お化け屋敷 × ICT技術
人間の「恐怖」を科学する

大阪電気通信大学 総合情報学部 デジタルゲーム学科 ゲーム・社会デザイン専攻 教授
魚井 宏高 先生


VR体験型アトラクション「デジタルホラーハウス」

私はVR技術やセンサーなどのICT技術を使って、「人を怖がらせる技術の自動化」に取り組んでいます。大きなテーマとしては「人と機械の間にあるものすべての改善」を掲げており、人と機械の関わり方(ヒューマンインタラクション)、プログラミング言語と開発環境、教育システムなどを研究しています。
私の研究室では毎年、学生と一緒に「デジタルホラーハウス」というVR体験型アトラクションを制作しています。参加者はVRゴーグルを装着して仮想空間の中を歩き回り、その中で起こる出来事によって恐怖を体験します。参加者の位置や動きはVRゴーグルやセンサーで検出していて、どのタイミングで何を見せると一番効果的かを計算しながら演出を行います。つまり、人がタイミングを見て驚かせるお化け屋敷を、できるだけ機械で再現できないかということを試しているのです。
この研究は娯楽の研究でもあり、人間の感覚や感情から、人とコンピュータの関係を考える研究でもあります。恐怖という感情は人間の反応がとてもはっきり現れるので、研究テーマとして非常に面白いと感じています。

人間の知覚を観察し「絶妙なタイミング」を再現

この研究では、人間の感覚や心理の面白さを実際の体験を通して観察することができます。例えば、ある年のデジタルホラーハウスでは、参加者に「壁に手をついて歩いてください」と指示して体験してもらいました。ところが実際にそこにあったのは壁ではなく、柔らかい蚊帳だったのです。それでも多くの人は「壁」だと思って歩き続けます。最初にそう言われると、人はそれを信じてしまうのです。こういう現象を見ると、人間の知覚というのは本当に不思議で面白いと感じます。
この研究を始めたきっかけは、友人とお化け屋敷に入ったときのことです。「人はどういう仕組みでこんなに怖いと感じるんだろう?」と疑問に思ったのが始まりです。お化け屋敷にはいろいろなタイプがありますが、実際に体験してみると、人が脅かしてくるタイプのお化け屋敷のほうが圧倒的に怖いです。機械仕掛けのものは動きが決まっていて、だいたい予測できてしまいますが、人間はこちらの様子を見ながら絶妙なタイミングで驚かせてくるからです。そこで、センサーやコンピュータの技術を使えば機械でも同じようなことができるのではないかと考え、学生と一緒にデジタルホラーハウスの研究を始めました。最初はかなり簡単な仕組みでしたが、毎年少しずつ改良を重ね、今ではかなりリアルな体験ができるようになってきています。

システム開発における「人がどう感じるか」という視点

この研究では実際に体験型の作品を制作するので、研究成果を一般の人に体験してもらえるのも魅力です。イベントとして公開すると、「怖かった」「面白かった」という感想を参加者から直接聞くことができます。研究の結果が人のリアクションとしてすぐに返ってくるのは、とても楽しいです。
私は「人がどう感じるか」「どういう体験をすると面白いのか」ということに興味を持って研究をしてきました。ゲームやインタラクティブなシステムを作る場合でも、技術だけでなく、人がどう感じるかという視点がとても大事です。どんな演出をすると面白いのか、どんな体験をすると印象に残るのかを考えることも、この研究の大切な部分です。新しい技術が好きな人だけでなく、「人がどう感じるか」に興味を持てる人にも、ぜひこの分野に来てほしいと思っています。

魚井先生からのメッセージ

将来何をしたいか、高校生の段階で完全に決めるのはとても難しいことだと思います。私自身も学生の頃は、今のような研究をするとはまったく思っていませんでした。ですから、いきなり10年後の自分を想像する必要はありません。まずは半年後や1年後にどうなっていたいかを考えて、そのためにできることを少しずつ積み上げていけばいいと思います。興味を持ったことに取り組んでいくうちに、自分がやりたいことが少しずつ見えてきます。受験勉強は大変だと思いますが、その努力はきっと将来につながります。自分の可能性を信じて頑張ってください。応援しています。

(取材日:2026年3月)

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