球体とドーナツ、空間の形の違いとは?

筑波大学 システム情報系 社会工学域 教授
八森 正泰 先生


球体とドーナツ、空間の形の違いとは?

すごく大きな球体とドーナツ、それぞれの表面にとても小さい自分が立っている様子をイメージしてみてください。球体もドーナツも地球と同じくらい大きくて全体を見渡せず、自分の周囲のごく小さい範囲だけしか見えないとすると、今自分が球体とドーナツのどちらの上に立っているのか分からないでしょう。でも、球体とドーナツは明らかに違う形をしていますね。このような空間の形の違いをどのように数学的にとらえればよいのか、こういったことを考える学問を「トポロジー」と言います。私が研究しているのは、このトポロジーのいろいろな道具を組合せ論と呼ばれる分野に応用する、「トポロジー的組合せ論」や「幾何学的組合せ論」という分野です。トポロジーが空間の形について考える学問であるのに対し、幾何学はトポロジーよりもう少しかっちりとした、図形の角度や距離なども含めて考える学問です。組合せ論というのは、物と物の間のつながりや大小関係などをもとに、そこからどのようなことがわかるかを考えたりする学問です。皆さんが高校の数学の授業で習う「組合せ」とも関連しています。この組合せ論と幾何学・トポロジーとのつながりや、そのための基礎となる図形や立体、それらの切り分け方などの性質を調べる、といったような数学の研究をしています。

専門を決めた1冊の本との出会い

大学に入学する時点では、漠然と「研究者になりたい」と思いながらも、何をやりたいのかは定まっていなかったので、理系の学問全般を幅広く学べる学科に進学しました。卒業研究の時に入った研究室で最初に学んだのが、幾何学的組合せ論でした。その後修士課程の1年目のときに、大学生協の書籍売り場に新刊として積まれていたツィーグラーの凸多面体の本の原書が目にとまり、何となく手にとってパラパラめくったときに、中に書かれていた絵を見て、「これは自分のやりたい研究に違いない」と確信して、少し高価な本でしたがその場で購入しました。そこに書かれているいろいろなトピックと各章末につけられている現在進行形の研究の紹介にわくわくしながら読み、その中でトポロジー的組合せ論の一連の研究を知り、そこから現在の研究を始めました。この書籍との出会いがその後の自分の研究の方向性をはっきりと決めることになりました。この書籍は、のちに『凸多面体の数学』(丸善出版)として和訳書を出版するときに訳者として貢献することになりました。

八森先生からのメッセージ

世の中の役に立つこと、自分の将来のために役に立つことを学びたい、やりたい、と考える人は多いと思います。そういうことが大事というのも一面ですが、何の役に立つのか分からなくても、自分が面白い、楽しい、と思えることはもっと大切だと思っています。受験勉強の中でも、受験に役立つかどうかとは別の次元で、その学び自体の中にも面白さや楽しさがあるでしょう。将来のいろいろな場面で、これは面白い、楽しい、やりたい、という気持ちを大事にしてほしいと思います。

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