過去の巨大噴火を追え!
「火山灰」が教えてくれる日本列島の成り立ち

東京都立大学 都市環境学部 地理環境学科 教授
鈴木 毅彦 先生


地下の地層から大地の歴史を探る、「ボーリングコア」研究

私の研究テーマは、大きく分けて2つあります。1つ目は「日本列島各地の地形がどのように形成されてきたか」を明らかにすること。2つ目は「過去の火山噴火の歴史を復元する」ことです。どちらの研究も現地でのフィールドワークが必要で、持ち帰った試料の室内での分析も欠かせません。
前者で特に力を入れているのは、東北・関東・中部地方の地形についてです。地形の成り立ちを知るには、表面の形を調べるだけでなく、地下の地質調査も必要です。地球の歴史の中で、約260万年前から現在までを「第四紀」と呼び、私はこの時代の地質を重点的に調べています。
中でも、最近特に集中して取り組んでいるのが東京の地下地質についてです。研究では、東京の地中深くから円柱状にくり抜いて採取した「ボーリングコア」という地層のサンプル(泥・砂・レキ層など)を詳しく調べます。そして、その中に含まれる火山灰を「鍵層(離れた場所の地層と比較するための目印)」とします。
火山灰は噴火ごとに成分が異なるため、鍵層を比較することで「どの火山のものか」を特定します。さらに、地層のどの深さにあるかで「いつの時代のものか」が分かり、ある噴火の火山灰がどれくらい広い範囲で見つかるかで「噴火の規模」も推測できます。つまり、ボーリングコアの分析は、「過去に、どの火山が、いつ、どれほど大規模な噴火を起こしたのか」という事実を知ることに繋がっているのです。

火山灰を追って全国へ!
過去数百万年の「火山噴火史」の復元を目指して

もう1つの「火山噴火史を復元する」研究では、関東を離れ、東北や中部、さらには北海道や九州にまで広範囲に火山灰を追跡し、各地域の火山の噴火史を構築しています。
過去10万年間を見ると、火山の中心部が陥没してできる「巨大カルデラ」を形成するような大噴火は、主に北海道や九州で起きやすい傾向にあります。しかし、100万年前より以前の時代にさかのぼると、実は東北や中部地方でもカルデラ火山が存在していたことがわかりました。このような長期にわたる日本列島の火山の実体を明らかにしています。
近年は伊豆諸島の火山の噴火履歴にも強い関心を持ち、調査を行っています。過去にいつ、どれほどの規模の噴火があったかを知ることは、火山災害対策にも直結するため、社会的にも大変重要な意味を持つ研究です。

地図好きの少年が、フィールドワークの虜になるまで

私は小学生の頃から、地図を見るのが大好きな子どもでした。中学・高校で友人と山に登るようになると、「実際に現地に行ってみたい」という思いが強くなり、大学は必然的に地理学科を選びました。
一方、大学入学時点では、現在の研究の軸となる「地学」や「地質」にそれほど強い関心があったわけではありませんでした。しかし、当時の教授陣の研究を知るにつれ、次第に「自然地理学」の研究に引き寄せられていきました。
この研究の最大の魅力は、「さまざまな場所に行けること」だと思います。火山灰の中には日本列島全域に広く分布するものがあり、その痕跡を追って日本のあらゆる場所へ出かけています。大量の論文を読んで仮説を立てた上で、探し求めていた火山灰をフィールドで発見できた瞬間は、言葉にならないほど興奮します。発見場所が深い谷底や切り立った海岸など、アクセスが困難な場所であればなおさらテンションが上がります。知的好奇心と冒険心が同時に満たされる、非常にエキサイティングな研究です。

受験勉強は「自己理解」の第一歩

東京都立大学の都市環境学部地理環境学科は、入学後に学べる専門領域がかなり広く、全国的にも類のないユニークな学科です。だからこそ、事前に「自分が本当に取り組みたい勉強や研究ができるか」「将来の夢を叶える舞台として適しているか」を深く考えられる人にぜひ入学してほしいと願っています。
受験勉強は、多くの人にとって人生で一番努力する場面です。大学受験で学習した細かい内容自体は将来忘れてしまっても、「何を、どのように学習して理解できたのか」あるいは「できなかったのか」という記憶は、ずっと自分の中に残ります。その中で「理解できた」という経験は、自分の得意分野や可能性を知ることに繋がり、大きな自信になります。一方で、苦戦した経験は、自分の弱点を知る貴重な機会にもなります。その自己理解は、大学や社会に出てからの人生において大いに活きてくるはずです。

鈴木先生からのメッセージ

高校時代には、勉強以外にも何か「夢中になれるもの」を見つけてほしいと思います。また、受験期に入っても、勉強以外のことを大切にする心の余裕を持つことも大切です。私自身、高3の秋以降もクラブ活動をやめず、月1回のペースで登山を続けていました。今思えばそれが良い気分転換となり、受験勉強にも大変プラスに働きました。みなさんも上手く息抜きをしながら、最後まで目標に向かって走り抜けてください。

(取材日:2026年4月)

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