Interview
目の前のコップすら、映画の題材になりうる
――理論と実践で、次世代の映像人を育てる
東京工芸大学 芸術学部 映像学科 教授
高山 隆一 先生
自らも監督として現場に立ちながら、
映画業界を支える人材を育成する
私は、「制作」と「研究」の二つを軸に、日々映画と向き合っています。
制作面では、数年に一本のペースで自主制作作品を手がけています。研究面では、現代の日本映画、特に最近のインディーズ映画を中心に鑑賞し、大規模な商業映画とは異なる表現の可能性に目を向けています。
以前は映画史や映画理論を専門にしていたのですが、自主制作作品を作るようになったことで、インディーズ映画のキャストやスタッフの方々と直接交流する機会が生まれました。そうした出会いを通じて、商業映画とは異なる価値観や世界観を持つ映画群の魅力を肌で感じるようになり、それが現在の研究につながっています。
また、私が所属する映像学科では、学生たちが映画制作の方法について学んでおり、その指導方法を確立することも重要な研究テーマとなっています。音楽や美術の指導法は長い歴史の中で積み重ねられてきましたが、映画制作の教授法はまだ十分に確立されているとは言えず、機材の使い方を覚えたらあとは実際に作ってみるという「試合で覚える」スタイルになりがちです。時間も費用もかかる映画制作において、より効果的な指導の方法を模索しています。
研究のやりがいと面白さ
――「質」と「実」のせめぎ合いの先にある歓び
映画制作は、「質」と「実」のせめぎ合いです。そこが難しさであり、やりがいでもあると思います。発想は無限でも、それを実現するための時間と費用は有限です。いかに予算とスケジュールを抑えながら、自分の表現したいことを実現するか。脚本の段階からそれを考え抜くことは苦労でもあり、同時に大きな楽しみでもあります。
また、映画は一人では作れません。撮影、音声、照明、編集など、各分野の専門家たちとのコミュニケーションを取りながら進めていく必要があります。それぞれの主張をどうまとめ、一つの作品へと昇華させるか、それも監督としての腕の見せどころです。他者との話し合いは本当に難しい場面もありますが、個々のアイデアによってさらに質が向上する場面をこれまで何度も目にしてきました。これは、団体で行動する映画制作ならではの体験だと思います。
誰でも映画が作れる時代に、何を撮るか
――自主制作・インディーズという表現の場
従来の大手映画会社が制作する映画は、多くの観客に受け入れてもらうことを前提に作られるため、どうしても「商品」としての性格が強くなりがちです。ただ、最近はデジタル化が進み、映画制作は一部の限られた人々だけのものではなくなりました。誰でも映画が撮れる時代になったことで、映画に「自己表現のツール」としての存在価値が生まれたのです。その最たる形が、自主制作やインディーズ映画であると思います。個人の発想から生まれた作品だからこそ、それに共感する人が必ずいる。不特定多数を狙ったテーマよりも個人の在り方の方が、観る人の心に届くこともあると考えています。
高山先生の学生時代は?
――教員免許を目指した学生が、映画に魅了されるまで
私は映画学科出身ですが、実は、入学当初は特に映画に強い興味があったわけではありませんでした。その芸術学部は映画学科でも中学、高校の教員免許が取得できたので、むしろそちらの方が目的でした。しかし、大学の授業で映画の奥深さに触れるうちに、その魅力に強く引き込まれていきました。
それまで見ていたのは、ハリウッド映画のような、強いヒーローが活躍する作品が中心でした。しかし大学で世界中の多様な映画に出会うことで、ヒーローの強さだけでなく、人間の弱さや抱える葛藤にも光を当てる映画の豊かさを知りました。そうして映画という表現そのものを深く学びたいと強く思うようになり、現在に至ります。
今となっては、映画は私の人生を大きく変える存在となりました。映画を観ること、そして作ること。毎日何時間も映画と向き合い、時には喜び、時には苦しみながら過ごしています。運命と呼ぶには大げさかもしれませんが、私の人生は映画と共にあり、その付き合いを通じて今の自分が形作られてきたのだと感じています。
高山先生からのメッセージ
受験勉強は、毎日続けていてもなかなか効果が出ないと感じることがあるかもしれません。ですが、「量が質に転化する」ことを信じてください。今やっている勉強は、個々の教科の知識を得るためだけでなく、これからの人生全体にわたって「思考する」力を育てるための訓練です。そういう志の高さを持って、取り組んでみてください。
また、大学では自分が理解できないこと、納得できないことに出会うことがあります。そのとき、嫌だからと避けるのではなく「なぜ自分にはわからないのか」を謙虚に受け止め、その考え方がなぜ存在するのかを理解した上で、自分の判断を持つことが大切です。一見すると自分には関係ないと思えることでも、日常で出会ったものに興味深く向き合ってみてください。目の前のコップについて語ることすら、映画の題材として十分なのです。さまざまな経験や知識が、後に大きなヒントとなり、人の心を動かす作品につながっていきます。
東京工芸大学 芸術学部 映像学科
https://www.t-kougei.ac.jp/gakubu/arts/imaging/
東京工芸大学 高山 隆一先生
https://www.t-kougei.ac.jp/gakubu/arts/imaging/staff/#staff04










