子どもの身体を通して人生の健康を考える
早稲田大学 スポーツ科学学術院 スポーツ科学部 教授
鳥居 俊 先生
子どもの身体から見えてくること
最近は、発育途上にある子どもの身体の変化について研究しています。子どもの体力低下、子どもの怪我(けが)の発生率の上昇が目立っている状況を受けて、子どもの身体の状態、特に成長途中での身体の変化を調べる必要が出てきました。具体的には骨や筋肉や脂肪の量を調べ、身体の組成が成長と共にどのように変わっていくのか、さらにそこに運動が加わったときにどのような効果が出てくるのかということを定期的に調査しています。こうした調査から得られたデータは一時的なものでなく、長い目で見て人の健康維持に役立てることができます。
「メタボ」という言葉が有名になりましたね。その予防策があちこちで話題になりましたが、成人の肥満に子どもの頃の肥満が関わっているという考えは昔からあります。同じように年をとってから現れる、歩けなくなる、転びやすくなるといった症状にも子どもの頃の身体の状態が関係している可能性があります。そのため、子どもの身体と大人の身体が具体的にどのようにつながってくるかがわかれば効果的な予防策を立てられます。しかし、子どもの頃の予防策がどの程度効果があるのかを証明するには、今調査をしている子どもたちが高齢になるまで追わなければなりません。この研究を始めてもうすぐ10年になりますが、私の世代だけではなく、次の世代に引き継いでいかなくてはならない研究でもあるのです。
研究の成果をスポーツの現場に活かす
大学に来る前に、医師の立場として、スポーツのしすぎで自分のしたいスポーツができなくなってしまった選手をたくさん診てきました。それをなんとかして防止してあげないと、選手がかわいそうです。過剰な運動による弊害をなくすためには、スポーツ医学の立場で解明していくとともに、現場に伝えるということが必要です。研究者が1人で研究して喜んでいてもしかたがありません。
この学部では、卒業生で指導者や教員になる人がいるので、研究した成果がすぐに現場に活きてくるルートが太いと思います。だから、ここで私が教えることはとても有意義だと思っています。医学部のなかではこんなにスポーツに偏って研究することは難しいですね。整形外科研究のなかの1つがスポーツに関することですが、医学部としてのスポーツ整形外科を指導・研究するのに精一杯で、これからスポーツの指導者になっていこうとする人たちを教育するということは難しいですね。スポーツの指導を受ける子どもたちがスポーツの悪い面を被ることなく続けていければ、こんなよいことはないと思いますね。
鳥居先生からのメッセージ
スポーツ科学はスポーツ選手のためだけの学問や研究ではありません。多くの人がスポーツを通してどのくらい健康になれるかということを研究し、実践させていくための学問です。自分自身の身体を一生、健康な状態に保つためにも、親になって子どもを育てるときにも役立つ知識を得ることができるのです。スポーツ指導者を目指す人だけでなく、多くの人に興味をもってもらいたいですね。
早稲田大学 スポーツ科学部
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鳥居 俊先生の研究室
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