Interview
スマホの中身は半導体の塊!
AI技術・情報通信を支える回路設計
東京大学大学院 工学系研究科 電気系工学専攻 教授
飯塚 哲也 先生
私たちの生活を支える半導体集積回路
私は半導体集積回路に関する研究を行っています。「半導体」や「集積回路」と言われてもイマイチしっくりこないかもしれませんが、皆さんが毎日のように使っているスマートフォンやパソコンの中身は、半導体集積回路の塊です。その他にも、家電や自動車など、私たちの日々の生活は半導体集積回路技術の発展によって支えられて、その利便性を向上させてきました。
皆さんにも身近な例では、最近のAI技術の急激な発展が挙げられます。AIというとソフトウェア分野の話のように思われるかもしれませんが、大規模なAI計算を少ない電力で効率的かつ高速に行うための半導体集積回路や、巨大なデータセンターにおける大量のデータ処理と高速通信を支える半導体集積回路など、ハードウェアの発展がその成長を支えています。
また、パソコンなどで計算を行う回路は、0か1の数値で表された「デジタル」信号を取り扱いますが、私たちが生きている世界は光や音、熱などの連続的な「アナログ」の情報で構成されています。例えばスマートフォンのカメラは光というアナログ情報を受け取って、画像ファイルというデジタル情報に変換するための、イメージセンサと呼ばれる半導体集積回路で構成されています。また、最近かなり高速化が進んでいる無線通信技術にも、アナログ信号の電波を空間中でやりとりするためのアナログ集積回路が活躍しています。私たちの研究グループでは、主にこれら自然界と集積システムとのインターフェースとなるアナログ集積回路技術の性能を向上させ、AI技術や情報通信といった分野での社会実装を通して、日々の生活を豊かにすることを目指して研究を行っています。
実生活に直結する技術への強い興味
私は学生時代からパソコンやインターネットに興味があり、それらを支える基盤である電気・電子工学分野への進学を決めました。電気・電子工学分野の講義は多岐にわたり、数多くの面白そうな分野がありました。その中で特に強い興味を持ったのが、半導体技術で生み出されるトランジスタといったデバイスや、それらを組み合わせて実現される集積回路の分野です。この分野は多くの企業が事業として取り組んでいて、産業的にも実用化に近く、成果が社会実装に直結して、日々の生活に大きな進展を生み出す可能性があります。パソコンなどの処理性能が上がるという話だけではなく、ゲーム機が高性能になったり、カメラの画質が上がったり、テレビの映像が綺麗になったり、携帯機器が小型化しても性能は上がりバッテリーが長持ちしたり、多くの技術発展は半導体集積回路技術の発展に依るところが大きいです。
学生時代はそれら集積回路の設計を自動化して、設計する人を楽にするための研究を行っていました。卒業後は、主にテレビなどの映像機器向けの通信用集積回路設計を手がける会社に就職し、アナログ集積回路設計に本格的に従事し始めました。当時自分が設計に関わった集積回路がテレビに搭載されて、実際に家電量販店に並んでいるのを見たときには、大変感慨深かったことを今でも覚えています。その後、大学に教員として戻ってからは、アナログ集積回路システムの性能向上に向けた研究を継続して行っています。
研究の成果が実生活の技術発展に直結
半導体集積回路の研究には、大きな魅力とやりがいがあります。まず挙げられるのは、研究の成果が実生活の技術発展に直接的に結びつく可能性が高いということです。皆さんが普段持ち歩いて取り扱っているスマートフォンは、一昔前のスーパーコンピュータを超えるような計算性能を持ち、外部と大容量の高速な無線通信を行いながら、丸一日以上バッテリーが持つような効率の良い処理をしています。このような性能向上を肌で感じながら、その発展の一助を担える可能性があるのは、大きなやりがいの一つだと思います。実産業に近いということは、研究活動を通して得た知識や技能が、卒業後には即戦力として役に立つということでもあると思います。
また、アナログ集積回路設計は、電気・電子工学で学ぶ知識の集大成と言えるでしょう。半導体デバイスや電気・電子回路設計に関する講義の内容はもちろん、信号処理や制御工学など多くの講義で学ぶ内容を複合的に使います。座学だけではなく、設計した回路の評価を行うためには、測定装置を使いこなす実測技術も必要になってきます。いろいろな知識が必要なのは「難しい」ことだという見方もできるかもしれません。ですが、研究室に入るまでに身に付けた知識を余すところなく使えるのを楽しめる人には、もってこいの分野だと思います。
飯塚先生からのメッセージ
大学入学以降の学習は少し質が変わります。まだ誰も解いたことがない問題に挑戦しなければならなかったり、問題を見つけるところから始める必要があったりもします。自分の持っている知識の総動員で新たな問題を発見し、それに立ち向かう資質が必要になってきます。今後さらにAI技術が進化していく中で、皆さんには「AIに使われてしまう」ことなく、「AIを活用しさらに成長できる人」になって欲しいと思っています。
私自身が理系の道を歩んできて、現在は工学の職に就いているので、受験で学んだ数学や物理の知識は今現在もフル活用しています。例えば、三角関数の積和の公式は、無線通信の中で情報を伝える信号の周波数を変換するために使われていたりします。また、英語でのコミュニケーション能力は、直接役に立つ重要な学習内容かと思います。大学受験で学ぶ内容は、一見すると、受験で点を取るためだけの勉強に見えるかもしれません。ですが、どれも必ず何かの分野に繋がっていて、将来の可能性を広げてくれる一助になると思います。
受験には辛い時期もあるかもしれませんが、この経験を通して得た知識や能力は、将来必ず役に立つときが訪れます。将来の自分自身の可能性を広げるための努力を惜しまず、できるだけ楽しみながら受験勉強に励んでください。
東京大学大学院 工学系研究科 電気系工学専攻
https://www.eeis.t.u-tokyo.ac.jp/
飯塚 哲也先生の研究室
https://www.mos.t.u-tokyo.ac.jp/iizuka/










