Interview
歯周病で失われた組織を
より効果的に再生する方法を求めて
東京歯科大学 歯周病学講座 教授
齋藤 淳 先生
世界をリードする再生療法の最前線へ
現在は、歯周病で失われた組織を再生するため基礎・臨床研究と歯周病原細菌に対する体内の細胞の反応についての2つを研究テーマとして扱っています。
1つ目の歯周病で失われた組織を再生する研究は世界中で行われており、現在、日本においても一部臨床応用されているものがあります。その代表的なものが、細胞の増殖、分化を調整する「塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)」を用いる方法です。これは大阪大学の村上伸也教授の研究チームが開発し、国内の様々な機関が協力するオールジャパン体制で臨床治験を行い、2016年に世界に先駆けて日本で臨床応用されました。私たちは、この「FGF-2」製剤を使用した再生療法の長期的な効果を評価する臨床研究を行っています。
また、より効果が高い再生療法の開発に向けた基礎研究も行っています。歯周組織の再生には、「FGF-2」のような細胞の増殖を促進する「生活活性物質」の他、再生を行うための適切な環境やサポートを提供する「足場」「細胞」「血流」などの因子が重要となります。これらの因子を効果的に組み合わせて、より重篤な症例に対しても効果を発揮する治療法を見いだすための取り組みです。
細菌と免疫の攻防を探り、歯周病の発症・進展の解明に迫る
2つ目の研究テーマ、歯周病原細菌に対する体内の細胞の反応についても説明します。
歯周病の主な原因は歯と歯肉の間に存在するデンタルプラーク)中の歯周病原細菌です。しかし、歯周病の発症・進展には、歯周病原細菌のみならず、体内に侵入してきた細菌等の異物を攻撃して防御しようとする宿主免疫応答とのバランスの乱れが関係しています。私たちは、歯周病原細菌の病原性や免疫応答に関する詳細な研究を継続して行っています。
例を挙げると、主要な歯周病原細菌に対して、白血球の一つである「マクロファージ」等の宿主細胞がどのような反応を示すのかについて調べる研究があります。また、歯周病原細菌は、宿主免疫応答から逃れるために、細胞内に侵入することが知られていますが、そのメカニズムを明らかにする研究にも取り組んできました。これらの解明は、歯周病の発症・進展を抑制することにつながります。
患者の健康や生活の質に直結するやりがい
私がこの研究を始めたのは、歯学部の学生時代、微生物学講座の先生方の講義がとてもおもしろく、卒業論文のための研究を行わせていただいたのがきっかけです。臨床を志していたので、歯周病学講座の大学院に進学し、現在も講座で研究を続けています。研究でアメリカに留学し、その分野の世界的権威の研究者から指導を受けたことも、その後の進路につながりました。病気の原因やそれに対する効果的な対応について研究することは、とても意義のあることです。また、失われた組織を再生させる研究や臨床は、とてもエキサイティングで、患者さんの健康やQOL(生活の質)に直結します。また、海外の学会に参加し、世界中から参加する研究者・臨床家と交流できることも、研究のやりがいにつながっています。
受験勉強は決して無駄にはなりません。「鉄は熱いうちに打て」と言わるように、今、やらなければいけないことに没頭することが、将来、大きな成果につながると思います。得意科目を持つことも大切です。例えば、英語は入試に大きな影響を及ぼすだけでなく、将来、とても役に立つことは身をもって感じています。今の時代、英語を勉強する方法は沢山あります。受験勉強だけでなく、すき間時間に、自分に合った方法で英語力を高めることに取り組んでいただきたいと思います。