゃ満足できない方。理系だけど、経済学や社会学も面白そうに見える方。そんな方たちにお勧めしたいのが、最適化理論とアルゴリズムの分野です。興味のある人は、ぜひ私のホームページ)下記のリンクも見てみてください。
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