京都大学大学院 法学研究科 待鳥 聡史 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

私たちの暮らしは「誰が、なぜ、どのように」決めているのか ――「比較」によって明らかにする、政治の本質

京都大学大学院 法学研究科 法政理論専攻公共政策講座 教授
待鳥 聡史 先生


「仕組み」によって左右される、政治の場の意思決定

私たちの日常には、法律・税金・社会保障など、無数の「決まり」があります。政治学の基本的な問いは、そうした「公共的な事柄(≒社会に暮らす誰もに関係する事柄)を、誰が、なぜ、どのようにして決めているのか?」を把握し、その特徴を分析することにあります。
私が専攻しているのは、政治学の中でも「比較政治学」と呼ばれる分野です。比較政治学は、国・地域・時代ごとに存在する共通性や差異に注目しながら、先ほどの問いについて考えていきます。
中でも私は、「政治の場での意思決定の仕組み(=制度)が、意思決定をどう特徴づけるのか」を比較によって明らかにすることに最も関心を向けています。これは「比較政治制度論」と呼ばれており、私の主な研究対象はアメリカの大統領制や日本の議院内閣制です。たとえば、大統領制では行政のトップが国民の直接選挙で選ばれるのに対し、議院内閣制では国会(議会)の信任によって首相が選ばれます。この仕組みの違いが、政策決定のスピードや政治家の行動、ひいては私たちの暮らしにまで影響を与えるのです。

比較政治学の魅力とやりがい
――自分の好奇心が、人々の社会理解を助ける

私が研究を本格的に始めたのは1990年代の前半で、当時は政治学だけでなく、経済学や社会学でも「制度」への関心が高まっていた時代でした。制度と行動の相互作用を分析した研究成果に触れ、「これは面白い」と感じたことが今に至る出発点です。
比較政治学の面白さは、不可解に見える政治現象に対して、制度分析や比較(多国間比較・時系列比較)を通じて合理的な説明が可能になるところだと思います。著書や論文を通じて説明を社会に広く投げかけ、政治現象への人々の理解が深まったと実感できたとき、研究者としてのやりがいを感じます。
世の中の多くの研究の出発点は、研究者自身の個人的な興味や好奇心にあるのではないかと思います。私自身もそうでした。ただ、政治学を含む社会科学は、自分を含む多くの人々が実際に生きる空間を対象にしている学問です。そのため、純粋な好奇心から出発しても、それが最終的に多くの人々の理解につながるかどうかということは、常に意識しながら研究を続けています。

受験勉強は、これからの自分を作る「基礎作業」

大学受験のための勉強は、高校までに学んだことを短期間かつ包括的に整理する作業だと思っています。こうした作業を、誰かに指示されずとも自発的に行う人もいるでしょう。でも、多くの人にとっては、受験・入試という外部の仕組み(制度分析でいうところの「制度的誘因」です)があるからこそ、初めて取り組むことができるものなのではないでしょうか。
こうして整理された知識は、大学での学修に直接役立ちます。政治学なら地歴公民との関係は明らかですが、授業の理解や答案作成には国語力も必須で、最近では数学を使う場面も珍しくありません。学部後半以降は英語を使う科目も増えていきます。
そして何より、受験勉強を通じて得られる「物事を整理する力」、そこから育つ教養や識見は、どんな仕事や暮らしをするにしても、その人を根幹から支えてくれるものです。受験勉強だけで「賢く」なれるわけではありませんが、「賢い」人は受験で得たものを自分の中にうまく取り込んでいる(内面化している)のだと思います。
勉強の途中で「なぜこんなことをしなくちゃいけないのだろう」「これをやって何が得られるのか」と感じることは、ごく当たり前のことです。受験は、「なぜか」「何が得られるのか」が終わった後にしかわからない。しかも一部はかなり時間が経たないとわかりません。だからこそ、「今わからないことの苦しさ」ではなく、「後になるとわかることへの楽しさ」を感じられる人が、いちばんうまく進めていけるのだと思います。
大学に合格すれば受験としては終わりですが、それまでに勉強してきたことがすべて消えるわけではありません。受験勉強を通じて得た知識や経験は、志望校に進学できるかどうかにかかわらず、取り組んだ人それぞれにとって長く意味を持つはずです。これからの自分を作るための「基礎作業」をしているのだと思いながら、毎日を過ごしてほしいと願っています。

待鳥先生からのメッセージ

時間やエネルギーの配分に悩む時期ではありますが、高校生のうちは、できるだけ視野を広げたうえで、何かに打ち込んでほしいと思います。それは、勉強や部活に限りません。学校外で行う趣味でも、何なら恋愛でも構いません。
何かに打ち込む過程を通じて身につく力は、人間としての「基礎体力」になるはずです。その基礎体力があって初めて、受験勉強や大学入学後の活動が充実したものになります。

(取材日:2026年2月)

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