東京工業大学 理学院 地球惑星科学系 中本泰史先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

惑星ってどうやって形成されたの?
「隕石」から宇宙の神秘に迫る

東京工業大学 理学院 地球惑星科学系 教授
中本 泰史 先生


地球形成の始まりは
たった0.1μmの微粒子

私が取り組んでいるのは、「天文学」や「惑星科学」という分野の研究です。宇宙には、太陽系のように恒星の周りを惑星が回っている惑星系が多数あります。こうした惑星系の成り立ちを明らかにしよう、というのが私の大きな研究テーマです。より専門的に言うと「小惑星・隕石の形成過程の解明」などを行っています。
惑星系は、中心の恒星が誕生するとき同時にできる「原始惑星系円盤」というものから形成されます。これは中心星を取り巻く円盤状の構造をしたもので、主成分は水素とヘリウムのガスです。その中に、質量の割合にして1%程度の固体粒子が混じっていて、その主成分は岩石や鉄などです。ところで、地球のような惑星は岩石と鉄を主成分としています。これが意味することは何だと思いますか?原始惑星系円盤の中に含まれる固体粒子が、時間の経過とともにぶつかってくっつき、ちょっとずつ大きくなって惑星が生まれるということです。固体粒子の大きさは、もともとわずか0.1μmかそれ以下。地球の直径がおよそ1万3千kmですから、それらがおよそ10の42乗個集まってできたわけです。
固体粒子から惑星にいたる道のりの途中で、大きさが10 kmほどの天体群が現れ、これらは「微惑星」と呼ばれています。微惑星は、固体微粒子が集まってできたはずですが、その仕組みはまだよくわかっておらず、謎として残されている問題です。この微惑星が集まってやがて惑星になるのですが、一部の微惑星は成長せず取り残されました。それらが現在、小惑星として見えている天体だと考えられます。
ところで、地球に降ってくる隕石は小惑星の破片です。つまり、隕石の中を調べると、小惑星、ひいては微惑星の内部を調べることができ、そのでき方の解明にもつながるのではないかと考えられます。隕石の中には「コンドリュール」と呼ばれる岩石質の球状組織が多数あります。球状になっているのは、その前駆体である固体粒子が高温になって溶け、表面張力によって球状になったものが再び固化したからです。問題は、石が溶けるような高温を作り出すエネルギー源は何なのか、どんな過程がそんな高温を作り出し固体粒子がコンドリュールになったのか、そして作られたコンドリュールが微惑星に取り込まれるにいたった過程はどのようなものだったのか、ということです。

仮説を科学的に立証すべく
一つひとつ調べていく

ある研究者らによる化学的・岩石学的分析によると、コンドリュールは比較的短い時間で高温となって溶けた後に速やかに冷え固まり、また、そのとき周囲のガス中には岩石成分の蒸気が高い圧力で存在していたようです。そこで私は、次のような仮説を立てました。
まず、原始惑星系円盤中の固体粒子が高い密度で集まり、粒子同士が衝突を繰り返していると電気を帯びるようになります。帯電した粒子たちが微惑星の形成に伴って移動し、正電荷と負電荷が空間的に分かれると電場が生じ、それが十分に強くなったとき、放電、すなわち雷が発生します。雷は強い電流で周囲を熱するため、近くの固体粒子が溶け、コンドリュールになります。雷の持続時間は長くないので、コンドリュールが短時間だけ高温であったという事実とも整合性がとれます。また加熱の際、多数の粒子が同時に高温になるため蒸気が多量に発生し、局所的に圧力が高くなりますが、これも分析結果と合っています。なお、雷が生じるためには漏電が起こらないようガスの電離度が低くないといけませんが、固体粒子の密度が高いところではガスの電離度が低くなることも知られています。
これはまだ仮説の段階であり、科学的に正しいと考えるためには確かめなければならないことがたくさんあります。現在は、そうした事柄を一つひとつ調べているところです。

惑星の形成過程がわかれば
人類の自然理解が前進する

私は子供の頃から漠然と宇宙に興味があり、綺麗で神秘的な天体写真を見て喜んでいるような小学生でした。中学生くらいからは、単に綺麗な写真を見るだけでは物足りず、そうした構造や成り立ちの理屈も知りたいと思うようになりました。高校生になると数学や物理学の視点から宇宙や天体を考えることが好きになり、大学で地球や惑星を物理的に研究する分野に進みました。
惑星形成の研究の一環として、はじめに取り組んだのが原始惑星系円盤に関する理論的研究です。これは天文学と惑星科学の中間に位置する研究分野で、天文学の観測結果と惑星科学の分析・データを結びつけることができると知り、さらに興味が深まりました。現在行っているコンドリュール形成過程の研究は、隕石学の知見と自分の得意とする物理的視点を融合できる上に、微惑星の形成という難問に関わる面白いテーマだと気づき、現在まで20年以上にわたって取り組むことになりました。宇宙のこと、惑星のこと、太陽系のこと、自分が子供の頃から持っていた興味の対象全てが関係していることは単純に面白いと感じますが、惑星の形成過程という大きな謎の一部解明に寄与することができる、それを通して人類の自然理解が前進することに貢献できるというのは、科学的に意義があり、大きなやりがいも感じています。

中本先生からのメッセージ

一つ目。高校時代は、全力で熱を上げて取り組めることに、とことん取り組みましょう。そうした経験は、将来みなさんの宝物になるはずです。
二つ目。自分自身と、友達と、人類全体の、明るい未来を信じましょう。根拠なんかなくてもいいから。夢を見ましょう。

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