自然の恵みがもたらす発酵微生物から
オリジナルの地域ブランド食品を作り出す

山梨大学 大学院 総合研究部 生命環境学域 生命農学系(地域食物科学・ワイン科学研究センター) 教授
柳田 藤寿 先生


その土地に根差した
高品質かつ独自性のある食品を開発

私は山梨県内各地の湖、川、水、雪などから有用な発酵微生物(酵母や乳酸菌など)を分離し、ワインや飲料をはじめとした新たな発酵食品開発を行っています。いずれも、高品質かつ独自性のある新たな地域ブランド食品です。これまでに開発した商品の一部とともに、研究内容を紹介します。

まずワインですが、日本ワインの中に私の開発した世界初の海洋酵母ワインがあります。海洋酵母は、三共製薬(現在の第一三共製薬)が医薬品の開発のために海洋環境から分離・培養に成功した酵母です。分析の結果、この酵母は味にキレをもたらすリンゴ酸やうまみの酸となるコハク酸の生産性が高いのが特徴とわかりました。この株を用いて2000年にサッポロワイン(株)から「海の酵母ワイン」として発売、その後、山梨大学ワイン「山梨甲州2011」海洋酵母仕込みとして発売され、いずれも大変好評を得ました。また、別のワインに「赤池幻酵母ワイン2013」があります。赤池は、富士北麓にある湖で、6~9年に一度、降雨量の多い時に現れる「幻の湖」で富士六湖とも呼ばれています。2011年9月に7年ぶりに出現した赤池の湖水から発酵性のSaccharomyces 属酵母の分離を試みました。その結果、酵母11株を分離し、これらの株を用いてワインの試験醸造を行ったところ複数の株が旺盛な発酵を示し官能検査においても良好な酒質であることが認められ、その後甲州ブドウを用いてワインを作り、商品として販売するに至りました。
ドリンクもご紹介します。2010年4月に「大豆で作った飲むヨーグルト」を開発、販売しました。以下の4つが大きな開発ポイントとなっています。①飲料用大豆(青臭みの少ない)「すずさやか」の使用、②「南アルプス天然水」で知られるミネラルウォーター生産日本一の北杜市の「尾白川の水」での仕込み、③大豆を生のまま微粉砕して仕込水に溶かし込む「大豆丸ごと製法」技術の採用(おから成分である食物繊維が豊富に含まれる)。④厳選された乳酸菌と山梨大学で開発された「山梨ワイン酵母W-3」で時間をかけて発酵(ワイン酵母を入れることにより、大豆臭を少なくすることが可能に)。さらに、とうもろこしのドリンクも作りました。日中と夜間の寒暖差で甘く仕上がる忍野村産トウモロコシを村内の忍野八海の豊富な湧水から分離した植物性乳酸菌で発酵させた、新感覚のドリンクです。忍野八海の湧水から122株の乳酸菌を分離し、優良乳酸菌の選抜を行ったところ4株の乳酸菌が飲料開発に利用可能でした。その中から選抜した株から、2020年に新たにトウモロコシ乳酸菌飲料を開発し発売しました。

酵母発酵物による化粧品の研究開発にも携わる

食品だけでなく化粧品の研究も行っています。ミヤコ化学(株)との共同研究で、甲州ブドウを酵母で発酵させた発酵液に効果がありました。これは、ブドウ果実由来の酵母を有効成分とする皮膚外用剤で、有効成分である酵母発酵物が紫外線によりダメージを受けた表皮細胞の回復効果を有し、これにより、肌荒れ改善用、保湿用、抗老化用、または美白用として有用だという研究結果です。これに使用した酵母は、前述の赤池幻酵母です。本発明の酵母発酵物は、一般的な発酵物よりすぐれた表皮細胞UVダメージ回復効果を有することも確認されており、2020年4月に特許出願しました。今後は、この原料を用いた商品の開発を化粧品会社に提案していきます。

ずっと身近にあった発酵食品
口にした人の「美味しかった」の声が喜び

私の父親の実家は、宮崎県で焼酎を製造しています。父親は実家を継ぐために東京農業大学の醸造学科に入学しましたが、勉強が面白くてそのまま先生になりました。専門は発酵食品で、主に酢の研究をしていました。私はその家に生まれたたため小さい時から発酵食品に接する機会が多く、私も東京農業大学の農芸化学科に進学し、乳酸菌の研究で農学博士の学位を取得しました。その関係で、山梨大学の発酵化学研究施設から助手の公募があり、採用されたため、発酵に関する研究を始めました。
研究を行う中で自然界から目的の微生物が分離でき、その性質を調べて食品に向くことがわかり、商品開発できた時に面白さややりがいを感じます。また、開発した商品を買われた方々から美味しかったと言われたときには喜びを感じます。

柳田先生からのメッセージ

皆さんはまだ、自分が将来何をするかわからないかもしれませんが、自分が面白いと感じたことを深く追求することは、楽しいと思います。是非、いろいろなことにチャレンジしてください。

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