東海大学 体育学部 体育学科 松本 秀夫 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

スポーツ心理学で人々の幸福度、健康度の向上を目指す

東海大学 体育学部 体育学科 教授
松本 秀夫 先生


幸福感が高い人とは?

私の専門は、行動科学・スポーツ心理学です。スポーツをする人は、プロや実業団選手などのアスリートだけはありません。仕事や勉強をしながら生活環境やその人のレベルに合わせてやっている人の方が多く、高齢になっても日常的にスポーツに取り組む「生涯スポーツ」人口は増加しています。そして、生涯スポーツとして長期にアウトドアスポーツに取り組む人たちは、Well-being(幸福感)が非常に高いことがわかっています。私が現在取り組んでいるのは、アウトドアスポーツ活動とWell-being(幸福感)についての研究です。簡単にいうと「海とか山などのアウトドアでスポーツ活動している人は、とても楽しそうに活動して、幸せに暮らしているけど、それはなぜだろう?」を研究し、人々の幸福度、健康度の向上を目指しています。

スポーツを「続けたい!」と思えるポイント

人が好きな活動を継続することについて、ブライアンという研究者は「レクリエーションの専門志向化」という言葉で表現しています。「専門志向化」とはつまり、「はじめは初心者でうまくいかないこともあるけど、楽しくて継続するにつれて、用具を変えたり、場所を考えたりと徐々に専門的な活動になっていく」ということです。「レクリエーション」という言葉を使っていますが、サッカーや野球などのスポーツに真剣に取り組んでいるのも、「専門志向化している」と言えます。私の行った調査では、専門志向化された人は満足度や幸福感が高いのです。ところで、長く活動できるのはどうしてだと思いますか? 「面白い」「楽しい」からだと思うかもしれませんが、実は「飽きない」ということが重要なのです。楽しくても、面白くても、一過性の活動だと「もう一度したい」とは思いません。ですから、スポーツが上手になっていくことや異なる状況で活動することで「飽きない」ようにすることが活動を長く継続するために重要な要因なのです。
このように、最初は息抜きや楽しみだった活動も、続けると徐々に専門志向化していきます。それにより人は「住むところ」を変えたり、「仕事」を変えたり、「仕事の時間」を変えたり、ライフスタイルの変容を起こすことがあります。私の調査では、海辺でのサーフィンやカヌーを行うために家を海辺に引越ししたり、仕事を変えたりしている人が多数います。そして、みなさん、Well-being(幸福感)が高いのです。そこには家族が存在し、ファミリーライフスタイルというものが存在します。家庭の中で、父、母、子どもたち、祖父母が、家族全体で海を楽しみます。仕事と生活を統合(ワークライフインテグレーション)して、幸せに暮らしている人々が多数存在するのです。
現在は、特にこのアウトドアスポーツ、ワークラーフインテグレーション、Well-beingの関係について解明したいと考えています。

ポジティブな心理学で
人々が健康で豊かに暮らせる社会の実現に貢献したい

私は高校1.2年生のときは、航空工学、飛行機を設計する仕事をしたいと思っていました。しかし、高校2年生のときに剣道部に新しい先生が赴任されて剣道に夢中になりました。それで、将来は保健体育の教師になりたくて体育学部に進みました。大学入学後に剣道部に入部しましたが、試合で緊張して自分の力が発揮できないこと多々あり、大学院では競技者の心理に興味をもってスポーツ心理学の研究をしました。でも、教養体育の助手として勤務した海洋学部には、競技者はいません。さて、どうしようかなと思っていたら、海で活動する人たちがたくさんいて、自分でも興味を持ってダイビングのインストラクターになり、サーフィンをし、カヌーをし、スキーをしてアウトドアスポーツの虜になりました。そして、多くの友人を得て、そのコミュニティで楽しく活動しました。それ以来、野外で活動する人たちを対象に研究をしています。最初は、スクーバダイビングをする人のパニックや不安などの研究をしていましたが、若い人から高齢者まで皆が一緒に楽しく活動し、そして「幸せ」な生活を送っていることに気がつき、心理学でいうところのストレス、不安、緊張などのネガティブな状況についての研究ではなく、野外での活動がストレス、緊張・不安を低減させること、そしてWell-being(幸福感)を高めていることの研究を行うようになりました。
一般的にスポーツ心理学の研究は、メンタルトレーニングやカウンセリングなど、競技に直結した研究が注目されています。しかし、人類が幸福な社会を構築する上で、自ら楽しく活動をしてWell-beingを高め、幸せだなと感じている人を対象に研究することには、やりがいがあると感じています。今、医療費削減のために運動が推奨されていますが、好きでもない運動を行う人はいません。多くの人々が自ら好きな活動を野外で行うことで幸せになれる、ということを検証することで、健康で豊かに暮らせる幸福な社会の実現への貢献できるのではないかと考えています。

松本先生からのメッセージ

人生は何が起きるかわかりません。私は、剣道をしたくて、保健体育教師になりたくて体育学部に進みました。しかし、今は、剣道も続けてはいますが、アウトドアスポーツを対象に研究、教育をしています。しかし、今の自分があるのは、体育学部、大学院で学んだことのベースがあるからです。皆さんも、今興味があることを学べるところを目指してはいかがでしょうか。

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