熱中症の予兆から、犬の気持ちまで
心身の「見えないサイン」を読み解くデータサイエンス
関西大学ビジネスデータサイエンス学部 准教授
丸野 由希 先生
AI×異分野タッグで社会の課題に挑む
私は現在、AI・機械学習を使った応用研究に取り組んでいます。ひとことで言えば、スマートウォッチが心拍数を読み取るように、身体から得られるデータや画像をAIで分析し、人や動物の体調や気持ちの変化など「見えない状態」を読み取ろうとする研究です。これまで、心拍のわずかな「ゆらぎ」から熱中症になりかけているサインを早期に検知する研究や、首の画像から食べ物をうまく飲み込めなくなる「嚥下(えんげ)障害」を自動で見つける研究、犬の生体信号からストレスやリラックスといった気持ちを推定する研究などに取り組んできました。
私の研究の最大の特徴は、医療や獣医学など、他分野の研究者との共同研究がメインであることです。1人では解けない問題に対し、それぞれの専門性を持ち寄って協力して取り組んでいます。
きっかけは「現場の悩みを解決したい」
この研究を始めた一番のきっかけは、他分野の先生方との出会いでした。最初から特定のテーマを決めていたわけではなく、先生方が現場で抱える「解決したい問題」や「解明したい現象」に触れるなかで、「自分が培ってきたデータ分析技術で解決できるかもしれない」と感じたことが出発点です。現場に寄り添うこの研究スタイルには、かつて企業でITエンジニアとして働いた経験が大きく影響しています。実務を通じて「何のために取り組むのか」を突き詰める習慣がついたことが、共同研究者と同じ課題を見つめ、ともに解決へと歩む今の姿勢につながっています。
AIの「お宝発見」を導くのは、人間による「問い」
一番のやりがいは、自身のデータ分析が熱中症の重症化を防ぐなど、社会課題の解決に直結する瞬間です。異なる専門家と力を合わせることで、1人では決してたどり着けなかった答えを導き出せる手応えが、この研究の大きな魅力です。また、AIは人間が見落としがちなパターンを膨大なデータから拾い上げるのが得意で、時に「思いがけない宝物」のような発見をもたらします。しかし、その宝物はただデータを見ているだけでは現れません。人間が適切な「問いを立てる力」を持って臨んでこそ、初めて見えてくるものです。「何を、なぜ探すのか」を決めるのはあくまで人間であるという点に、この研究の奥深さと面白さがあります。
夢中になった経験が、大学で大きく育つ「芽」になる
本学部が目指すのは、ビジネスとデータサイエンスの力で社会の課題を解決し、新たな価値を生み出す人材を育てることです。そのために大切なのは、「周りと協力しながら学ぶ姿勢」と「物事を最後までやりきれる力」です。これは根性論ではなく、「何のためにやっているのか」を言葉で説明できる力のことです。自分で考え、周りと協力しながら行動していく――そうした「考動(考えて動く)力」は、「芽」となる素養さえあれば、入学時に完成している必要はありません。本学部の学びの中でそれは大きく育ちます。
高校時代は、何か1つでも時間を忘れるほど夢中になれることに取り組んでみてください。特に、考えの異なる仲間と協力して1つのことをやり遂げた経験は、将来の「協働」における確かな土台になります。いろいろな人に話を聞いたり、オープンキャンパスやイベントに足を運んだり、意識的に自分の関心の外側にある世界に触れることで、思いがけず「本気で打ち込めるもの」が見つかるかもしれません。そうして培った経験を土台に、わくわくしながら新しい学びへ挑戦してくれる学生の入学をお待ちしています。
丸野先生からのメッセージ
受験勉強は、大学やその後の人生において大きな武器になります。特に国語や英語で培う「自分の考えを言葉にする力」は極めて重要です。AIに指示を出すときも、「何をしたいのか」を論理的に整理して明確に伝える力が求められます。丁寧な読解力と論理的思考力があってこそ、AIの回答を正しく見極めて味方にできるのです。文理を問わず、データを読み解き言葉で伝える力は、この先あらゆる分野で活き続けます。AIが当たり前の時代だからこそ、自分の頭で考え学ぶ力こそが皆さんを支えてくれます。
受験期は不安も多いと思いますが、完璧を求めるよりも「Let’s try anyway(まずはやってみる)」を大切にしてください。まず手を動かし、たとえ壁にぶつかっても、そこで何に気づき、どう乗り越えるかを考える経験そのものが、必ず次につながります。自分の興味や関心を大切に、その先に広がる豊かな学びの世界を楽しみに進んでいってください。心から応援しています。









