東京海洋大学 水圏生物生産工学研究所 森田 哲朗 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

「夢あじ」はどう生まれた?
養殖を支える新技術で、魚の未来をつくる

東京海洋大学 水圏生物生産工学研究所 准教授
森田 哲朗 先生


代理親魚技法で、入手困難な魚を安定生産へ

今、研究から生まれた新しい養殖魚「夢あじ」が、大学発ベンチャー企業を通じて世の中に流通しようとしていることを、皆さんはご存じですか?私は、東京海洋大学で長年開発されてきた「代理親魚技法」という技術を応用して、新しい養殖魚を開発する研究をしています。これは、目的の魚の卵や精子のもとになる「生殖幹細胞」を、別の魚である代理親に移植し、その代理親から目的の魚の卵や精子を得ることを目指す方法です。生殖幹細胞はどの魚も持っている細胞で、うまく活用できれば、入手が難しい魚でも安定して生産し、養殖魚として確立できる可能性があります。私は研究として成果を出すだけでなく、水産の現場で本当に使える形に磨き上げ、社会に実装することを目標にしています。実用化には、技術の再現性や広げやすさ、費用に見合うかどうか、できた魚の品質をどう保証するかなど、基盤ができた後にこそ多くの課題があります。しかし、だからこそ取り組む価値があると考えています。「夢あじ」は、その研究成果の一つです。

「研究」と「現場」の隔たりを取り除くには?

私は子どもの頃から、近所の魚を捕まえて眺めて過ごし、魚に関わることを仕事にしたいと思い続けてきました。高校入学の時にはすでに水産系の大学に進むと決めていて、大学では恩師のもとで、ニジマスの遺伝子組換えに関する研究に没頭しました。そのまま博士号まで取得しましたが、その頃には、大学の研究成果と現場で実用される技術の間に隔たりがあると感じるようになりました。その後、水産系の大手民間企業に入り、養殖技術開発に携わる中で感じたのは、真に新しい技術を社会で実装するには、需要と供給を結びつけることが欠かせず、さらに機運のような要素も必要だということでした。そんなとき、東京海洋大学の水圏生物生産工学研究所が、先進技術の社会実装をミッションの一つに掲げて立ち上がると知ったのです。これこそが機運になるかもしれないと思って迷わず挑戦したことが、今の研究につながっています。

生命の不思議を学ぶ面白さと、食や資源を支えるやりがい

私が一番面白いと感じているのは、生命現象の不思議を学ぶことと、社会課題を解決することが、同じ延長線上にあると感じながら研究を進められる点です。私が扱う魚類の生殖幹細胞は、命を次世代につなぐ根幹に関わる存在です。その細胞について学び、技術として扱えるようにすること自体が、とても面白いと感じています。さらに、その技術が養殖の安定化につながり、食を支え、資源を守ることにもつながる点に、大きなやりがいがあります。研究は思い通りにいかないことのほうが多いですが、仮説を立てて試し、失敗から学び、次の手を考えることを繰り返す中で、社会とのつながりが見えていることは大きな支えになります。私は大学で研究を進めながら、東京海洋大学発のスタートアップ「さかなドリーム」の創業者の一人として、生殖幹細胞の操作技術を社会に届ける段階まで、あと一歩のところまで来ています。若い頃から気になっていた研究と実用の隔たりが、少しだけ埋められたように感じています。

森田先生からのメッセージ

受験期は、結果が見えないまま努力を続ける時間があり、不安になることもあると思います。そんなときは、自分は何のために学ぶのかを、ほんの一言でもいいので言葉にして持っておくと良いと思います。将来の目標がはっきり決まっていなくても構いません。「選択肢を増やしたい」や「好きなことに近づきたい」でも十分です。もし勉強が好きになれないと感じても、焦らなくて大丈夫です。私自身、勉強への意欲が高いタイプではありませんでしたが、好きなものに引っ張られてここまで来ました。受験はゴールではなく、スタートの一つです。じっくり、丁寧に積み上げてください。その努力は、必ずどこかで自分を助けます。応援しています。

(取材日:2026年2月)

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