東京薬科大学 薬学部 医療衛生薬学科 安達 禎之 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

「きのこの免疫活性化作用でマウスのがんが消えた!?」
β-グルカンは病気の治療や健康維持の強い味方。

東京薬科大学 薬学部 医療衛生薬学科 免疫学教室 教授
安達 禎之 先生


単純な組成のβ-グルカンがなぜ免疫を活性化できるのか

皮膚が真菌(カビやきのこ、酵母など)に感染することで起こる水虫を「皮膚のカビ」と言うこともありますが、皮膚に限らず真菌により引き起こされる感染症を真菌感染症といいます。私は、真菌感染症の早期診断・治療やアレルギーの根治治療への貢献を目指して、自然免疫の反応機構を分子レベルで解析する研究を行っています。
微生物、特に真菌の細胞壁は様々な種類の多糖(糖が重合したもの)で覆われています。真菌が作り出す多糖は、ヒトなどの哺乳動物だけでなく、無脊椎動物や植物の自然免疫系を活性化させることが知られています。私は、きのこなどに含まれるβ-グルカンというグルコースが重合した多糖による免疫活性化作用に着目して長年研究を続けてきました。
今の研究室の門をたたいたのは大学4年生の時です。当時、研究室では、がん免疫療法の研究をしていました。きのこのβ-グルカンで免疫を活性化させると悪性腫瘍を治療できるという魅力的な研究でした。実際に腫瘍細胞を移植したマウスにβ-グルカンを注射すると、一か月ほどで本当にがんが消えたのです。β-グルカンはグルコースのみからなる多糖体です。なぜ単純な組成の多糖体が、免疫を活性化できるのか。免疫細胞はどのような仕組みでβ-グルカンと相互作用して免疫システム全体に影響を及ぼすのか? 実験動物の結果は大変インパクトがあったのですが、詳しいメカニズムは分からないことだらけでした。そのメカニズムを明らかにしたいという思いで研究の世界に足を踏み入れ、今に至ります。
現在は、Dectin-1というβ-グルカン(BG)の受容体を欠損したマウスを使って、真菌感染症だけでなくアレルギーや自己免疫性疾患とDectin-1とBGの関係性を明らかにする研究を行っています。
また、食品に含まれるBGが免疫系に与える効果を調べたり、真菌多糖に対する免疫応答をマウスや細胞を使って解析したりと、食品中のBGを解析する研究も行っています。このようにβグルカンの免疫機能への影響を深く理解することで、様々な疾患に対する新たな治療法の開発や、食品を利用した免疫調節、自分自身での健康管理であるセルフメディケーションへの応用を目指しています。

がんの排除や花粉症発症など様々な活性を示す

β-グルカンは、きのこだけでなく、酵母や病原性真菌、藻類あるいは植物の花粉など様々な生物にあります。これらは、その存在の仕方によって構造に多様性があり、免疫への影響も異なっています。β-グルカンの構造の違いに対応して免疫細胞を活性化させ、がん(腫瘍細胞)の排除や真菌感染防御に役立つ反面、花粉粒のβ-グルカンに対して強く反応して花粉症を引き起こしやすくもします。一方、低分子量のβ-グルカンに反応すると、炎症の緩和に役立つなど、複雑です。また、β-グルカンは上手に使うと既存の医薬品の効果を高めるのに使えそうな結果も得られています。単純な成分からなる物質ですが、複雑な活性を示すということは奥が深い素材と言えます。多様なβ-グルカンの構造と薬効の相関をよりクリアにしていくことが、これらの謎を解くカギだと思っています。興味が尽きません。

安達先生からのメッセージ

1つのことに精通して専門性を極めることはその人の強みになります。しかし、それだけで目標を達成することは困難です。目標達成のために、他の専門の人達と協力して互いの知識、技能、経験を持ち寄り、解決策を見出していくことが必要なことも数多くあります。そのためには、積極的に成果をアピールし、チャンスが舞い降りてきたときに逃さず参加できるように普段からその道を極める努力を継続することが必要です。「これ面白いな」と思うものに出会ったら、その気持ちを大切にしてください。すぐに答えが得られなくても様々なことにチャレンジして問題解決力を身につける準備をしておくと、きっと道が開ける時が来ます。頑張ってください。

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