「人にやさしいデザイン」を追求する!
“人間”と“システム”の関係を科学する「人間工学」

玉川大学 工学部 デザインサイエンス学科 教授
三林 洋介 先生


人とシステムをつなぐ、最適解を探る

技術革新が進みハイスペック製品や高度システムが次々に登場していますが、それらは使用者にとって安心で安全、快適であることが大切です。私は、人にやさしいデザインとは何かを追求しつつ、「人間工学」の研究に取り組んでいます。人間工学とは、簡単に言うと、人間とシステムとの関係を科学的に理解する学問です。また、研究から得た理論、原理、データおよび方法を設計に活かすことで、システム全体の能力と人間へのメリットを最適化することを目指す実践的な科学でもあります。さまざまな要素を考えた上で人間とシステムの相互作用を最適化すること、すなわち「ヒューマンインターフェイスの適正化」が大きな研究課題であり、研究テーマです。

「誰にでも開けやすい包装」とは?

私の研究対象は、医療現場から交通安全、家電製品の開発研究まで、さまざまな領域に及びます。研究方法の一例としては、人間の視覚情報処理(人間は見たものをどのように処理しているか)の測定などが挙げられます。人間は外部情報の8割を視覚から取り込んでいるため、視覚情報の計測は人間が外部情報を理解する上で極めて有効です。そのため、ヒューマンインターフェイスのインプットを視覚計測したり、アウトプットを行動・動作計測して関係性を分析したりすると多くの知見が得られます。
研究テーマの一例として、医薬品包装の開封容易性(薬の包装の開けやすさ)に関する研究のお話をしましょう。医薬品の開封の仕方は人によって様々ですが、それらのインターフェイス(薬の開け方)を様々な条件で測定して分析することで、どんな人にも当てはまるような普遍的な原理、原則が見出されます。そこから新しい包装デザインが開発されるのです。

「人にやさしい人間工学」は、様々な仕事に適用できる

私は企業で、QCD(Quality(品質)、 Cost(価格) Delivery(納期))の適正化を図るシステム管理業務に取り組んでいました。それを追求していて、最終的に辿り着いたのが「人間」でした。人間は十人十色で、それぞれに好き嫌いもあり、多様性に満ちた存在です。そこに共通して存在する普遍的なものを見つけ出して、それに基づいたデザインを考えていくうちに、人間工学の分野の研究にいつの間にかはまっていって、現在は教育研究するに至っています。
私の教え子たちの進路は様々ですが、私の研究室が「工学部デザインサイエンス学科」なので、メーカーの製品設計などの開発、生産、品質製造技術職、システムエンジニアなどが中心です。このことから、「人にやさしい人間工学」は様々な仕事に適用できると自信をもっています。
人間工学は横断的な学問です。様々な専門領域から広くアプローチしつつ適正な答えを見つけてデザインすることが、研究の醍醐味です。私の研究室では、まず人間の特性を生理学、心理学の観点から学びます。その学びから生体機能の計測法、データの取り扱い、解析、分析方法を習得していきます。卒業修了年次になると、それまでに各自が発掘したフィールドやテーマについて人間工学的評価をすること、また、開発研究の実践、探求をすることで研究を進めます。企業や他大学の人間工学研究室とも積極的に交流、共同研究を行っています。こうしたことから研究の面白さややりがいも見出しています。

三林先生からのメッセージ

皆さんのように若い時期には、視野を広げ、いろいろなことにチャレンジし、また、興味を持って勉強するのがよいと思います。一つのことを深く掘り下げることも大切ですが、最初からそれだけだと、井の中の蛙(かわず)にもなりかねません。自分の強み以外にもさまざまな分野に関心を持つようになると、専門性も広がりますし、複合的・横断的な取り組みによって、まったく新しいアイデアが浮かんでくるかもしれません。ぜひ、広範囲な視点で勉強に取り組んでみてください。

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