東京大学大学院 工学系研究科 柳澤 大地 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

「流れあるところに渋滞あり!」
―世の中のあらゆる「渋滞」を解消する研究

東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 准教授
柳澤 大地 先生


アリの行列は、なぜ渋滞しないのか
――数学で解き明かす、「流れ」と「詰まり」

私の専門は「渋滞学」です。名前を聞いて、「車の渋滞を研究するの?」と思った人もいるかもしれません。たしかに車の渋滞を含む交通関連の内容も扱いますが、それだけではありません。動物・昆虫の群れや体内の分子モーター(タンパク質の一種)、空気・水・粉、お金、情報、仕事まで、世の中のあらゆるものは流れています。そして、その「流れ」が滞ると、多くの場合困ったことが起きます。渋滞学は、「流れあるところに渋滞あり!」の精神で、様々な流れを統一的に理解し、問題の解消を目指す学問です。
研究対象となるものには、それぞれに確立された専門分野があります。車の渋滞であれば交通工学、動物や昆虫、タンパク質は生物の範囲になりますし、お金であればもちろん経済学です。渋滞学ではこうした分野を横断的に扱いますが、どうやって解決の糸口を見つけるのでしょうか。その鍵となるのが、「数学」です。
ひとつ例を挙げると、空気や水の流れを記述する「ナビエ・ストークス方程式」という方程式があります。これを変形していくと、車の流れの基本モデルのひとつと同じ形になります。このように、一見まったく異なる現象でも、数学の方程式で記述すると類似性を見出だせることがあるのです。
この発想を応用すれば、いろいろと面白いことが考えられます。たとえば、アリの中には列を作って移動する時に渋滞しない種類がいます。このアリの行動を定式化すれば、車の交通渋滞を減らすことにつながるかもしれません。また、我々はよく人の流れの実験をするのですが、人がパニックになり、衝突を繰り返しながら避難するような実験は非常に危険ですので、当然実施できません。でも、人をパチンコ玉に置き換えて計算すれば、再現できるかもしれません。
渋滞学は、一見すると無味乾燥に思われがちな数学の理論を、渋滞という社会課題の解決に応用していく非常に実用的な学問なのです。

研究のやりがいと面白さ
――「危うく叫びそう」になるほど熱中できるわけは?

渋滞学の魅力は、大きく分けると4つあります。
1つ目は、理論的な面白さです。渋滞学では様々な現象を数学の方程式で記述し、人の流れの速さや待ち時間を綺麗な数式で導くことを目指します。現実の現象が複雑になれば方程式も難しくなるので、そう簡単には解けません。でも、解けた時の快感と感動はひとしおです。
2つ目は、シミュレータ作成におけるモノづくり的な面白さです。方程式をプログラミングして車や人が動くアニメーションが完成すると、ひとつの作品を仕上げたような達成感があります。
3つ目は、自分の理論が実験結果と一致したときです。いくら難しい方程式が解けても、どんなに美しいアニメーションを作れても、現実的でなければ机上の空論です。実験結果と一致することは、まさに自分の理論が正しいと証明されたことであり、これに勝る喜びはありません。私は、避難経路の出口の前に「適切に」障害物を設置すると早く避難できるという仮説を実験で検証したことがありますが、実際に時間の短縮が確認できたときは危うく叫びそうになりました。(なお、障害物の設置は調整が非常に難しいので、ご自宅では決して真似しないでください!)
4つ目は、自分の研究成果を面白いと言ってもらえたときですね。学会で評価されるときはもちろんですが、一般の方への講演後に面白かったと感想を頂けるのはこの上ない喜びです。数学が役立つことが伝わって、渋滞学や数学に興味を持ってもらえるのは非常に嬉しいです。

渋滞学研究に向いているのはどんな人?

「様々なことに興味を持って何でも積極的に取り組める方」となると思います。特に、渋滞学は分野をまたいで考える学問なので、持っている知識が多ければ多いほど、他の人が考えないような幅広く面白い研究ができます。最近はAIを取り入れた先進的な研究も増えているので、どのような方でも興味を持って楽しく研究できる学問だと思います。

柳澤先生の学生時代
――研究者への道を後押しした「変わった趣味」とは?

私は中高生くらいのとき、混雑した駅をどのように歩いたら最も早く移動できるかといったことを自分なりに仮定し、計算して遊んでいました。当時、自分では「変な趣味」だと思って人には話せなかったのですが、これが今の研究につながっているように思います。
受験勉強については、やはり大変でした。私が受験生だった頃は、受験科目以外の勉強は無意味といったような考えも横行していましたし、実は私自身も「みんなが行くから自分も大学に行く」というモチベーションで大学に進学したんです。でも、入学後に受けた渋滞学の創始者である西成先生の授業と卒業研究が本当に楽しくて。その結果、今に至ります。当時は「変な趣味」だった移動の予測が、今となっては社会問題の解決につながっていて、こんなに素晴らしいことはないと思っています。

柳澤先生からのメッセージ

受験を乗り越えると、各科目の知識だけでなく、忍耐力・計画性などあらゆる能力が確実にレベルアップします。
未来のことは受験後に考えましょう。皆さんの大学受験が、よいものになるよう応援しています!

(取材日:2026年2月)

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