教科書には載っていない「サービス」の秘密

京都大学 経営管理大学院 経済学研究科 教授
山内 裕 先生


現代の経済を動かしているものは?

経営学の中には「会計学」や「マーケティング」などいろいろありますが、私が研究しているのは「サービス」の分野です。現代は、「サービスなくして経済は語れない」という状況になっています。皆さんが中学校で習った第一次産業・第二次産業・第三次産業の分類においては、第一次でも第二次でもないものが第三次産業になるわけですね。そして現代では就労人口の約7割がこの第三次産業に従事しており、そのほとんどはサービスが関係する分野だと言われています。さらに、今は野菜や機械を売っても利益の出る世の中ではないので、第一次産業もサービスで利益を出す時代に変わりつつあります。そのため、現代の経済においては「サービス」について考えることがとても重要なのです。
私は、ビデオカメラやボイスレコーダーを持って実際の飲食店に行くといったフィールドワークを取り入れて研究を進めています。

「お客様は神様!」じゃない?

「さて、サービスの教科書を読むと「お客様を満足させること」が中心に書かれています。それは間違いではないと思いますが、顧客のニーズに合わせるとか、サービスを明確にする、笑顔で対応するなどという記載を見たときには違和感があります。例えば、ある高級なお寿司屋さんを想像してください。メニュー表もなければ値段も書いていない、親方は愛想がよいというよりも威圧感があったりする。でも人々はそこに高いお金を払うわけです。これは今までの教科書にある理論では説明がつきません。このように客の行動には矛盾したところがあるんですが、考えてみると昔から人間の行動には矛盾しているところがあります。なぜホラー映画を見るのか、とかですね。サービスにはその矛盾が直に出てくるんです。だからサービスやお店を作る時にはこういった矛盾を捉えないといけないですし、成功しているものは、やはりそれを捉えているところがあります。
私が特に重要だと思うのは「価値をどう作るか」ということです。価値というのは要するに「どれだけ人を魅了するか」ということです。上述のように、ただ単にお客さんを喜ばせるというだけでは価値はできないわけで、それには先ほどのお寿司屋さんの例のようにちょっとした居心地の悪さが必要な場合もあるのです。このように価値というものは非常に複雑なものであり、だからこそ、やればやるほど様々な発見があり、研究のしがいがあります。

ヒットには「理由」がある

私の指導する学生たちには、今の社会を分析できて、それを語れる人材になってもらいたいと思っています。なんでもないものがヒットするわけはないので、流行っているものには理由があります。また、人気のカフェやホテルでも、もしこれが10年前だったら流行っていなかったかもしれません。時代や文化的背景など様々な要素を理解したうえで作り上げられたものが人々を魅了するのです。今「こんな便利なものができた」と言っても商品は売れません。なぜなら世の中は商品の宣伝であふれかえっており、本当に良いものだったとしても消費者は信じられないからです。なので商品やサービスを作ったり、経営者になろうとしたりする人は、時代の流れを理解し、その中で何が価値を持つのかを考えることが必要ですね。

山内先生からのメッセージ

私は高校生の時に、コンピューターなどを開発していたアメリカの研究所に関する本を読んで感動して、大学では情報工学を専攻しました。しかし、大学院に進むときに「なんか違うな」と思い、経営学に専攻を変えたんです。そして、面白いことにその後、本で読んだ研究所に経営学者として就職をしたんです。だから皆さんに言いたいのは「分野にはこだわらなくても大丈夫」ということです。「これ面白いな」って思ったことは、「こうしないとできない」ということはなく、遠回りでも最終的には近づいていけるはずです。あまり自分を押し込めすぎずに進路を選んでみてください。

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